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第25話 エア・ウォール。

塔から降りるのではなくジェイドは飛び降りた。

普通の人間なら骨折をするがジェイドには関係ない。


「セレスト!ミリオン!亜人共を迎え撃つ!」

「ジェイド!」

「いいの?」

セレスト達はカナリーの父カドから事情を聞いていたので最後の時をジェイドと2人きりにさせてあげたいと思っていた。


「カナリーの心はここにある。カナリーと共に亜人共を蹴散らす。皆殺しにするぞ!」

ジェイドの顔は戦いの顔になっていた。


「指示を頼む」

「森での乱戦は経験がないの」

セレストとミリオンが心細そうにジェイドに指示を仰ぐ。


「任せろ。俺が体の勇者としてワイトの持っていた補助魔法を使う。

サーチ・フィールド!

亜人が35か…、村の後ろに15。正面に20だな。」

ジェイドが敵探知の補助魔法を使う。


「ジェイド?敵の位置がわかるのか?」

「ああ、時間制限はあるが戦闘範囲の敵は識別できる。気を付けろ、亜人共は魔法も使う。

ミリオンは先に火災を消した時の行動ウォーターボールとミドルボムを使用して森を湿らせるんだ。火をつけられると一気に不利になる。火災に備えろ。

セレストは突進系の剣は使うな。万一回避されて木に刺さると行動が鈍る」


「了解。私はその後どうすれば?」

「俺が奴らを檻に入れる。その先は俺と合わせるからそれまでは身を守りつつ村人を守れ。

後は定期的に森を湿らせ続けろ」

ミリオンが反論も質問もなく頷く。


「セレスト、森に潜め。殺気を消すんだ」

「わかった」


「よし、時間が惜しいから行くぞ!」

そうしてジェイドが前方の20体に向かいセレストが後方の15体の討伐に向かう。


セレストはジェイドの指示通りに気配と殺気を消すと1人また1人と無音のまま一太刀で亜人共を斬り捨てていく。


逆にジェイドはわざと音を立てて亜人共を挑発する。

そして動き回ることで全ての亜人を一箇所に集めようとしていく。

だが決して怪しまれないように、悟られないように動く。

今は3体目の亜人と戦っていて左腕を折った所だ。

だが側にいたもう1人がフォローに入る。


敵の位置を把握するジェイドには想定内だがそれすら悟られないように「仲間がいたのか…」と捨て台詞を残して次の目標に行く。

そうすると亜人達は「逃げるな!」「捕まえて殺してやる!」と言って追いかけてくる。

最終的に村の方に後退していくと面白いように亜人共が釣られていく。


「18…19…、揃った!ミリオン!来るんだ!エア・ウォール!」

ジェイドがそう言うと空気の壁が亜人共を囲むように展開した。

村から出てきたミリオンが空気の壁を見て驚く。

レドアでは知られていない魔法だった。


「ジェイド?」

「ああ、勇者の補助魔法エア・ウォールだ。雑魚ごときの攻撃で破れる壁ではない」


そう言ってから亜人共の前に出る。

壁の向こうで亜人共は必死に空気の壁を殴ったり魔法を使ったりする。


「馬鹿な奴だ。もうお前達に出来るのは踠き苦しんで死ぬことだけだ」

ジェイドが嬉しそうに亜人を見て笑う。


「何を言う!人間ごときの魔法に負けるか!」

そう言った亜人の1人がファイヤボールの魔法を壁にぶつける。

だが壁はビクともしない。


「ははははは!ざまあないな!」

その後もジェイドは何をするでもなく亜人共を馬鹿にしていく。


その間にジェイドはセレストに意識を向けるともう動く亜人の反応はなかった。

「よし、向こうも片付いた。ミリオン、そろそろ出番だからな。宝珠の力を使わないで援護してくれよ」


「え?使わないの?」

「ああ。理由はすぐにわかる」


そう言って捕らえた亜人共を見ると亜人達はどうにも息苦しそうにしている。

1人の亜人が地面を掘って逃げようとしたのだがジェイドが地中にもエア・ウォールを配置していたので逃げる事はかなわなかった。


「残念だな。まあ亜人にしては、着眼点は悪くなかったぜ」

「ぜぇ……はぁ……出しやがれ…人間…」

亜人が息苦しそうにジェイドに凄む。


「は?馬鹿じゃないか?お前達は死ぬんだよ。エア・ウォールは空気を通さない。それなのに散々火だの何だのやって酸素の無駄遣いをしてたもんな。

苦しいよな!大変だな!

あははははは!

ははははは!!」

ジェイドは声を張って大笑いをする。

亜人達は青い顔で笑い声をあげるジェイドを見る。

確かに亜人の力で殴っても斬っても魔法でも吹き飛ばない壁を前にやれることがなくなっていたのだ。

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