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第41話 不死の終わり方。

「ぞ…ぞんな…、僕は不死身…」

「不死身だからまだ生きてんだろ?

良かったな。まだまだ夜は長いんだから楽しもうぜ?」

ジェイドはスゥを持ちながら兵士の槍を拾うと全身にコレでもかと突き刺して行く。


ジェイドとスゥの違いは、今の槍で言えばジェイドは身体が槍を押し返しながら再生をするがスゥは槍が抜けてから再生が始まるところだった。


「へぇ、お前と俺の不死能力は違うんだな。ジルとモビトゥーイの差か?」

「い…痛い……助……助けて…」

スゥが涙ながらにジェイドに命乞いをする。


「バカだな。死なないならなんでもOKだろ?

再生だってするんだから不死身対不死身の戦いを楽しもうぜ?」


その後夜明けまで殴りつけた頃、遂に襲ってくる亡骸は居なくなる。

「なんだ、亡骸を動かすのをやめたのか?」


「つまらん」と言うと槍まみれのスゥを地面に投げ捨てて槍を深々と指して地面に縫い付ける。


そしてまた殴り始める。

「なぁ、聞いているのか?まあ聞いて居なくてもいいがな。止めてくれって言って亜人は俺の拷問を止めたか?止めなかったよな?立場が逆だった時、お前は止めるか?止めないよな?」


そう話しながらジェイドの腕は加速していく。

棍棒で滅多矢鱈に打ち込んでいく。


「俺も同じさ。お前達に捕らえられ、目の前でグリアの皆が殺されて妹が聖剣に貫かれて死んだ時。防人の街まで子供のおもちゃのように鎖でつながれて引きずられて意味もなく岩や木々に投げ飛ばされて、多種多様な拷問を試されながら考えた。

なんでこんな目に遭うのか?

どうにかして逃れる方法は無いのか?

命乞いは通用するのか、そんな阿呆みたいな事まで考えたよ。

だがそんなものはない。

だって俺が人間でお前が亜人である限り理解もなにもあり得ない」

そう言った時ジェイドが更に強い一撃を撃ち込む。


スゥの身体が始めと違って再生するのに時間がかかり始める。

ジェイドはそれを見てそろそろだなと思っていた。


「ああ、忘れていたよ。毒殺でも刺殺でも圧殺でもない別の殺され方がまだまだあるんだぜ?どんなに我慢しても声や涙は出るんだ。不思議だよな。エア・ウォール」

ジェイドはスゥから離れて距離を置くとエア・ウォールで閉じ込める。


エア・ウォールは聖女の監視塔で使った時よりも小規模なモノにしたのであっという間に中の酸素が尽きてスゥが苦しそうにもがく。


「窒息死って辛いよな。俺もそればかりは中々慣れなくて大変だった」

そう言って槍に刺されながらバタつくスゥを見て言い放つ。


「俺達は死ねない身体だから酸素がなくて死にたいのに死ねないから辛いよな」

そう言いながら壊れたベンチに腰掛ける。


そのまま太陽が傾いて夕日になるまでスゥを放置する。

「ジル!」

「何?」


ジェイドの呼びかけでジルツァークが現れる。

「干渉値が変わらない範囲で教えてくれ。こいつの不死の条件は俺と同じか?」

「大体一緒だよ。私と違ってモビトゥーイはあまり力を与えなかったみたい」


「それで肉が槍を抜かないのか…」

「うん。後は話せないから行くね」


「ああ、済まなかったな」

「ううん。いいよ」


そう言ってジルツァークが消えると日没まで待つ。

陽が沈む際にみたスゥは物凄い色になっていて必死の形相のまま動かなくなっていた。


夜の闇が広がるとジェイドがエア・ウォールを解除する。

新鮮な空気が体内に入ったスゥはあっという間に息を吹き返すと「はぁはぁ」と荒く息を吸うとムせた。


「よぉ、お帰り」と言ってジェイドがまた殴る。

スゥが口をパクパクとさせている。


「何だ?」

「もう…嫌…だ……。ゆる…して……」


「おいおい、俺の妹を辱めようとした気迫はどこに行った?命乞いは無意味だって教えたろ?」と言うとジェイドが強烈な一撃を入れる。

だがスゥの回復が遅い。明らかにスゥの再生速度が遅くなっている。


「一つ、いい話をしてやる」

そう言いながら殴る。


「俺とお前は若干の違いはあるが不死身だ。敵に捕まった場合には終わりのない苦痛が待っている。今のお前のようにな?」

話ながらジェイドは話の切れ間でスゥを殴る。

それはスゥの再生能力を確かめるような殴り方だった。


「本来、普通の奴らだったらやり過ぎたら死ぬ。それは悪い事ではない。俺達には中々手に入らないご褒美だ。

死ねる奴らからすれば不死身は最高だと言うと思うが目的がなければ…敵に捕まれば痛いだけでいい事がない。

死ねばこの苦しみから解放される。

だが死ねないとこうしてひたすらに痛めつけられる」


そうして殴られ続けたスゥが中々再生しない中、涙を流し始める。


「辛いか?悲しいか?だが終わらん」

ジェイドはそう言ってまたしばらく殴り続ける。


また一息つくように話し始める。

「だがな、お前の様子を見て気づいたよ。モビトゥーイはお前に死に方を教えていなかったんだな」

「へ?」


余りにも想定外の事を言われたスゥが素っ頓狂な声を上げる。


「おいおい、不死って言っても完全無欠じゃないんだぜ?簡単に言えば今の状況は詰みだ。

ジルが行動をした事で干渉値が大きくモビトゥーイに渡ったとしてもモビトゥーイはお前を助けるために何もしない。弱いお前は俺から逃げられない。そして俺は奴隷時代の経験で痛みにも強く毒も効かない。空腹なんて慣れたものだ。1か月何も食べないままに拷問なんて言うのもあったくらいだからな…。

お間にその経験はあるか?」


そう言われたスゥが弱弱しく首を横に振ると涙を流す。


「辛いよな。だが死ねば解放されるのに不死身のせいで中々死ねない。そこで俺からの慈悲だ。―――――ろ。そうすればお前は死ねる。ちょうどここには聖剣もある。亜人に対して絶大な威力を発揮する聖剣の力があればお前は苦しまずに死ねる。死ぬか?」


ジェイドがそう聞いたがスゥは答えない。涙を流すだけだ。


「ちっ!」

ジェイドが憎々しそうにスゥを睨むとまた鋼鉄の棍棒でスゥを殴る。

どれくらい殴ったか分からない。


途中何度も死を受け入れるかを聞く。

そして答えないでただ泣くスゥ。

そして再開される殴打。


だが夜が明けるころ「殺してくれ」とスゥが言った。

ジェイドは攻撃をやめたが最後に殴った顔は中々再生しなかった。

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