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第109話 聖棍エル。

突然タカドラの魔法契約が締結された所で聞こえてきた声が自身の右手にある元聖剣、現聖棍だと知ってジェイドは右手を見て「聖棍?」と聞き返していた。


「いちいち声に出すと壮絶な独り言で恥ずかしいだろ?心で語りかけてみろって」

「こうか?」

何となく思って見た感じで話しかけてみる。


「いいねぇ、出来てるぞ。じゃあ、まずはタカドラとワタゲシに感謝を告げろ」

聖棍の声が途切れたところですジェイドはタカドラとワタゲシを見る。


「聖剣として生きた年数のお陰で心が宿っていてな、オヤジがリーディングして悔しい気持ちとか伝えただろ?あれな」

ワタゲシが嬉しそうにジェイドに言う。


「聖剣の心」

「そうだ。聖剣は聖棍に名と姿を変えたがお前と戦う仲間だ」


「名を聞いたか?聖棍の奴、中々粋な名を名乗るぞ」

タカドラが面白そうに聖棍を見て言う。


「何?」

ジェイドは聖棍に「名前とはどういう事だ?」話しかける。


「おう。よろしくな。俺の名はエルな。お前を想って死んで行ったエルムの代わりに俺がお前の復讐に付き合うから名前はエルだ」

「エル…」

聖棍は自慢げに自身をエルと名付けていた。

エルムの命を絶ってしまった後悔から来ているのかも知れないとジェイドは思った。


「この復讐は俺とお前の復讐だ。

下らぬ遊びでお前の妹を殺させられてモビトゥーイに折られた聖剣としての俺。

そして家族を奪われたお前の復讐だ。

2人で亜人共を蹴散らすぞ」

その力強い声。

この声なら最後まで復讐に付き合ってくれるだろう。

ジェイドはそう思って嬉しい気持ちから「ああ」と答えた。


「後はあの聖剣だけだとこのサイズにならないだろ?そこはワタゲシとワタブシが手を尽くしてくれたからな。感謝しろよな」

「何?」


ジェイドがワタゲシに向かって「聖棍が感謝するようにと言っている」と聞く。


「お喋りだなコイツ。気にすんなって」

そう言って笑ったワタゲシだったがジェイドが気にした顔をしているので頭をかいた後で仕方なく何があったかを告げる。


「まあなにかと言えば、棍棒にする為に鉄が必要だったろ?

勿体無いからボロボロの聖鎧とお前が持ってた棍棒と鎧。後は最初の頃に練習で使った鉄の棒も溶かして混ぜたんだよ。聖剣の硬さと棍棒や鎧の鉄、後は鉄棒の鉄を混ぜ合わせて柔軟かつ硬い棍棒にしたからな」

そう言われてワタゲシが赤くなる。

ちょっと恥ずかしかったようだ。


「普通に作るより手間だったのではないか?」

「まあな。でもよ…やっぱドイツもここで終わりではなくて先に行きたいだろうからな連れて行ってやってくれ!」


「ありがとう。助かる」

「へへ、照れるぜ。家族や民、妹さんの敵討ちが出来ると言いな」


ジェイドは「ああ」と言うとタカドラを見る。

「タカドラ、ありがとう。聖棍と話が出来た事も感謝している」


「いや、共にこの世界をより良くしような」

タカドラがそう言った所でジルツァークがやってくる。


「ジル?」

「やっぱりジェイドが心配で来ちゃったよ」


「そうか?ありがとう。タカドラの魔法契約はワタブシとほぼ同じで後は聖棍と話せるようにしてくれたんだ」

「え?そうなの?」


「ああ、長い時間をかけて聖剣に心が宿ったらしい」

「ふーん、そうなんだ。私とも話せるのかな?」

ジルツァークが不思議そうにジェイドの右手を見る。


「ああ、エルはそう言っていたぞ」

「エル?」


「聖棍の名前だ。自分で名乗った。エルムの復讐も連れて行ってくれると言っていた。だからエルだ」

ジェイドが嬉しそうに右手の聖棍をジルツァークに見せる。


「じゃあ話してみよう。エル」

「聞こえている。ジルツァーク久しぶりだな」

ジルツァークが話しかけるとエルが反応をした。

そしてその声はジェイドにも聞こえている。


「久しぶり?あなたってどこから記憶とか自我があるの?」

「…ワイトがブルアに住んで家族を持ち王族として長い名前になった辺りからだ。だがあの頃はうろ覚えでな。気づいたらグリアに居た。確実なのはここ10年。俺の前でジェイドの父親がジェイドに勇者の力を譲った辺りからだな。あの時も何回か城に来てジェイドに話しかけていたよな」


「うん。モビトゥーイが動き出すのはこの時代だからね」

「ああ、ジルツァークは熱心にジェイドに何を勉強をしたのかとか何を知っているのかを聞いていたな」


「え?そんな事まで知っているの?」

「まあな。ジェイドは時間があると俺の傍でエルムに訓練の内容やジルツァークと話した内容なんかを教えてくれていたからな」


「あ、そうなんだ」と言ってジルツァークは納得したのだろう。「ジェイドをよろしくね」と言って話を終わらせる。


「タカドラが魔法契約って言い出したから何をするのかやっぱり心配で来ちゃったんだけど、こういう力なら安心だよね」

ジルツァークが笑いながら言う。


「ジル?そんなに慌ててどうした?笑っているが空気は慌てているぞ?」

ジェイドが訝しむとジルツァークは「そうかな?」と言う。


「ああ、タカドラの魔法契約の何が心配だったんだ?」

「…ううん、何でもないよ。旅が終わったら「ジルは心配性だな」って笑い話になるような奴だからその時話すよ」


そう言ってジルツァークは「向こうに終わったって言ってきてあげるね」と言って去って行った。


「何だ?ジルツァークの奴」

ワタゲシが訝しげにジルツァークの後ろ姿を見る。


「ジェイド…。これから起きる事をよく見て判断をしてくれ」

「タカドラ?」

一瞬驚いた顔をしたジェイドだったがすぐにいつもの顔に戻ると「ああ、了解だ」と言った。


ジェイドは聖鎧の背中に聖棍を背負ってジルツァークの事を考えていた。

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