第102話 死期を前にしたタカドラ。
タカドラは目前に迫った死に対しそれなりに恐怖していた。
明日は土曜日でジェイドの為に神通力を用いた特別な魔法契約をする。
そしてその翌日が聖剣の性能確認。
更にその翌日がジルツァークとの繋がりを絶った状態での聖剣の性能確認。
火曜日はジェイドの提案で送別会になった。
自分がジルツァークに殺されるのは出来たら水曜日にしたかったがそれでもジェイド達が稼いでくれた時間を無駄には出来ない。
そしてジェイド達の目の前で殺される必要がある。
そんな事を思いながら眠りに着く。
本来のタカドラに睡眠はほぼ不要で怠惰を紛らわすものでしかない。
自分を生み出した神が何を思ってタカドラを生み出したか。
何をさせたかったのか。
それはイロドリにやんわりと教えてもらった。
タカドラはショックを受けないからもっと教えてくれとイロドリに迫ったのだが、イロドリは「今は言えない」と拒否をした。
それでも生み出された理由はとんでもない、なんとも身勝手な理由だった。
それ以上に愛の無い所から生まれた自分が哀れに思えてしまった。
タカドラが座している場所、そこにタカドラが居る事が目覚めた時からの使命だった。
そしてその裏に置かれた4つのタマゴ。
約500年の間、何も起きなかったタマゴ達。
これの意味はイロドリが教えてくれた。
意味と言っても「このタマゴが無くなったら世界は滅びるの」と言う事だった。
世界が滅びると言ったイロドリは無関係な神なのに申し訳なさで泣きそうだった。
神とは言え見た目通りの幼子なのだろう。
自分には力があるから助けたい。
見ていられないと言っていた。
イロドリの事を思いながら眠ると目の前に本物のイロドリが現れる。
「こんばんはリュウさん」
イロドリは「ドラゴンは竜だからリュウさんね」と初めて会った日に言った。
最初は愛らしい幼女の出てくるおかしな夢を見たと思ったのだがそれはすぐに現実のものと知った。
そして世界の始まりから何から説明をしてくれた。
「こんばんはイロドリ様」
「んも〜、様はいらないよぉ。もうすぐリュウさんも神化して神になるんだよ?」
イロドリがプリプリと怒るポーズで呆れながらタカドラに話しかける。
「生きていれば…です」
「その為に皆で頑張ってるんだよ」
「はい」
本当に真剣に向き合ってくれるのだろう。
可愛らしい見たこともない着衣を乱しながら話してくれる姿は好感しかない。
「今の進捗だけ話すね。偽装と隠匿の力は聞いてきた。ようやく教えてくれる神に出会えたの。だから明日の夜は練習をするからね」
「はい」
「ジルツァークはリュウさんの神化を何が何でも止める」
「はい」
「それこそ殺してでも止める。だからリュウさんはそれをジェイド達の前で行って」
「はい」
「怖い…よね、ごめんね。私はね…本当は今すぐにでもエクサイトに来て戦いたいの。皆の為に女神として導き助けたいの。でも偽装と隠匿を教えてくれる神ですらそれは良くないって止めたの。やっていい範囲は夢で命を導く事と神になるリュウさんを助ける事だけ。後はジルツァークが神の力でエクサイトを壊そうとした時に止めるだけ…」
「イロドリ様…そこまで想ってくださっていたのですね?」
「でも何もできなくてごめんね」
「いえ、我々はイロドリ様に会えなければ何も知らぬままに使い潰されて殺されていました。感謝しかありません」
「リュウさん…。私は様なんかじゃないよぉ」
「いえ、祝福された女神。私達を導いてくださる女神イロドリ様です」
「恥ずかしいよぉ」
「イロドリ様、死ぬ気はありませんが、死ぬ前に知りたいのです…」
タカドラが真剣な顔でイロドリを見る。
「エクサイトを作った神の事?」
「はい」
「そしてエクサイトが出来て神が旅立つまでの事だよね?」
「はい」
タカドラの顔は真剣でイロドリには断れない顔だった。