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第33話 宿屋の狙い。

小麦は高い所に置いてあったが取れない高さではない。

「これか?」

そう言って渡したところで老婆が「もしやジェイド王子では?」と声をかけてきた。


「だとしたら?貴方は?」

「御身分を明かせないのですか?私は昔城でメイドとして働かせて頂いておりました!」


そう言って話す老婆はグリアのメイド長までしていた老婆だった。


「そうか…元気そうで何よりだ」

「ではやはり王子?ご無事で…ご無事で何よりです!防人の街に連れて行かれてもう助からないと…この村に訪れた亜人共が言っていたのを聞いていて」

老婆は泣きながら話す。


「俺は無事助け出された」

「それではあの方々は…」


「俺の仲間だ」

「そうでしたか!それではせめてこちらをお持ちください」

老婆はジェイドに小さな小瓶を渡す。


「これは?」

「解毒薬です。店主がどこかのタイミングで睡眠薬を混ぜると言っていました。

仮に毒味をしてしまっても良いように解毒薬を持たされていました」

そう言って小瓶を見ると中には透明な液体が入っていた。


「睡眠薬か…、対処可能だから安心してくれ。睡眠薬なのは荷物を物色か…」

ジェイドが察した顔で話す。


「全部は取らないと…無くしたかなと勘違いかと思う量しか取らないとは言っていましたが…」

老婆が申し訳なさそうにジェイドに経緯を説明する。


「それも含めてグリアの責任だ。

俺達がしっかりしていれば民がこんな目に遭う事も無かったのにな…」

「そんな!坊ちゃんは悪くありません!」

老婆は目元を潤ませながらジェイドに縋りつく。


そこに店主が「いつまでやって居るんだ」とやってきた。


「すみませんでしたね。御大尽様なんて滅多に見ないからどんな人かを騎士様に聞いてしまっていたよ。後は本当に薪割りもしてくれるんですか?」

老婆は機転をきかす。


「御大尽の事を聞いたのか?」

「はい。初の公務で張り切っておられるとか、ねぇ?」

老婆がジェイドの顔を見るとジェイドは頷く。


「ああ。主人は調査や亜人討伐に気合い十分だ。安心してくれ。

薪は老婆には大変だろう。今日の分だけなら手伝おう」


「へぇ、おありがとうございます。薪はこちらです」

そう言って店主を置いて外に出る。



「危ないところだった」

そう言いながら薪を割るジェイドに老婆が「坊ちゃんに薪割りをさせてすみません」と謝る。


「何故謝る。こう言うのは男の仕事だ」

そう言いながら次々と薪を割る。


こう言う単純労働は防人の街に捕らえられた最初の一年で嫌と言うほどやらされた。


「だがいつどこで何があるかわからないな」

ジェイドはそう言うとサーチ・フィールドを使う。


「今宿には?」

「店主と手伝いの村人が2人、後は先ほど招いた子供達が4人、それと私になります」


「8人…っ!!?誰だ!」

ジェイドは薪割りを中断して走り出す。


「坊ちゃん?」

老婆が慌てて声をかけるがジェイドは止まらない。

慌てて部屋に戻るとカナリーの棺に手をかける村人が居た。

村人は飛び込んできたジェイドに驚きの声を上げて必死に言い訳を試みるがジェイドには通じない。

瞬く間に首を持たれると宙吊りにされる。


「何をしていた?」

「な…何も…く…くるし…」


「何故ここに居る?」

「し…シーツを交か……」


「替えのシーツは?部屋に入る許可を誰に求めた?」

「……」


その間もジェイドは力を緩めないし声も大きくなっていく。

騒ぎを聞きつけた店主が部屋まで走ってきた。


「何事ですか!?」

「おい…お前の指示か?」

ジェイドは空いて居る方の手で店主の首を掴むと村人同様に吊り上げてしまう。


「何故この男は俺たちの部屋にいた?」

「し…知りません…く…苦し…」


「貴様、恥ずかしくないのか?狙いは金か?」

「し…知らな…」


「俺たちは倍額を払うと言ったんだ。それの何が不満だ?」

「ふ…不満なんて…ない…です」


段々とジェイドは苛立ってきて手に力がこもる。

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