第55話 不死身ならではの倒し方。
昨晩、「本当にやるの?」と用意が出来たミリオンが確認に来た。
「恐らくそれしか無いしな。使い方は?」
「紐をとって15秒よ」
呆れたミリオンが使い方の説明をする。
「わかりやすくて助かるよ。あんまり得意じゃ無いんだよ」
「得意?」
「ああ、亜人共が俺の背中とかに無数に括り付けてきてな。
奴らのは紐ではなくて氷で固定していたらしく、気温や俺の体温なんかで溶けると…って奴でさ。
背中にやられたせいで見えないから覚悟もできなくて嫌なんだよ。
それに奴らも毎回氷の厚みを変えてくるから何回やられても予測できないしな」
そう言うとジェイドが呆れ顔で笑う。
話と表情から心配になったミリオンがジェイドに辞めないかと提案する。
「それならこの作戦は…」
「最適だろ?コイツの危険性はその身で喰らった俺がよく知っている。最初の頃なんて身体中に巻きつけて特攻を仕掛けてやろうかと思った程だよ」
そう言ってジェイドが笑う。
沼の近くまで進むジェイドめがけてスワンプワームが現れて次の瞬間にはジェイドは丸呑みされていた。
「ジェイド!」
スワンプワームは獲物がかかった事で嬉しそうに沼の中に沈んでいく。
セレストが慌てて助けようとするがミリオンはそれを制止する。
「恐らくそろそろだから離れて!」
「何!?」
その瞬間、地響きと轟音。
沼の水が一瞬で巻き上がって無数のスワンプワームが空中に打ち上げられる。
そしてその中には1匹のズタズタで血まみれになったスワンプワームと同じく血まみれのジェイドが居た。
「ジェイド!」
ジェイドにその声は届かず「ったく…、防人の街より威力がありやがる」と言うと鎧から何かを取り出す。
「あれは!?」
「爆薬よ。採掘に用意する爆薬を手に持ってスワンプワームの中で爆発させているの。
ジェイドの見立てだとスワンプワームは体の中までは硬くないだろうから自分が爆薬を持って食べられるって…」
その後もジェイドは沼に落ちるとスワンプワームに飲み込まれては爆薬を爆発させて行く。
15分もするとスワンプワームの群れは出てこなくなった。
「ただいま」
耳がおかしくなったのだろう。
声量のおかしいジェイドが血まみれで笑いながらセレスト達に帰還を告げる。
「心配したぞ」
「本当、あまり多用して欲しい攻撃ではないわね」
「そうか?とりあえずスワンプワームって変な魔物だったな。
沼の底で球根みたいになっていて球根から子供のスワンプワームが生えて居て、成虫は球根から離れて活動して球根に栄養を運ぶ感じだった」
ジェイドが沼の中で見てきた事をミリオンに伝える。
「…それ、新発見よ。帰ったら城の学者に教えてもいいかしら?」
「問題ないぞ。将来的には球根を亜人界の村にでも放り込んでやりたいな」
水辺の亜人共はこれで一掃できると思う。
「…確かに効果的だけど…」
「だけど?」
「そんな攻撃をして収集つくのかしら?」
「知らないな。
仕返しで人間界に送り込まれても俺なら倒せるし、もしかしてだがポイズンウォールなら毒殺できるかも知れない」
そう言いながら沼地を進んで行き小島に着く。
小島には小さな洞窟の入り口が口を開けてジェイド達を待ち構えていた。
「よし、これで聖鎧が回収出来るな」
「その後はいよいよ穴を抜ける…」
「亜人界の前に上層界…」
3人が思い思いに話しながら洞窟に入る。




