第62話 エルムとカナリーと共に。
ジェイド達は折れた聖剣と腐食した聖鎧を持って旅に出た。
今回は穴を目指しそのまま上層界と亜人界に行く為だ。
レドアを出立する時、城の出入り口で老婆がジェイド達を待っていてお守りをくれた。
「ばあや…こんな朝から…」
「老人は朝が早いんですよ?」
老婆は笑いながら言うとお守りを差し出す。
差し出された御守りは勲章のように編み込まれていてグリアの名産品だった。
「これ…」
「懐かしゅう御座いましょう?
グリアでは待つ者たちがこうして編み込んで戦いに赴くもの達に持たせる。
ミリオン様が言った通り私たちはここで坊ちゃんを待ちますからね」
そう言ってミリオンとセレストには赤と青の御守りを渡してからジェイドの前に立つと緑色の御守りを出す。
「そんな…昨日の1日で3つも作ったのかい?」
ジェイドも手伝った事があるのでお守りの大変さは知っている。
「いいえ、5つですよ坊ちゃん」
そう言って老婆が笑うと明るい緑色の御守りと黄色の御守りを出す。
「これ…」
「明るい緑色はエルムお嬢様です。とても坊ちゃんを慕っておりましたのできっとエルムお嬢様も坊ちゃんを守ってくださいますよ」
「…ありがとう」
ジェイドが嬉しそうにそれを受け取ると老婆が黄色の御守りも渡す。
「お会いした事がないので形見のリボンだけで色を決めてしまいましたがこちらがカナリー様の分ですよ。戦友なんですよね?連れて行ってあげてください」
ジェイドは黄色のお守りを見て「そうだな。付き合ってくれカナリー」と言うと大切そうにしまう。
「ありがとうばあや」
「皆さま御武運を…」
その出来事を思い出しながら歩く…今回はレドア側から穴を目指すのでまた違った景色が目の前に広がる。
「今回、持てるだけの食料は持ったが、穴に1番近い村や街で買わなければな」
「そうね。穴の先で食糧難になれば帰還をしなければならない」
今回の旅は何日になるか想像もつかない。
その為に出来るだけの用意はしたいのだ。
「グリアでもそこら辺の記述は無かったんだろ?」
「ああ…、ワイトは勇者の力で飲まず食わずを耐えたのか?それすらわからない」
珍しく分からない事がある為にジェイドの顔つきが険しくなる。
「なあジェイド」
「どうした?」
「穴に行く前に聖女の監視塔に寄らないか?」
「何故だ?」
「食料の面でも不安はあるし、穴から1番近いから寄れるなら寄って体を休めるべきだと思ったんだ」
「それにカドさんやフランさん、アプリさんにカナリーさんの事を伝えてあげたら喜ぶと思うわ」
セレストとミリオンは前もって示し合わせていたかのようにジェイドに説明をする。
「2人がそう言うならそうしよう」
そして4日半の道のりを越えて何とか聖女の監視塔が見えてきた。
途中の宿屋で亜人について聞いてみたが最近は見ないと言うので一先ず安心して良いだろうとジェイド達は判断をした。
聖女の監視塔に着くとフランは休みの日だったのか塔から出て来て甥と姪と遊んでいた。
「元気そうで何よりだ」
「あ!ジェイド!」
フランは先日の刺々しい感じもなくてニコニコとジェイドに手を振ると「今日はどうしたの?」と聞く。
ジェイドに気付いたアプリがカドを連れてやってくる。
「穴から亜人界を目指す。今一番穴に近いのはこの村だから立ち寄らせて貰った。後は金ならあるから食料を買わせて欲しい」
「なるほどな。買い出しの話はフランには無理だ。俺が皆の所に連れて行くからセレストさんがいいかな?ジェイドさんじゃ交渉ごとは苦手そうだからな」と言ってカドが笑いながらセレストを連れて行く。




