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第108話 聖棍。

タカドラの神殿に着くと出入り口で待っていてくれたワタゲシが手を振ってくれた。


「準備はできてんぞ」

そう言われたジェイドがワタゲシの後ろを着いて行くとタカドラの前に魔法陣が用意されていてその真ん中に置かれた長めの棍棒が見えた。


白銀の塊。

形容をするのなら牛の足。それもかなり筋肉質な牛の足のような長さと太さの塊が置いてある。

その棍棒は光り輝き、神々しく感じる気配すらある。


「これが…」

「おう、お前の武器だ」

親指を上げてニカッと笑うワタゲシ。

ジェイドは今ここに居る疑問をワタゲシにぶつけてみる事にした。


「何故俺だけタカドラの契約が必要なんだ?」

「…お前にリーディングを教える時間が無かったからタカドラに頼んだんだよ」

ワタゲシがやれやれと言う。


「は?」

「まあいいからさ。魔法契約してこいって」

そう言われたジェイドは何が何だかわからないままにタカドラの前に出る。


「よく来たな」

タカドラはいつもの余裕に満ちた表情でジェイドを迎え入れる。


「ああ、済まない。よろしく頼む」

タカドラは大きな目を綴り集中を始める。

何となく神殿の室温が下がった気がする。


「タカドラ、俺の名は…」

ジェイドが名前を伝え忘れていた事に気付いて慌てる。


「先程聞いていた。まあ聖剣…この場合聖棍からも聞き及んでいる」

だが知っているとタカドラが言う。


「聖棍から?」

「それも契約が済めばわかる。ジェイドよ聖棍を持て」

ジェイドはわからない事だらけと言う顔で聖棍を持つ。

重さはかなりずっしりとしていたが何とか持てない重さでもないし振れない重さでもない。

皮肉な話だが防人の街で行われた様々な拷問が活かされていると思う。

両手で大岩を括り付けた木の棒の素振りだけを不眠不休でやらされた日の事を思い出す。

「支配の玉」に抗えなかった当時のジェイドは雨ざらしになりながら一心不乱に素振りを続ける。

筋肉が裂けて内出血を引き起こそうが重さに負けて骨が折れようが肩が外れようが身体は命令のままに素振りを続けさせられた。

そして同時に回復をしていく。

それを繰り返した結果。今の膂力を手に入れた。


皮肉な話だが亜人共の拷問で身に着けた筋肉で亜人共を殺せる。

そんな事を想いながら棍棒を持つ手に力がこもる。


「行くぞ【汝、ジェイド・グレオス・グリアは棍棒と魔法契約を成し他人に持たれる事を契約違反とする代わりに心を通じ合せ、身体の一部と相違なくなる事を約束する】」

タカドラの声で魔法陣が光り、その後で聖棍とジェイドの身体が光る。


「よし、最初の段階は済んだ。暫し待て」

ジェイドはタカドラの言う通り少し待つ。

すると鎧の時と同様で一体感が増すごとに徐々に聖棍の重さを感じなくなって行く。


そして途中から何かが聞こえ出した。

「おい!聞こえるか?」

そう言う声が頭に響いた。

だがタカドラの声でもワタゲシの声でもない。


「声?」

ジェイドは慌てて辺りを見たが声の主は居ない。


「よし、成功だな」

タカドラが満足そうに言う。


「タカドラ?」

ジェイドはタカドラの顔を見るが頭に響く声は止まらない。


「いいから聞けって、無視すんなって」

「何処だ!?」

ジェイドは再度周りを見渡すが気配なんかは感じない。


「お前の右手だよ。でもって声はお前の頭に語りかけてるから反響するし、お前以外だと神通力を持つタカドラと神であるジルツァークにしか聞こえないからな」


ジェイドは慌てて右手を見る。

右手にはワタブシが作ってくれた聖棍が握られている。

まさかこの聖棍が?そう思った時また声が響く。


「そうそう。ようやくお前と話せて嬉しいぞジェイド」

ジェイドは驚いた顔で「聖棍?」と聞き返す。

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