表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/28

第8話 異世界での1日目

あれから、悠木は我に返り、怒るセシルとはぐらかすジャルタを抑えるのに随分苦労した。

ジャルタも形だけは謝ってくれたが、とても反省しているとは思えない。

セシルはジャルタが命の恩人且つ、久方ぶりの入浴だったので気が緩んだ…という事で無理やり納得したようだ。

「それにしても、マントの随時着用が性別バレを防げると思っていたとは…ボクは驚いたよ」

そして、悠木の仲裁を無駄な物にするような台詞をジャルタが口走る。

「…いいだろ、別に。髪がジャマだからマントを着こんだままでも」

湯船に入る気も失せ、湯冷め防止なのかマントを着こむセシル。

「まぁユーキにも隠し事する必要がなくなってよかったじゃん。そうだ!お風呂も空いた事だし、次はユーキが入りなよ。ドラゴン君も一緒にさ♪」

「そうだな。じゃあ俺もお言葉に甘えて。今日は色々あって本当疲れた…」

『俺も毛づくろい…じゃなくて鱗づくろいといくかー』

そして風呂場に向かう際に、ジャルタは悠木に耳打ちしてきた。

「せっかくのセシルの残り湯なんだ、ゆっくり堪能しなよ」

ピタリ、と悠木の動きが止まる。

『おいどーしたユーキ、さっきから真っ赤になって止まってばっかりだけど、熱でもあるのか?』

「いや、熱とかじゃ…ある意味熱だけど…いやなんでもない!行くぞ!」

止まったり急いだり忙しい奴だな、と呟きながらドラゴンは悠木に並んで風呂場へ向かった。


『はー、生き返るなー!』

「本当、今日は疲れた…」

1人と1匹は湯船に浸かり、疲れを癒していた。

「そうだ、お前…ドラゴンはさ、モルドラコスじゃないんだろ?」

『さっきから何回も言ってるだろ?俺はそんなんじゃねぇって』

「うん、だから名前とかないのかなって」

ドラゴンは背泳ぎのように湯船に漂いながら、答える。

『そんなもんはねーよ。好きに呼びな』

「うーん、小さいからトカゲでいいかも」

冗談らしくケタケタ笑いながらドラゴンに向けてそう呼びかけた刹那

『おい、俺をそんな安っぽい種族で呼ぶんじゃねぇ』

浴槽がしん、と静まり返る。


「…いや、悪かった。そこまでマジに怒るなんて思わなかったよ」

実際、悠木は血の気が引いた。声と共に、明確な殺気まで感じたからだ。

しかし、当のドラゴン自体も驚いていたようだ

『俺も驚いたぜ。今のユーキの一言で、なんかこう…潰してしまおう、もういいからコイツを…消しちまおう、みたいな感情がふっと、湧き出た』

可愛いナリして、なんて物騒な…と思いながらも悠木は

「もしかして、本当にモルドラコスそのものだったりして」

場を和ませるつもりで言った事だが、ドラゴンからは笑いも怒りもなく、淡々と答えが返る。

『ああ、そんな一回り昔の奴じゃなく、俺は今の破壊竜だ』


再び、静寂が場を支配する。

何か話そうにも、頭が、舌が動かない。もし本当なら…

『なーんてな!ユーキはよく止まるよな~、ビビり過ぎだぜ!』

呆気にとられた。

『そんなにビビッてばっかじゃ、この先やっていけねーぞ。帰るんだろ?元の世界に』

「あ、ああ。そうだよな」

『ったく頼むぜ!お前はこの俺を助けてくれた勇者なんだからよ!』

悠木はドラゴンを持ち上げた。ドラゴンはワッ、と驚いた。

「そうさ、俺はお前を助けた勇者…とか言われてもよく分からないけど」

『おいおい何しやがるんだよ離せよ食っちまうぞ!』

ドラゴンはじたばた暴れるが、本気で暴れている感じではなかった。

「でも、お前なりに励ましてくれたんだよな。有難う、破壊竜!」

『おうそーだぜ!この俺が…破壊竜が目を覚ましたからには何でも来いだぜー!』

1人と1匹の笑い声が、風呂場の中で反響していた。


「向こうは、随分と騒がしいな」

