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第40話 不死の違い。

「ふっ!」

ジェイドが力強く息を吐きながらスゥを殴る。

もう日は沈んでいて灯りのない城は暗い。

目の前のスゥや数人の兵士の亡骸を視認するのが精一杯になっている。


「痛え!僕は不死身なんだから諦めろよ!」

殴られたスゥがそう言いながらジェイドを殴ろうとするが4年間の日々がジェイドを叩き上げた。

亡骸を操る事と不死身なこと以外に素人に近いスゥの攻撃が当たるわけもなく、攻撃をかわすとまた殴る。


ボゴッと言う鈍い音が中庭に響く。


「ウギャ!?」

「ホラ、かかってこいよ」


そう言うジェイドに兵士の槍が背中に突き刺さる。

体制を立て直したスゥが嬉しそうにジェイドを見るのだが、槍が刺さった影響で口から血が吐き出されたジェイドは何一つ気にしないで槍を抜き取るとそのままスゥの足に槍を突き立てて地面に縫い付ける。


「ウギャ!?お…お前は痛みがないのか!?」

「慣れたんだ……よっ!」

そう言ってさらに顔面を鋼鉄の棍棒で殴る。

顔面がひしゃげて吹き飛ぶのだが足に刺さった槍が吹き飛ぶ事を許さない。

亜人でもこの一撃で死に至る威力だがスゥは死なずに起き上がる。

そしてのたうち回って苦しむ。


「ギャァぁぁぁっ!!」

スゥは首を左右に振りながら痛みに苦しむ。


「ほら、どうした?不死身対不死身の戦いなんだから心行くまで戦おうぜ?」


ジェイドがスゥの首根っこを掴んで吊るし上げる形で持ち上げるとスゥは隠し持っていたナイフをジェイドの肩に突き立てる。


「ウキャ!毒ナイフだ!苦しめ!」

スゥの喜ぶ声。


「なんだ…毒ウサギの前歯の毒か…。

まあチョイスは悪くない。

苦しいもんなコレ」

だがスゥの思い通りにはならない。

ジェイドは何のこともない顔と声を出す。


「へ?」

そう言うとジェイドが器用に棍棒を持つ手でスゥの腕をへし折るとナイフを奪い取ってスゥの腹に刺す。


「グギャ!!?」

みるみるスゥの目が左右に激しく動き出すと目から血の涙を流して泡を吹く。


「ウギャ?グギャ?ギャギャ?ぎょぎょぐよよよぉぉ?」

「なんだお前?初めてか?」

ジェイドは面白いものを見たと言う顔をしながら、痙攣して泡を吹くスゥの顔を棍棒で右や左から往復で殴り続ける。


しばらく殴るとスゥは声も出せずにグッタリとする。

ただただジェイドに殴られ続けて、攻撃が入る度に身体が痙攣を起こすが少しすると傷が無くなってしまう。


おそらくスゥの集中が切れた事から亡骸の動きが鈍くなり、今動かせているのは付近にいる二体の亡骸のみがスゥを助けるべくジェイドの腕や身体を斬りつけてくる。

だがジェイドは意に介さずにスゥを殴り続ける。


「お…お前…毒…」

声が震え、息も絶え絶えなスゥがジェイドになんとか言葉を投げかける。

まだ毒が消えた様子はない。


「辛いよなその毒」

そう言いながら呆れ笑いをするとまた顔面をこれでもかと殴打する。


「ギャ!!グギャ!?ゲベッ!!」

そんな悲鳴を上げながらスゥは殴られ続ける。


またスゥの手足が力なくグッタリした所でジェイドが口を開く。


「毒?もう効くような猛毒は無いんだよ。

お前らが散々防人の街で拷問ショーに使ってな。

忘れないぜ?

身動きの取れない中これでもかと毒を打ち込まれてな。

耐性が付くたびに新しい毒、今までの毒を掛け合わせた毒で苦しめられてな」

ジェイドがそう言ってもう一度笑いながら休む事なくスゥを殴る。


「こうやって殴られるのもな。亜人、人間お構い無しに朝から晩まで殴られて夜は鎖で手足を縛って火の中に突き落とされた日もあったな」


ジェイドの目はスゥを見ていない。

かつて味わった拷問の日々を、その自分の姿を見ていた。

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