第9話 初の特訓
「おい、起きろユーキ。もう朝だぞ」
どうやらセシルが起こしに来てくれたらしい。
「…」
だが、当の悠木は起きる気配は皆無だった。
「おい、起きないか」
「うーん…あと50分…」
「そんなにゆったりしていたら朝が終わってしまう。それに」
「フッフフフ、ボクからの素敵なモーニングコールをよっぽど御所望と見た」
ジャルタは杖を振りかざすと、突風がシーツをはがし、悠木とドラゴンは壁に叩きつけられた。
「っつ~!何するんだよ…」
眠い目をこすりながら起きる二人に、ジャルタが微笑みながら、
「おはよう!さあ、今日から元気に特訓だ!」
朝ごはんであるトーストを頬張りながら、悠木は尋ねた。
「で、特訓って一体何するんだ?」
「食べるか喋るか、どちらかにしろ…全く。ユーキは私と剣術を、ドラゴンはジャルタと魔法を学んでもらう」
「剣術か…アニルマを使う上でも、大事だったりするのかな?」
「本気で言ってるのか?」
セシルは若干呆れながら言った。
「いいか、確かにアニルマは魂を媒介にした強力な剣だ。しかし昨日、光の刃を出すだけで相当な体力を消費したのではないか?」
「ああ、それは確かに。何ていうか、グランド10週する以上の疲れがどっと来たよ」
「? まぁ、それ相応の体力を消費するようだ。まぁジャルタの受け売りなんだが」
『でもって、俺は魔法とやらの特訓らしいけど、どんな感じなんだ?』
ドラゴンの問いにジャルタが答えた。
「うん、キミには体の大きさの問題で、フィジカルよりマジカルで戦った方がいいと思うんだ」
『…どーせ俺は小さいですよーだ』
「フフ、そう腐るなって。ボクが見た所、キミの中では高純度のオドが渦巻いてる。これをキチンと出力すれば、それだけでちょっとした範囲攻撃につなげられると思うんだ。その手引きをボクがしようって話さ」
『なーんか不安だな…とりあえず、よろしくな』
そして朝食が終わり、3人と1匹は洋館を後にした。
「昨日の今日だ。教団の連中がボクらを探してるかも知れない。だから、ボクの結界が貼られたこの近辺で特訓と行こう!」
「ユーキは私が指導を、君はジャルタから指導を受けてもらうぞ」
『おう。それじゃ先生は何を教えてくれるんだ?』
「OK!その意気やヨシ。少しボクに付いてきてくれるかな?」
そう言って、遺跡の追手から逃れた時の門のような物をジャルタは展開した。
「おいおい、結界内でって言ったのに、2人は別の所で特訓なのか?」
「ご心配なく!ボクの結界はこの一帯を球状に覆っている。よって、地下も問題なくスポッと結界内って訳さ。ここの地下は洞窟になってて、ちょっとやそっとの魔法ではびくともしないから、思う存分魔法が行使できるよ!」
果たして、崩れたりしないのだろうか?不安だ…
『おい、俺生きて帰れるよな?』
「きっと大丈夫さ…多分」
『多分ってなんだよユーキ!』
「それでは、一名様ご案な~い!」
ジャルタはドラゴンの手を取り、門の中へと入って行った。
「ではユーキ、私たちも始めるぞ。まずは、私に攻撃を当ててみろ」
悠木は驚いた。
「ちょっと待ってよ。攻撃を当てるって…切りかかって来いって事か?」
「勿論、そう言ってるんだ。光の刃を作ってもらっても構わない」
「正気か?」
「ああ。アニルマは魂、ひいては持ち主の感情や精神に強く反応する剣だ。だからこそ、実戦形式でユーキの覚醒を促す」
悠木は戸惑いながらも、セシルの意志に応えるために剣を構えた。
「行くぞセシル。どうなっても知らないぞ!」
悠木なりに精一杯アニルマをセシルに振り抜いたが、セシルは受けるまでもなく、スッ、と後ろに躱した。
「踏み込みが甘いぞ、ユーキ!」
セシルは悠木の首に向けて剣を振り…寸前で止めた。
「これでお前は一度死んだ」
悠木は唾を飲み込む。
「本当に、当てても構わないんだな?」
「くどいぞ!死ぬ気で挑んでこい!」
セシルは本気だ…なら、俺もそれに応えなければいけない。
「わかった。俺も本気で行くぞ!」
そして、悠木はセシルに切りかかった。
「はああああああああ!」
2つの人影がの剣がそれぞれ交差する。森には、鈍い音が何度も響き渡った…