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第4話 教団の企み

「ようこそ。そして初めまして、ボクの工房へ」

そこには、小さな少女がぽつりと立っていた。

小柄な身には不釣り合いな帽子と厚手のローブ姿が特に目を引くそのフォルムに、

髪はピンクで手持ちの青い杖がモスグリーンと言うのか、森の保護色と言わんばかりの濃い緑色との対比が目を引いた。

「助けてくれた事に感謝を。私はセシル。こちらは教団により呼び出された勇者と…この小さい竜は、モルドラコスでいいのかな?」

『おいおい俺をそんな名前で呼ぶんじゃねー!』

ドラゴンはしきりに抗議しているが、剣士に声は届かないようだ。それにしてもあの剣士の名前はセシルと言うのか

「知ってるよ。ボクみてたもん」

「え?」

見ていた?一体どういう事だ?

「ボクの名前はジャルタ。久遠の遺跡を見守るために森を縄張りにした魔法使いさ」

マジかよ…そう思わずにはいられなかった。

「…なんで俺をこの世界に?」

悠木の問いにジャルタは、人差し指を頬に当てながら

「んー、障壁をかけられていてさ、遺跡内部の様子を覗き見る事が出来なかったんだよね。ごめん」

「そうか、それで遺跡から出てきたときに助けてくれたんだな。ひとまず礼を言うよ、有難う」

ジャルタは悠木の謝辞に帽子を目深にかぶり、後ろを向きながら

「いいのサ。君にはこれからもっと強くなってもらう必要もあるからね」

「?」

ジャルタはローブを広げながら向き直り、満面の笑顔で、

「自分の身は自分で守る。シンプルだろう?」

悠木が呆気に取られている間に、彼女は杖を振り上げていた。


杖の先端は悠木の頬に直撃する寸前で、ピタリと微動だにせず静止した。

「森の賢者よ、これは一体どういう事か」

セシルが問う。命の恩人もあって剣こそ抜きはしないが、顔の険しさが緊張感を物語る。

「そのままの意味サ。勇者サマにお帰り頂くには祭壇で儀式を執り行う必要がある。だけど肝心の祭壇はあのおっかな~い教団が抑えてる以上、まずは鍛える必要があるのサ」

ジャルタは楽しそうに告げる。

「俺に拒否権とか…そういうのはない感じ?」

「正直言うと、近隣の大国…ここからなら森を抜けて西にそびえるアルギュレ国に救援を要請するのが上策だと思うよ。でも2つの要素があって、下手に逃げるより力を付けた方が君にはプラスになるんじゃないかな」

ジャルタは続ける。

「まず1つ目。モルドラコスを封印していた至高の剣にして唯一の鍵、アニルマ」

凄く大仰な二つ名が出て来た。確かに重さもほとんど感じないし凄い剣だとは思ってたが…唯一と来たか

「その剣を引き抜く為だけにキミは呼ばれたのサ。逆にそれを奪うなり砕こうとするおっかなーい連中がわんさか来る可能性がある。教団以外にもね」

敵を引き寄せる…なんだろう呪いのアイテムだろうか。少し、いやかなり不安だな

「キミはここにきて間もないヒヨッコ。まだ絞め殺すには早すぎる。だから成長していっぱしの鳥さんになってもらおうかな~って」

いきなり連れてこられた、悪く言えば拉致された状態の悠木としては、期待3割不安7割と言った心情だ。

「一人で特訓ってのは、正直不安だな」

「そこで2つ目。キミの相棒の小さなドラゴン君」

空中にてふわふわ飛んでいるドラゴンに向き直り、ジャルタは続けた

「君には、この勇者サマの右腕になってもらおう」

「え」

『え』

「えええええっ!?」

驚く2人と楽しそうなジャルタ、それらをただ見据える剣士。

ようやく、歯車は動き出す。


「まーお二人さん落ち着きなさいな。まずはドラゴン君…っとと、その前に」

ジャルタは杖をドラゴンに向けた。

「…かの者の思念よ、その音色を皆に響かせたまえ」

言葉を紡ぐと、杖が少しだけ光り、ジャルタは杖を下げた。

「これでヨシ。ではドラゴン君、自己紹介をお願いします」

『んな事言われてもよ~、俺には名前とか特にないんだけどよ』

この言葉にセシルが驚いた。

「何?もしかして今の声…モルドラコス?」

『だから違うって!そんな名前で呼ぶな!』

2人のやりとりにジャルタは一人頷き

「今までドラゴン君の声はアニルマを持つ勇者サマにしか聞こえてなかったけど、これでみんなとおしゃべりできるようになったね。初めまして!」

『お、いっぱしのドラゴンとして扱ってくれるのか!アンタいい奴だな』

「それほどでもあるけどサ~へへへ」

この2人中々なコミュ力の高さである

「さて、これで話がしやすくなった所で、本題に移ろうかな」

ジャルタは、悠木と小さなドラゴンに向き直る。

「これは2人にとってとても重要な話で、勇者サマもドラゴン君も、モルス教団っていうおっかな~い奴らから身を守るためには必要不可欠なんだ」

「なぁ、モルス教団ってなんなんだ?」

「うん、簡単に言うと世界を破滅に導こうとする危ない人達サ」

いつの世も、どんな世界にもこういう連中は出てくるらしい。

「僕が魔法を使えるように、この世界には魔法が体系化されていて、素養がある人は学べば色んな魔法が使えるようになる。だけど教団の使う魔法は、魔法っていう体系から外れててサ、ちょっと僕にもよく分からないんだ」

「俺に強くなれって言ったのも、もしかして」

「んー、あいつらが使うのは僕にもよく分からなくてサ。帰るならあいつらの手を借りるしかないと思う」

(テロ組織の内部にしか送迎バスが走ってないのか…思ったよりハードな道のりだな、これは)

「そしてドラゴン君、キミが一番まずい。そこのセシル…殿は儀式を阻止するためにここに来た、それでいいのかな?」

「ああ、間違いじゃない。力及ばず、申し訳ない」

セシルは深々と頭を下げた。

「いや、いいよ。こちらこそ、助けてくれて有難うな」

セシルは頭を上げ、

「その心遣いに感謝する、勇者よ」

「あ~、そのかたっくるしい勇者呼びも辞めてくれると嬉しいな…城島 悠木だ。悠木って呼んでくれ」

「ユーキだな。分かった、しばらくの間、宜しく頼む」

2人のやりとりが終わるのを確認してから、ジャルタは続けた

「さて、ドラゴン君。キミは恐らく、次のモルドラコスだ」

場を、静寂が包んだ。

『つまり、どういう事だよ?』

「キミを放置すると、この世界が終わる可能性が高い」

ドラゴンは空中でけたけた笑いながら

『自分で言いたくないけど、俺みたいなチビ助でどうやって世界を終わらせるんだよ~』

「キミはそう思ってても、教団はそう考えてくれるかな?」

『ん~、どういう事だよ』

「本来、剣を引き抜く事で綺麗さっぱり、目覚めスッキリなモルドラコスがバッチリ覚醒して、ガッツリ世界を終わらせるハズだったんだよね。伝承ではそう伝えられてたからサ」

『俺が?世界を?』

悠木と小さなドラゴンは、真偽はさておき、この世界の大きな要因になっている事を突きつけられた。

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