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第45話 焦燥感。

グリア城を海に沈めてから2日が過ぎていた。

順調にレドアを目指す道すがら、セレストが荒れていた。


誰でも使えるようにグリアの人間が設置してくれていた山小屋に、グリアから斥候に出ていた亜人達を見つけて戦闘になったのが昨日。

そして今日は山に住む村人達の村に泊まったわけだが、村に入る手前で発生していたトントリギュウという魔物に囲まれた時セレストは思い通りの剣が振れずに苛立ちを口にした。



「クソっ!」

そう言って戦いの結果に不満を持っているのはセレストだけだったのだが理由は明白だった。



聖剣と普通の剣の違い。

ジェイドはグリアの街からその事を気にしていたのでそのままミリオンに説明をした。


「聖剣の斬れ味を知ってしまったから今の剣では不満なんだ」

「でも前とは何も違わないのに…」


そう。

あのジェイドがスゥを痛めつけた数日でセレストは聖剣に魅力されていた。

ジェイドとミリオンからすれば戦いで発生する役割分担の比率も何も何の変化も無いのだがセレスト自身は面白くない。

不満が何処にあるのかはセレストにしかわからないが機嫌は良くない。


この旅が始まって以来の不協和音だった。



村の宿屋で一息ついた所で剣を見て悪態をつくセレストにミリオンが落ち着くように話しかけてしまった。


「セレスト…?どうしたの?貴方らしくない…」

「僕らしく?ミリオン、君に何がわかる?

君の宝珠はブルアがキチンと管理出来ていたからいいものを…僕の聖剣はこの有り様だ!」


それは暗にグリアの出来事に不満があると言う言い方で聞いているジェイドも面白くない。

別に好きで亜人によって滅ぼされたわけでもなければ大切な妹が聖剣で殺されたわけではない。

だが、ジェイドは睨みつけるだけで食ってかかったりしない。


そしてミリオンはまさかセレストからそんな言葉をぶつけられると思って居なかったのだろう。

驚きの目をセレストに向ける。



「な…何だよその目…」

いたたまれないセレストが部屋を飛び出してしまった。



「セレスト!?」

ミリオンは初の不協和音に驚いて何とか修復しようと試みる。

追いかけようとしたのだがジェイドに止められる。


「放っておいてやれ。頭が冷えれば戻ってくる。

それに毒や五将軍以外にセレストを殺せる相手はいないさ」

ジェイドはテーブルに置かれたカップを眺めながらそう言う。


「確かにそうだけど…。彼、聖剣を片時も手放さないで今も持っていたわ」


「気分、なんだろ?

今は俺たちが何を言ってもダメだ。

ミリオンはブルアの管理した宝珠で亜人や魔物を蹴散らす勇者様で俺は聖剣の管理を失敗したグリアの勇者。

へし折ったのがモビトゥーイでもスゥを切れと言ったのも必殺剣の断命を使わせたのも俺だからな。

それに亜人共に捕らえられていた時、何かと理由をつけては何人も捕らえられていて俺が最も牢獄に長くいたせいで若くても後から来る連中を励ましたり慰めたりすることがあったが皆ダメだった。こう言うのは自分で解決するしかないんだ」


そう言ってジェイドが立ち上がってお茶を淹れるとミリオンは「ありがとう」と言って飲む。


「今回のお茶は濃いわね」

「そうか?」


ジェイドは牢獄暮らしが長く、お茶も色が着いているだけで「美味い!お茶の味がする」と喜ぶし、逆に今みたいに濃いものを作って「しっかりした味だ」と言って味と言うものに感動をしている。


「もう、教えてあげるからちゃんと適量の濃さで淹れられるようになってね」

そう言ってミリオンが手取り足取り教える。


「済まないな」

「これくらいいいわよ」

2人はそう言いながらセレストの帰還を待つのだった。

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