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第48話 ガリベンと土下座。

ジェイドの淹れたお茶の味があんまりだった。

本人は十分に美味しいと思っているだけにジェイドは釈然としない。


「くそっ、難しいな…」

ジェイドが頭を掻きながら困った顔をする。


「ふふふ、懐かしいです」

老婆がそう言って涙を流す。


「ばあや?」

「初めて読み書きのお勉強をなさった時の坊ちゃんもそのお顔でそう言ってましたよ」


「何?そうか…」とジェイドが言った所でセレストが立ち上がると男の肩に出来た傷を手当てする。


「あ、済まない。治療を後にしてしまっていた」

「ジェイド、勇者の魔法に回復の魔法は無いの?」

ミリオンがジェイドの顔を覗き込んで聞く。


「無いな。俺は知らない。ミリオンのレドアにも無いのか?」

「無いわね」

2人はため息交じりに話す。


「まあそうなるな。ワイトは単独で亜人共に戦いを挑んだ。それにワイトには体の力があるのだから回復手段は必要ない」

ジェイドはそう言って済まないともう一度謝るとセレストに薬を渡す。



「それで、今日はこの宿に泊まるのかい?」

「あ…いえ。我々は路銀も心許ないですし、そもそも土地を離れてレドアを目指しても平和に暮らせるかも怪しくて…」


「早く言えば良いのに」

「は?」


「セレスト、この2人も宿に泊めたい」

「僕もそのつもりだった。ジェイドの知り合いを野宿などさせるものか」

ジェイドとセレストが当然と言った顔で話し出すと老婆が慌てだす。


「坊ちゃん!?」

「何がいけないんだ?

俺は俺を知るグリアの人間を助けたいんだ。

息子さんと面識はないがばあやの息子さんなら助けない理由はない」


「そんな…この前の銀貨でも貰いすぎなんですよ?」

「硬貨は魔物を倒すから気にしないで良いよ」


「そんな…」と老婆が言った所でポゥが「母さん、お願いしてはダメかな?もう5日も野宿で母さんも限界だろ?」と言う。


「決まりだな!」

ジェイドが嬉しそうな声を上げる。

「僕が言ってくるよ」

セレストがそのまま部屋を出ると店主の元に部屋の追加を言いに行く。



セレストが居ない間にミリオンが老婆に話しかける。

「お婆様、一つよろしいかしら?」

「はい?なんですかガリベン様?」


ミリオンの名前を知らない老婆は寒村で聞いた「ガリベン」の名前で呼んでしまう。



「……………ミリオンです。私はレドアの姫、ミリオンです」

「姫様!?あわわわわ…申し訳ございません」


慌てて老婆とポゥは土下座でミリオンに謝る。

本当の土下座と言うのはこんなにも圧があるのかとジェイドは黙って見ている。


そこに戻ってきたセレストが驚いた顔でミリオンに「土下座を求めるなんてミリオンは怖いんだね」と言う。


「はぁ?貴方が人の事をガリベンなんて名前にするからこうなったんでしょ!」


ミリオンが目を三角にして怒るとジェイドが笑う。

「ばあや。こっちがブルアの王子、セレストでこっちがレドアの姫、ミリオンだよ」


「レドアとブルア…それじゃあ…」

「ああ、俺の仲間だよ」


老婆はセレストとミリオンの手を握ると「ありがとうございます!坊ちゃんをよろしくお願いします」と何度もお願いをする。


2人は言われるまでもなく了承をするとまた老婆は泣いて喜ぶ。



「それで私の話に戻って良いかしら?」

「はい?何でしょうか?」


「貴方達はレドアを目指すのよね?」

「はい」


「今、私たちの目的地もレドアです。

かなり急ぎの旅でお2人には厳しい旅路かも知れませんがジェイドの為に着いてきてくれないかしら?」

「え?」


「そしてレドアで姫として職や生活を保証しますからレドアでジェイドの帰りを待って貰えませんか?」

「ミリオン?」

これにはジェイドが驚いて口を挟む。


「ジェイドは復讐にジェイドの全てを使いそうで見ていてハラハラしてしまうのです。

今の顔の方が本当の彼ならその顔でいられる時間も増やしてあげたいの」


そう言ってミリオンが「ダメかしら?」と笑う。


老婆達は申し訳なさで言葉に詰まるがセレストが「レドアが住みにくければ戦後はブルアでも良い!ジェイドの為に頼む!」と声をかける。


老婆は王女と王子から次々に声をかけて貰った事で困ってしまう。



「何それ?レドアは住みやすい良い所です」

「仮の話だ。ブルアも良い所だ」

そう言って2人が睨み合う。


「ばあや、レドアに着くまでに決めてくれれば良い。歩けなければ手を貸すから一緒に行かないかい?」

「坊ちゃん…。坊ちゃん?本当に良いのですか?」


「構わない。息子さんも良いですよね?」

「はい!それはもう願ったり叶ったりです」


これにより老婆と息子のポゥがレドアまでの仲間になった。

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