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第46話 再会。

「追いかけてこない?」

セレストは不満気に村を散策する。

この村は山に出来た土地を利用して作られていて大した広さはない。

今は夜の闇が広がる所だった。

結局フラフラと歩くと村の入り口に来てしまう。


そしてついさっきトントリギュウの群を倒した場面を思い出していた。



「ミリオン!合わせてくれ!」

そう言って放った高速剣では2体までのトントリギュウしか倒せなかった。

聖剣を持った時のセレストなら4体は軽かったのに半分しか倒せなかった。


ミリオンがアイスランスで残りの2体。

ジェイドが突進を受け止めて鋼鉄の棍棒を眉間に向かってフルスイングして1体を倒していた。


その後も残ったトントリギュウを連係と言えば聞こえが良い感じで倒していた。


だがその全てがセレストには不満しかなかった。

本来セレストがミリオンに行った「合わせてくれ」はセレストが前の4体を鮮やかに倒してミリオンが残りのまとまった所に魔法攻撃をしてジェイドは万一向かってくる個体が居たらそれを受け止めるだけだったのだ。

セレストの撃ち漏らしのフォローなんてものは頼んだつもりでは無かった。


「クソっ、歯痒い!」


そうしていると前方の森の中から必死になって走る人間の声と小さな小鬼、ゴブリンの声が聞こえてきた。


ゴブリンには多少の知能があるので身の危険がある村や街なんかには来ないがここまで近くまで来ていると言うことは飢えのピークか村から人が出て来る前に人間を殺せると踏んでいる証拠でしかない。


セレストは前に飛び出して森の中に声をかける。

「後少しで村だ!こっちだ!振り向くな!ゴブリンは僕が倒す!先に人数を言うんだ!」

「助かった!2人です!」


その声でセレストが前進して2人とすれ違った所で足元スレスレに真空剣を放つ。

放った刃が前に走ると1秒もしないでゴブリンを切り裂き小さな悲鳴とビチャビチャと言う音が聞こえてきた。

生き残りの有無を確認するために少し前に出ると4匹のゴブリンが腰から真っ二つになって地面に転がっていた。



ゴブリンが硬貨に変わった所で回収をすると村に戻る。

村の入り口では先ほどまで逃げていた2人が心配そうにセレストを待っていた。


「ああ、ご無事でしたか!ありがとうございました!」

男は元々怪我をしていたようで折れた左腕を庇いながら肩から血を流していた。


「怪我を…」

「ゴブリンに石をぶつけられました」

そう言って肩をさすりながら男は笑う。


「お大尽様…」

「え?」


セレストはその時に初めて助けた2人のうち1人は寒村で出会った老婆だった事に気付いた。


「あなたは村に居た…」

「ええ、あの後グリア城に向かった事は存じていましたが、大地震と大陥没で城が海に飲まれたのを聞いて心配していましたがご無事だったんですね」

老婆が嬉しそうにセレストの前に来てホッと胸をなでおろす。


「ああ、だが僕達は視察としか…」

「坊ちゃんとご一緒ならグリア城に向かう事は聞かなくても…」


「坊ちゃん?」

「あ…」

老婆がしまったと言う顔をしたがセレストはジェイドから老婆が古い顔見知りと聞いていたので驚かない。


「ジェ…マッチョなら宿にいるから行こう。泊まるところもまだだろう?」

そう言ってセレストが宿に連れて行くのだが老婆は「路銀が心許ないので野宿をするつもり」と言う。


「何?あなた達2人で?待て。とりあえずマッチョと怪我の手当てからだ」

セレストはジェイドが顔見知りだと知っていてももう1人の男の事もあるのでジェイドを寒村で呼んだようにマッチョと呼んだ。

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