「うんうん、どうやらあの2人も打ち解けたようだね」

セシルとジャルタは客間で寛いでいた。

「今日だけではまだ、何も分からない。本当にあのドラゴンは無害なのか」

「それもそうだけど、教団があの2人を追っている以上、放ったらかしとはいかないね。だから、あの2人を鍛えようと思う」

「ジャルタは、アニルマの力…能力をどこまで把握してるんだ?」

問われたジャルタは、頬に指を当てながら、

「んー、正直何も分からないね。だから、ボクからは魔法を基礎とした心構えを、セシルは剣術を教えてあげてほしい」

セシルは驚いた。

「私が?」

「そうさ。自称正義の味方のセシルとしては、ここでさよならは夢見が悪いんじゃない?」

セシルは微笑んだ

「自称とは失礼な。私があの2人を助けたんだぞ?勿論、協力させてもらうよ」

ジャルタは両手を上げて喜んだ

「有難う!儀式を止められなかった責任を1人で背負うの辛かったんだよ~。一緒にこの苦労を分かち合おうね!」

「それはいいんだけど、ジャルタ程の魔法の使い手の干渉を防ぎ、儀式を完遂した相手だ…我々で何とかなるのか?」

不安をぬぐいきれないセシルに、ジャルタはウィンクしながら

「なーに、こっちにはアニルマが選んだ勇者とこのボクがいるんだよ!大船に乗ったつもりでいてよ!それはそれとして、セシル」

「なんだ?」

「本当の名前も教えてよ」

セシルは笑いながら

「私はセシル、ただのセシルさ」

「女の子ってバレたんだから、そこまで突っ張る所なのかな、そこ」

(でもま、女の一人旅を隠す意味の男装以外に、何かありそうなんだよね、この娘)

様々な思惑を抱えながら、1日が終わる。

悠木とドラゴンは、ジャルタから同じ部屋を与えられた。


悠木は1日を振り返っていた。

このドラゴンとこの剣で、果たして何を為せと言うのか。

まだ何も分からない。分からない事だらけだし、実感も沸かない。

でも今は、命を助けてくれたジャルタとセシルを信じて、俺にやれる事を精一杯やって行こう。

そして悠木は、決意を新たにした所で、眠りに落ちた。

初めまして。如月瞬次と申します。

この度は初の拙作にここまでお目を通していただき、誠に有難うございます。

活動報告かあとがきのどちらにご挨拶&謝辞を述べるか悩みましたが、ここあとがきにてお目汚しの形を頂いた次第です。

読み飛ばして頂いても構いません。


さて、恥ずかしながら私の1作目「異世界にて勇者で竜操者(仮)な将来を!」、通称「いせゆう」なのか「いせドラ」になるのかはさておき、自分としては「男装のヒロイン」「異種族との友情」を描きたくてこの度、異世界転移のフォーマットをお借りして書かせて頂いた次第です。

あ、これは作品のネタバレになるのですが、「竜操者」と書いて「ドラグナー」と読みます。

果たして、悠木は竜装者たりえるのか?まぁ、(仮)とついてるので、そうそう容易くなれるとは限らない…かも!?


作品の解説はここまでにして、今回、拙作を書くにあたり、自分の文章構成力とか展開とかもっとやりようがあったよな…など、割と見切り発車で始めた当作品のアラとか反省がアリアリと出てきて、自分としては皆さまに目を通して頂く上で、どうするのが正解だったのかが答えが出ず、現状「自分が納得できた物をお出しする事が皆さまにとって一番」の出来だと信じて更新しております。

また、投稿は最新話から二日までを心がけておりますが、もし所用で投稿ペースが遅れるようでしたら活動報告にて書きこませて頂きますので、その際はよろしくお願いします。


イマージュに来訪して長い1日が終わり、悠木を待ち受けるものとは…

もし宜しければ、この先もチェックして頂けると幸いです。


長文失礼しました。ここまで読んで下さった皆様に、感謝を!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