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第36話 4年前の惨劇と聖剣。

街で追いかけてきた亜人達は城に着くと何故か追いかけてこなくなった。

罠の恐れもあるが乱戦になるよりは遥かにマシだ。

ジェイド達は息を整えながら中庭に着く。


「中庭?」

「こんな所に聖剣があるの?」

てっきり宝物庫にあると思っていたセレストとミリオンが驚いた顔をする。


「隠してあるとか?」

「ううん、違うよ」

そう言ったジルツァークの声が暗い。


「ジルツァーク様?」

その声に違和感を覚えたミリオンがジルツァークの名前を呼ぶ。

だがジルツァークはジェイドに話しかける。


「ジェイド、今もここに居るよ。私は話すと辛いから後ろで静かにしているね」

ジルツァークがジェイドを見て悲しげな顔をした後でジェイドの後ろにつく。


「ありがとうジル」

ジェイドがそう言うと何かに耐える顔で一歩一歩を踏みしめながら歩く。



そして、中庭を進むと不気味な光景が広がった。

投げ捨てられて死んでいる兵やメイドが所狭しと居たのだった。


「何これ!!?」

「どう言う状況だ!?」

ミリオンとセレストが青い顔で驚いている。


「4年前、日付が変わる頃だ」

ジェイドが突然話し始めた。


「グリアの街を無視した亜人の群れがグリアの城を襲った。

警備の兵は居たが街が無事だった事で初動が遅れた。

瞬く間に兵達は亜人に殺された。

そして休んでいた兵達が対処に当たったのだが、時すでに遅くものの数時間もしないうちに正門前は陥落する。

父さん…グリア王は陣頭指揮に出ていた。

母さんは俺を叩き起こすと妹のエルムと聖剣を持って逃げ落ちるように言ったんだ。

聖剣を持って地理的に行きやすいレドアに行き魔の勇者を頼りにしてブルアへ行き剣の勇者に聖剣を渡すように言われた」


それは4年前、グリア最後の日の話だった。

ゆっくりと兵やメイドの死体を見つめながら歩くジェイドにセレスト達は何も言えずに付いていくしかなかった。


「覚醒の始まっていた俺は右手に盾を持ち左手にエルムの手を引いて城の裏手に走った。

だが亜人共は裏手にも居て逃げられなかった。

そして俺はエルムと一緒にこの中庭に追い込まれたんだ」

ジェイドの悔しさと憎さ、やるせなさの混ざった顔と声は側にいる2人を聞いて居るだけで苦しめた。


「そして中庭で亜人共に捕まった俺は奴らの将が振った剣で死ななかった事で体の勇者であることがバレた。

そこで始まったんだ…。虐殺ショーがな…。

まずは俺とエルムは両手を押さえつけられて跪かされると目の前で生き残りのメイドや兵達が次々と連れてこられては殺されて中庭に棄てられた」

そう言いながら今もジェイドはメイドの亡骸を見て悲しげな顔をすると、中庭に転がる無数の死体を眺める。


「全員が死ぬのに1時間もかからなかった。

兵達は最後まで俺とエルム、メイド達を逃がそうと隙を見ては立ち向かってくれたが一対一の力で亜人に敵うわけがない。皆無惨に散っていった」


そう言われて見ると兵士達の死体は損壊具合が酷い。

鎧が物凄い力でひしゃげているものばかりだ。



「そして…全ての兵が死んだ後で…」


ジェイドがそう言って広い中庭の真中についた時、跪いた格好で首の根元から真下に向かって剣が突き立てられた死体が現れた。

死体は少女のもので可愛らしい服装なのがわかる。

頭には髪飾りが残っていた。


「奴らの将は並の亜人には持てない聖剣を持ち上げるとエルムに…俺の妹に突き立てた」


その言葉にセレスト達が言葉に詰まる。

「奴はエルムに向かってお前が聖剣の鞘だと言って高笑いをした。

エルムは死の直前まで俺の名を呼んでいた。

「兄さん…兄さん…」と…」


その話の通りなら目の前の少女の亡骸がグリアの姫エルムで彼女に突き刺さっている剣が聖剣になる。


ジェイドはエルムの前まで行くと髪飾りを触る。髪飾りは色褪せてしまっていてボロボロだったがジェイドは壊すことなく取ることが出来て、泣きながらミリオンに「済まなかった。形見が欲しかったんだ」と言う。


「そうね。大事な事よ」

ミリオンも涙目でジェイドに話す。

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