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第39話 聖剣の勇者。宝珠の勇者。

「旋回剣尖!」

「連続鉄破!」

セレストが水を得た魚のように群がる亜人共を斬り捨てていく。

グリアの街に住み着いていた亜人はかなりの数で斬っても斬っても、これでもかと湧いて出てくる。


「あまり激しく動くとカナリーさんに傷がつくわよ?」

ミリオンが宝珠で強化されたアイスランスを放ちながら呆れた顔をする。

アイスランスは上位魔法のアイスドリルと同様の威力で亜人は次々に串刺しにされて行く。


「花とミリオンの魔法で守られているから平気かと思ったのだが…、そうか…動き回る系の攻撃は控えるべきか…」

セレストが残念そうに言いながら真空剣を放つと一太刀で五体の亜人が真っ二つになる。


「十分じゃない。

それよりも聖剣と宝珠、こんなに力を発揮するなんて思わなかったわ」

ミリオンも話の合間にファイヤスネークと言う蛇のように建物の隙間や窓などから中に入り込み無機物以外を焼き払う火の魔法を放つ。


建物の中や路地裏から次々と悲鳴が聞こえてくる。

だがファイヤスネークは這いずるだけの魔法なので宝珠の力があっても重ね掛けをしないと一撃で亜人を倒す事は出来ない。

ファイヤスネークは牽制や逃げる敵の足止め、炙り出し用の魔法なのだ。

しかしジェイドとの話もある。

アトミック・ショックウェイブで街を破壊する方法は好ましくないのでこの方法で地道に倒すしかない。


「本当だね。これでレドアの聖鎧まで手に入れば完璧だ」

そう言って少し敵が減ったところで街の入り口を目指す。


「カナリーさんを狙う死者を操る魔法の範囲は何処までなのかしら?」

「先程の話だと街は範囲外と言っていたから無事だとは思うが…」

そう言って城の方角を見ると追加の亜人達がセレスト達に向かって走り込んできていた。

2人は顔を見合わせると、ミリオンは「アイストラップ!」の魔法、セレストは「真空乱撃!」を放っていた。


セレストとミリオンの合わせ技。

本来アイストラップは罠魔法で罠を隠した地面を踏み抜くと氷の槍が地面から迫り上がってくる。

アイスストラップは刺さった敵が抜け出せずに失血死をする場合はあるが、ファイヤスネーク同様に一瞬で殺すような殺傷力はない。

しかし足止めとしては抜群でミリオンは大通りを覆えるほどのアイストラップを宝珠の力で使用した。向かってきた100からの亜人を氷の槍で貫くとそこにセレストが真空剣を乱れ撃つ。


動けない亜人は最早的でしかない。

刃の届く亜人は見事に斬り裂かれていた。


そしてそこで亜人の出現は止まった。


「もう出てこない?終わったの?」

「多分膠着状態なんだろう…」


そう話していると城の方角からジルツァークが飛んでくる。

「ジルツァーク様」

「2人とも、ジェイドからの伝言ね。ゆっくり待っていてくれだって」

ジルツァークがニコニコと説明をするが2人には何が何だかわからない。


「ゆっくり?」

「相手は不死身の将軍なのですよね?

倒す手立てがあると言うのですか?」


「うーん…有るにはあるし無いにはないし…、あまり言うと干渉値の事が有るから言えないけど、多分2日くらいかかるかも」


「2日?」

「まあジェイドは死なないから大丈夫だよ。2人はキチンと休憩取ってジェイドを待ってあげてね。私は皆の近くにいて何かしちゃうと干渉値が変わるからちょっと離れてるね」


ジルツァークにそう言われた2人は街の入り口にある広場に拠点を構える。

周囲は見晴らしも良く小屋もある。

ミリオンがアイストラップで小屋と広場の周りをこれでもかと固めて交代で休むことにした。


「2日か…、長いな」

「でもそれであの不死身のスゥを倒せるのかしら?」


2人は顔を見合わせて「うーん」と悩む。

ジルツァークが言った「有るにはある。無いにはない」が気になっていた。

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