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第110話 死闘の前ぶれ。

それぞれの魔法契約が完了しジェイド達は借りている家に帰ってきた。

3人共納得の結果だったので皆機嫌は良い。

その中でも機嫌がいいのが1人いる。


「ジェイド!明日が楽しみだな!」

セレストだ。

馬鹿丸だ…もとい、年甲斐もなくはしゃいでいる。

余程グリアで折られた聖剣の事で不満が溜まっていたのだろう。

あの後、タカドラに挨拶に来たセレストとミリオンの顔は紅潮していて喜びに満ちていた。


それを見たタカドラが嬉しそうに「世界を頼んだ」と言っていた。

その顔が印象的でジェイドはつい気になってしまった。


代わりに不機嫌なのはジルツァークで兎にも角にも面白くないと言う顔をしていた。

「ジル?」とジェイドが聞くと「何?」と普段のジルツァークの顔と声ではなくて少し驚いてしまう。



半分当てずっぽうだったがジェイドはジルツァークに「干渉値の事があるからジルも辛いよな」と言う。


「え?」と驚いた顔をするジルツァークに「いや、ジルも俺達に聖なる装備を授けたかったのに出来なくて自分を怒っているのかと想ったんだ」とジェイドが返すとジルツァークが嬉しそうに「そうかも」とはにかんでジェイドの周りを飛んでいた。


帰宅してからもセレストはジェイドとミリオンの制止も聞かずに聖剣を抜き差ししては「これで僕は亜人を倒して皆を守れる!」と意気込んでいて「ジェイド、この後修行に行かないか?」と言って呆れられていた。


ミリオンは嬉しさを隠しながら「これで少しは肉弾戦も出来るから安心してね」とジェイドに言う。


「頼りにしている」

ジェイドはそう言ってから眠りに着いた。




「ジェイド!」

「イロドリ」

今晩も元気そうなイロドリがニコニコと笑顔でやってきた。


「お疲れ様。いよいよだね」

「ああ。イロドリの方はどうだ?」


イロドリの方と言うのはタカドラを殺さないための用意や神の世界でイロドリに注意をしている他の神々の事を指している。


「リュウさんの用意はほぼ完璧。でも今日はジェイドのおかげで助かったよ〜」

「何?」


「ジルツァークだよ。怒って危うくリュウさんを殺しにかかるかと思ったもん」

「そうだったのか!?」

ジェイドはイロドリと居る時はジルツァークを疑う考えにいちいち異を唱えない。

それよりも、ジルツァークを疑う前提で話をしたほうのが実りはあると思っているのだ。


「うん」

「イロドリ、この前言っていたタカドラの死は免れないのか?」


「うん。ほぼ確定されている。それを覆す為に頑張ってるよ。

でもこれだけは意識して、タカドラがジルツァークに殺されるのをジェイド達の前でないと意味がないの。

だからタカドラがジルツァークを挑発するからね」


どうしてジェイド達の前なのか疑問は残ったがそれよりも挑発と言う部分が気になる。


「何!?そんな事をするのか?」

「うん。でもそれはジルツァークを悪く言うよりジルツァークの本性を暴くための言葉だから荒唐無稽の言いがかりではないの」


そうしてジェイドはイロドリの計画を聞く。

だがそれはジェイドには荒唐無稽で驚いてしまう。


「そんな事が?イロドリ達の間違いでは…」

「ごめんね。これが真実なの」

イロドリが八の字眉毛で困りながら言う。


「そんな…、まさか…」

それはあまりにも衝撃的でジェイドでも狼狽えてしまう。


「ごめんね。本当は亜人界に入る時に告げる話だったけど事態が急変したの」

「急変?何があった?」


「明日の性能試験は死闘になるの」

「死闘?」


「うん。違っていたら私を疑っても良い。でも死闘なら今の話を信じて」

「イロドリ…」


「私の介入で話が変わってしまったのかも知れない。

ジェイドたちには更に過酷になってしまった…」

そう言うイロドリな目に涙を溜めている。


「イロドリ、泣く事はない。明日も無事に切り抜ける。エルも居る。聖鎧もある。セレストとミリオンも居る」

ジェイドがイロドリの頬に手を当てて「平気だ」と再度言うとイロドリが嬉しそうに「ありがとうジェイド」と言って笑う。


「そうだ、リュウさんがこの世界の始まりをジェイドにも見てもらってと言っていたの。

でもリュウさんもショックを受ける程の話だから私は反対したの…」

「そうか、ありがとう。大丈夫だ見せてくれ」


そう言ったジェイドはタカドラも見た眼鏡の男神とジルツァークの話を見た。

何を言っているのかわからない部分があったがジェイドは何とか理解をしようとした。

承認欲求、損得勘定、怠惰…。

それにより失われた創造の力。

そこをジルツァークに利用された事は理解できた。


「見た」

「うん。これがエクサイトの始まり」


「ジルが作った人間界は土地が痩せていたのも食べ物の栄養なんかが違うのも…」

「ジルツァークが作ったからだよ」

そう言われてジェイドは初めて穴を抜けて上層界に足を踏み入れた日の事を思い出していた。



「本物とそうでないものか…」

「ジェイド?」


「俺にはわからないな。どちらも本物だ。承認欲求の神と言うのもわからない。そんな事で創造をやめられると言うのもわからない」

「ジェイド…、そうだね」


「俺は皆に出会っても復讐はやめられない。亜人共を皆殺す事は決定事項だ」

「うん。…亜人界に入る前に亜人について教えたい事があるの。今教えても良い事はないからやめるね」

また八の字眉毛のイロドリ。幼い少女なのにこんな顔をさせてしまっている事が心苦しくてたまらなかった。


「そうか。わかった。わかったと言えばジルが昼間何に怒って居たのかがわかった気がする」

「ジェイド?」

ジェイドの中で一つの仮説が成り立っていた。

そこにたどり着けただけでもこの映像を観た価値はあった。


「恐らく今の本物と同じ話だ。ジルは自分で用意した武器防具で亜人の討伐を狙ったのかもしれない。だが俺達が聖なる装備に喜んだ事が面白くなかったのだろうな」

「あ…、そうかもね。ジルツァークにはどれも本物ってわからないんだね」


「まあとりあえず明日の死闘とやらを勝たねばな」

「うん。頑張ってね」


「ありがとうイロドリ」

ジェイドはそう言って目を覚ますと夜明け前だったが二度寝はやめにしてリビングに行く。

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