第34話 マッチョとガリベン。
部屋に居ない間にカナリーの棺に手を出した男を宙づりにしたジェイド。
その騒ぎを聞きつけてきた店主も宙づりにして尋問をするがふざけた回答に段々と苛立つ。
「ではお前が店主としてこの男に何をしていたか聞け、嘘をつけばこのまま首をへし折る」
「ひっ!?せ…せめて床に降ろして…」
「マッチョ!」
「何をして居るの?」
そこにセレストとミリオンがくる。
「この男が部屋に勝手に入って箱に手を伸ばしていた」
「そんな!?」
「なんだと?」
セレストとミリオンが信じられないと言う顔で宙づりの2人を見る。
「だから聞いていた。店主、男に聞け」
「おい…お前は何をしていた」
店主も苦しさに耐えながら必死になって聞く。
「…シーツの交換」
「シーツは何処だ?」
「…」
その態度に腹が立ったジェイドが男の首を強く握る。
「かっ!?」
「正直に答えろ。命がいらないみたいだな?店主、詳しく聞け」
ジェイドは宿の人間を人間として見ていない。
目には怒りも籠っていた。
「お前は何をしていたんだ?」
「…金を探していました。店主が睡眠薬を盛るのが待てなくて…先にネコババをしようと…」
男は観念して睡眠薬の計画を話してしまう。
すると店主の顔が真っ青になる。
「な…何を言うんだ?私はそんな!?」
店主が慌てたところでジェイドが「ほぅ」と言って店主の首に力を込める。
「し…信じてください!私はまだ睡眠薬を入れてない!」
「まだ…な。死ぬか?」
そう言うと更に青くなった店主が必死に謝る。
男も観念してカナリーの棺が宝物で埋め尽くされた宝箱だと思ったと言って謝ってくる。
「呆れて何も言えない」
「婆さんがアンタを連れ出した今がチャンスだと思ったんだ」
「…主、どうしますか?」
「不問だ。この村はここまで逼迫していると報告する。今はな」
セレストは店主の前に行くと剣を抜いて見せる。
「次はない。部屋を覗くな、風呂を覗くな、無駄に探るな。対価は払うのだ。守られない時にはどうなるか分かっているな?」
店主は涙ながらに「はい!」と返事をする。
「マッチョ、お前は食事がまだだろう?戻るぞ。ガリベンもついて来い」
そう言ってセレストが食堂に戻る。
「ガリベン?」
「私の名前らしいわ」
ミリオンが呆れながらジェイドに教える。
「マッチョとガリベンね…」
「センスが無いわ」
「今度レドア領に入ったら仕返ししてやれよ」
「何が良いかしら?」
「ムッツリとかか?」
「流石に悪くて言えないわよ」
そんな訳で食堂に戻った訳だが…
「はぁ……」
「まだ…な」
「あらら…」
セレストがため息をついてジェイドとミリオンがあきれ果てる。
店主は食堂のあり様を見て「すみません!すみません!!」と必死になって謝る。
食堂では満を侍して用意された睡眠薬入りの料理をつまみ食いした4人の子供達が倒れるように眠っていた。
「店主?」
「もうしません!もうしません!」
店主は涙ながらに謝罪をする。
「まあ発覚前に仕込んでいたしな」
「それに子供だから効果が早く出たんだな」
そこでジェイドが意地悪く睡眠薬入りの食事を食べると店主の顔を見て笑う。
「へ?」
店主が目を丸くしてジェイドを見る。
「悪いな。俺に毒物や薬物は効かない。だが何を摂ったかはわかる。次はないからな」
「は…はい…」
涙目の店主はがくがくと震える。
「それに悪くない味付けだ。真っ当に仕事ができる世の中になるまで変な真似はするな」
「あ…ありがとうございます」
そうして宿屋のトラブルは収束した。
朝は早く出るからと食料や水なんかを寝る前に宣言通り倍の価格で買う。
ジェイドはセレスト達の許しを得て銀貨を一枚持って老婆の元に行く。
「坊ちゃん?」
「知り合いに会えて嬉しかったよ。これを貰ってくれ」
そう言って手に銀貨を掴ませる。
「そんな!」
「良いんだ」
ジェイドは目を瞑って嬉しそうに言う。
「坊ちゃん…」
「俺はグリアの城を解放する」
「はい。ですが…」
「ああ。多分もうあそこには住めない。
亜人共を皆殺しにしたらその先はその時に考えるよ。
だからその日まで元気で生きてくれ」
その言葉で老婆は泣き崩れてしまう。
ジェイドが老婆の肩に手を置いて「知り合いが居なくなると寂しいだろ?長生きをしてくれ」と言った。
ジェイド達は日の出と共に旅立つ。
宿屋の主人と老婆、それに何も知らずに眠った子供達は目が覚めたのだろう元気よく見送ってくれた。
「なんだかなぁ…」
セレストが辟易としながら言う。
「ワイトと違って俺たちは歓迎されていないと言う事だろうな」
「早くモビトゥーイを倒しましょうね」
そう言って村が小さくなると「おはよー」と言ってジルツァークが現れた。




