第71話 多対二。
「奴隷の首輪」を着けられて命令をされるセウソイ。
セウソイは何とか命令に逆らおうとして激痛に苦しむ。
「さあ、奴隷。仕事だ。ここ周りの奴らを蹴散らせ。皆殺しだ」
「何!?私に部下達を殺せと言うのか!?断る!」
そしてまた襲いかかる激痛。
「ぬぅぅぁぁぁっ!?」
「バカだな。痛みが襲うのを知ってても拒否するんだな」
ジェイドがそう言って笑う。
亜人共は「セウソイ様をお助けするぞ!」「セウソイ様!」と言いながらセウソイを目指す。
他の亜人はジェイドから鍵を奪い取る為に襲い掛かる。
「貴様!アレを外せ!」
「だから亜人は馬鹿か?やめろと言われてやめるが訳ないだろ?お前達は人間相手に慈悲を恵むか?」
ジェイドが笑いながら近づく亜人を殴り倒すと「支配の玉」を取り出して再度セウソイに命令をした「[お前の兵を全て殺せ]」と…。
「やめろ!やめろぉぉぉ!!」
セウソイは絶叫を上げながら金棒を振りかざして亜人の兵達を殺して行く。
兵達はセウソイを傷付けられず、また何とか止めようと金棒だけを狙ったのだが思い通りに行かず1人、また1人とセウソイに殺されて行く。
「お前達!命令だ!殺せ!私を殺せ!」
セウソイが涙ながらに訴えるが兵達はそれを受け入れない。
「セウソイ様!お助けいたします!」
「今しばらくのご辛抱を!」
兵達が必死にセウソイを止める。
今は20人がかりでセウソイに飛びかかって押さえつけようとする。
「お!良いぞ頑張れ〜」
ジェイドが揶揄いながら笑う。
だがそんな物は敵わない。
「奴隷の首輪」の恐ろしい所は脳のリミッターを外す事にある。
力加減を間違えれば筋は切れ、骨は砕ける。
そして身体が壊れようとも止まらない。
それこそ腕が千切れるまで攻撃の手は緩まない。
止まる時は四肢が千切れるか死ぬ以外には主人が止めるしかないのだ。
かつてジェイドも防人の街で1か月。延々と岩を抱きながら不眠不休でスクワットをさせられた経験がある。
どれだけ苦しかろうが辛かろうが身体は止まらない。
ジェイドの場合、体の勇者としての力が死を許さない。
ジェイドの心に亜人達への復讐神がある限り止まる事は無かった。
セウソイはその状況にあるので延々と兵達に殴りかかる。
「逃げよ!逃げ延びてサシュやソシオと共に勇者共を殺すのだ!」
セウソイが声を張る。せめて1人でも多くの兵士を逃がしたいと喉が潰れても声を張るのをやめようとしなかった。
「……はぁ…、バカか?逃す訳ないだろ?エア・ウォール!」
ジェイドは広大な敷地一帯をエア・ウォールで塞ぐ。
壁に当たる亜人達は逃げられずに慌てふためく。
「貴様!?広範囲に壁を!!?」
「隠し球は最後まで取っておかないとな。[奴隷、兵の数を教えろ]」
「だ…誰がい…言う…」
セウソイは歯を食いしばって拒もうとする。
だがそんなものは無駄だ。
ジェイドの「[言え]」という言葉で呆気なく口を開き「ご…5000」と言ってしまう。
セウソイは悔しさで涙を流していた。
「泣こうが睨もうが恨もうが知らん。
これはお前達が俺の首に「奴隷の首輪」を着けて延々とやった事と同じだ。
俺に意味もなく罪もない子供や女と言った弱者の人間を散々殺させた。
さあ、次だ、[奴隷よ…数えながら亜人共を殺せ!]」
セウソイは絶望の悲鳴を上げ、血の涙を流しながら1つ2つと数を数えながら兵達を殺して行く。
エア・ウォールから逃げられない兵達は何とか隙を伺うべくセウソイから距離を取ろうと必死になっていた。
だがジェイドはそれすら許さない。
エア・ウォールを徐々に狭めて行く。
密集空間でこれでもかと殺されて行く。
金棒の一振りで5人…10人と亜人共が吹き飛んで死んでいく。
「ははははは!!!一気に殺すと数を数えるのが大変だぞ!?」
そして数が減ればジェイドは更にエア。ウォールを狭める。
この草原で聞こえるのはセウソイの慟哭。
亜人共の悲鳴。
そしてジェイドの高笑いだった。




