第54話 スワンプワームの実力。
「ここが沼地か…」
そう言いながらジェイドは昨日の話を思い出していた。
昨日、城での話が終わったジェイドは老婆とポゥが気になりミリオンに連れられて城の近くの大きな屋敷に来た。
屋敷の門前で大きくため息をつくミリオンを訝しむジェイドだったがその理由はすぐに分かった。
「ミリオンちゃん!」
そう言って屋敷に入るなり、ミリオンめがけて走ってきたのはレドア王妃。
ミリオンの母だった。
ミリオンの母に紹介されるジェイドとセレストを見た王妃は「まぁぁぁぁっ、ワイルドなのに整ったお顔立ち!」とジェイドにベタベタ触れた後で「んまぁぁぁぁっ美形!!」とセレストに抱きつく始末だった。
「ごめんなさいセレスト。お父様がセレストに厳しかったのはお母様の性格が原因でやきもち妬きで更に思い込みが激しくて…セレストの顔がお母様の好みに近いから…」
「何となくわかったよ」とセレストが肩を落としながら笑う。
「ミリオン、何故王妃は城に住まない?」
ジェイドの質問にミリオンではなく王妃が答える。
「いやよ!あの人と一緒の部屋なんて疲れるのよ?
一緒にいればあれこれ構ってくるし、ちょっと気に食わなきゃアレコレ思い込みの激しさでトラブル起こすし。
だから私は家出をしたのよ。国民には重責で頭がおかしくなって城の近くで静養中の王妃って事になっているのよ〜」
そう言ってケラケラと笑う顔はジェイドの母ともセレストの母とも違っていた。
ポゥはこの屋敷の使用人の1人として腕が治り次第働かしてもらう事になっていて屋敷の敷地内に用意されていた老婆と住むには立派な小屋に居た。
ポゥだが、休みはキチンと与えられて老婆もかつてのメイド長の立場から意見を求められる事はあるが普段は隠居生活なので好きにしていて構わないと言われている。
「坊ちゃん、本当に何とお礼を言っていいか」
「気にしないでいいよ。それより本当に世界が平和になるまで長生きしてよね」
老婆が本当に嬉しそうにジェイドに向かってお礼を言う。
ジェイドも嬉しそうに老婆にこたえる。
「母共々お世話になりました」
「楽な仕事ではないけど頑張って」
ポゥとも仲良くなったジェイドは気さくに話をする。
「坊ちゃん、もう行かれるんですか?」
「亜人共を倒す為に明日は出かけるんだ。その後は決まっていないけど早く亜人共を倒す旅に出るよ」
そう言うと老婆は「わかりました」と言って最後に握手をしてからミリオンとセレストにもお礼を言った。
「ここにスワンプワームが…」
「ええ、危険だから沼には近付かないでね」
セレストとミリオンが話していると、まるでジェイド達に説明するようにコブ狼の子供が沼に近づく。
次の瞬間、長さは8メートルくらい、太さは人間の大人3人分くらいの魔物が沼から出てきてコブ狼の子供を丸呑みして沼の中に消えてしまった。
「…これは…確かに危険だね…」
セレストが引き笑いをする。
「でしょ?それで洞窟があの中央の小島にあるの」
そう言ってミリオンの指差す方には小島とそこに出来た小さな山が見えた。
「とりあえず俺は奴を倒す用意をするから手前の1匹に向かってミリオンはアイスランス、セレストは真空剣を試したらどうだ?」
「…やってみる」
「ええ、私も」
そう言ってジェイドが余計な荷物を降ろしてミリオンに用意させたずだ袋を鎧の中で抱き抱える間にセレストは真空剣を放つ。
「痕は付くが切断には程遠い!?」セレストがまさかの結果に驚くとミリオンが「それなら私が!アイスランス!」と言って放った氷の矢も痕は付くが貫通はしない。
「まあ、本当にこうなる訳か…」
ジェイドが呆れ顔でずだ袋を鎧に仕込むと何事もないように前進をする。
「ジェイド!?」
「まあ見てろって。
いい思い出はないんだけどやるしかない。
これがダメなら本当に春まで待つか?」
わざと自嘲気味に笑ったジェイドが真っ直ぐ沼地に向かって進んで行く。
「何をするつもりだ!?」
戦い方を聞いていなかったセレストはジェイドの行動に驚く。




