第61話 解毒薬の効果。
ジェイドの願いは解毒薬の製法をブルアにも伝えたいがジェイド達には時間がないので代わりに隊を編成してブルアまで行ってもらえないかと言うものであった。
「それは当然だな」
「ありがとうございます。セレスト、ブルアの為にセレストから一筆書いてくれ。
お前の署名があればブルア王達も受け入れやすい」
「わかった」
そうしてセレストが書面を作っている時にミリオンが「思い出した!」と言って2人の男を呼び出した。
「お呼びですか?姫様」
「お待たせしました姫様」
そう言って呼び出された男は対照的で1人は兵士で1人は白衣を着ていた。
「ジェイド、こっちの学者がスワンプワームを研究している者だから今日の話をしてあげて。こっちの男は私が話しましょう」
ジェイドは学者に向かって今日見たモノを伝える。
学者は興奮気味にジェイドの話を聞く。
「そんな事が!?沼の底ではスワンプワームが球根のようになっていて幼体はその球根から生えていて、成体が全て死ぬと幼体を強制的に成長させる?ありがとうございます!新発見です!」
学者が嬉しそうにジェイドの手を握って深くお辞儀をする。
ジェイドも喜ばれた事が嬉しくなって飲み込まれた時の状況も説明をする。
「え!?飲み込まれた感想ですか?ありがとうございます!
柔らかいのに筋肉質で粘膜状の身体が体内で締め付けてきながら酸を分泌してくるんですね!それで?その先はどうなりますか?」
「いや、爆薬で吹き飛ばしたからわからない」
「勿体ない!」
「いや、どのみち俺は死ねないんだ。奴も消化不良を起こす」
ジェイドがそのまま死ねと言うのか?と言う顔で学者に言う。
「あー…、そうですね…。もし機会があればそのまま進んで行ってまた教えてください!」
「あ…ああ、機会があればな」
普段のジェイドなら「そんな物はない」と言い切る所だったが何故かこの学者には言えなかった。
メモを取り終わった学者は目を輝かせてジェイドに感謝を伝える。
その一方でミリオンの目は怖い。
「あなた、なぜ呼ばれたか分かりますか?」
「え…いえ…」
普段はにこやかなミリオンが睨みをきかせていて兵士はとても怖い気分になる。
「あなたの仕事を言いなさい」
「……近隣警備と周辺地域に危険や問題がないかを監視・視察をしています」
「そうですね。では何故グリアの寒村に足を運んで村の惨状を目にしたのに報告の義務を怠ったのかしら?」
ミリオンは老婆と出会った寒村の問題をそのままにはしておけないとずっと思っていたのだ。
「…!?…そ…それは」
「寒村では滅ぼされたグリアへの憎しみと視察に来てそれっきりのレドアへの恨みで満ちていました。醜い争いも起きてて土地を追われた者も居ます。何故そうなったのか言いなさい」
男は結局、自分の判断で報告をしなかった事を自白した。
現状を見兼ねたレドア王が万一討伐や支援を行なって亜人に目をつけられたらグリアの次に滅びるのはレドアだったからだと言う。
「それを決めるのはあなたではない」
ミリオンの氷のような目が男を射抜く。
「グリアがない以上、あの村々をレドア領に引き入れるのかは私達が決めます。あなたは粛々と勤めを果たしなさい!」
男はシュンとなりながら部屋を後にしていた。
そしてミリオンが一言口にした。
「でもなんで三国に分ける必要があったのかしら?」
「なに?」
「今話していて気になったのよ。だってそうじゃない。モビトゥーイにいくらワイトが3人にされても、レドア・ワイトもグリア・ワイトもブルア・ワイトもそれぞれの人格があったはずよ。少し話せば3人でいる事が正しいって気づくはずなのに…。それなのにわざわざ離れて領を作る必要なんて無かったじゃない」
ミリオンは兵士との会話中に一つの疑問を持った。
それは何故ワイトが3人になったからと国も3つにする必要があったのかと言う事だった。
「確かにそうだな」
「明日ジルツァーク様に聞いてみる?」
「いや、恐らく意味はない」
「ジェイド?」
「夜に何かあればジルは知る事が出来ないだろ?」
「ああ…そうね」
だがミリオンはそう話したジェイドの顔が気になっていた。




