第26話 復讐者の小さな勝利。
亜人共がエア・ウォールの中で何もできずに苦しむ様と絶望する様を見て気分が良くなったジェイドが高笑いをした。
「あー…笑ったぜ。
お前達の処刑方法だがここに居るミリオンに決めてもらおうか?」
「え?私?」
「ああ。ウォーターボールで水責めも楽しいよな。防人の街で散々やられたがあれはすごく苦しいんだ。後はフレイムポールで火炎柱を起こして酸素を全て奪い取るのも良いよな。
ミリオンの火は酸素がなくても魔の力で燃やせるだろ?
酸素が無くて死ぬのか蒸し焼きで死ぬのか?どっちが先かな?
はははははははははは!
ああ、後はポイズンミストの魔法でもいいぜ?パラライズミストと併用も良いな痺れた所に毒で苦しんで死んで行くってな!」
ジェイドは先ほどまでの顔ではなく防人の街で獄長を殴り飛ばしていた復讐者の顔になっていた。
「ジェイド…」
「なんだ?決めかねるのか?
大丈夫だって、亜人なんてこれから先も飽きるほど出てくるんだからさ。何でもやっちゃえって」
ジェイドがわざと悪ぶる話し方をする。
「ジェイド、違う。時間がないのよね?」
「あ、ああ…楽しくて忘れてた。
そうだな。苦しめたいがひと思いにやっちまうか」
ジェイドがカナリーの事を思い出して冷静になったのがわかる。
「わかったわ…。ジェイド、その壁の強度は?」
「あ?試してみてくれ」
その為にも宝珠の力は使わないようにして貰っていた。
「行くわ!ミドルボム!」
ミリオンの声で檻の中に大爆発が起きる。
飛び散った様々なものがジェイドのエア・ウォールにこびり付く。
エア。ウォールは真っ赤になったが割れたり壊れたりは無かった。
「耐えたな俺の壁。ミリオンもう一度だ。亜人共はしぶとい。
もしかしたら仲間を盾にした奴がいるかも知れない。
そう言われたミリオンは再度ミドルボムの魔法を使う。
その威力でジェイドの壁はヒビまみれになった。
「成る程、強度は大体わかった。よし終わったからセレストと合流だ。
その後はカナリーの約束があるから少しだけ2人にしてくれ」
そう言って村の中に入る。
村の中ではジェイドの戦い方を見た者たちが青い顔でジェイドを見る。
「まあ、そうなるよな」
自重気味に笑うと前からセレストが歩いてきた。
「こっちも終わったよ!」
「おう。お疲れ」
だがその時にセレストの後ろから亜人が2人走ってきてフランや女子供に襲い掛かろうとしていた。
「その黄色の服はモビトゥーイ様の仰った聖女!貴様達を殺せばあの壁はなくなる!そうしたら軍勢で蹂躙してやる!」
「馬鹿野郎!セレスト!殺した数を数えなかったのか!?」
ジェイドが慌てて走り出す。
「何!?」
「ジェイド!」
「セレスト!お前はまだ距離のある方を斬れ!
ミリオン!アイスランスの用意!流れ弾が心配だから俺のタイミングで俺の指示通りに撃て!」
ジェイドはフラン達を襲おうとした亜人に飛びついて抱きつくと共に倒れ込む。
「ミリオン!天からアイスランス!俺ごと亜人を貫き殺せ!」
その声でミリオンはアイスランスを放った。
だが慌てた事で無意識に宝珠の力を使ったのだろう。
放たれたアイスランスは1本ではなく30本あって亜人もろともジェイドを穴だらけにしてしまう。
「痛え…、ミリオンの奴。俺に恨みでもあんのか?」
ジェイドが血塗れになりながら立ち上がるとそう言う。
セレストの方を見ると高速剣と言う突進剣で亜人を確実に突き殺していた。
「これで終わったな」
そう言ったジェイドが振り返ってフランを見ると「怪我は無いか?怖がらせてしまったな。もう大丈夫だ。安心していい」と言って微笑んだ。
「……ありがとう」
「いや、気にしないでいい」




