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61 お人好しvs元婚約者

 


「殿下、明日は出掛けますので私のことはお気になさらず。」

 

 この城に住まわせてもらっているのだからさすがに無断で行くのは気が引ける。


 あまり会いたい気分ではなかったが殿下にそれだけは伝えなければならなかった。


 


「ニコラあの時のことだが……」


 殿下は何が言いにくそうな表情で言葉を止めた。



 聞きたくない……これ以上、殿下の口からアーレント家を滅亡を望むような言葉は。



「では、急いでいるので失礼します!」



 殿下の言葉をかき消すように言い放ち、殿下の顔を見ずに足早にその場をあとにした。




 これで本当に良かったのだろうか?もう少し何か違う方法があるのではないか?



 考えても無駄ね。いろいろと考えると殿下の事を信じられなくなってしまいそうだ。


 

「セーラ、場所は何処だったかしら?」


「ニコラ様宛にもう一通届いていましたよ。ユリウス様から。」


「え?」


 そう言われ受け取った手紙に目を通した。



 場所は有名な高級レストランか。

 彼処はトレーガー家が……嫌な予感がする。セーラを危険な目にはあわせたくないな。


「ありがとう。セーラ貴方は待っていてね。」


「嫌ですよ。ユリウス・トレーガーは危険な奴ですよ!」


 明らかにセーラの顔が曇った。私を心配してくれているのだから


「だからよ!これは命令よ。」


 初めてこんな事言った。でも、これ以上セーラを巻き込みたくないの。もう随分と迷惑掛けてしまったから。




「ニコラ様がそう言うならば。」


 セーラは不満そうなままそう言った。そんなセーラに申し訳ない気持ちにもなるが仕方がない。









 気持ちは落ち着かないまま、私はユリウス・トレーガーと会おうとしている。


 ここは例のレストランの前だ。


 無駄に豪華な造りの建物は美しさを通り過ぎ威圧感を伴った不気味さが漂っているようにも感じた。


 これは心の乱れからそう見えるのかもしれない。


 しかし、この建物こそユリウス・トレーガーそのものにも感じる。




「やぁ、ニコラ嬢。久しぶりだね。」




「えぇ。御機嫌よう。」


 本当に久しぶり……会いたくはなかったけれどね。


 相変わらずの胡散臭い笑顔と数多の御令嬢を虜にしてきたであろう甘いマスク。


 彼の全てが私の神経を逆なでするように感じとても気分が悪い。


「さぁ、お手をどうぞお嬢様?」


「……結構よ。妹と同じにしないで下さいね。」


 わざとらしい態度に思わずそんな言葉が口から零れる。一瞬驚いた顔をしたがすぐにいつもの顔を張り付けたユリウスは怒りもせずエスコートをしてきた。



「もう少し大人しい御令嬢だった記憶があるのだけどね?」

 


「そうですか。それより……」


 ユリウスを適当に流しレストランに入った。意外にも客が多く居た。これなら突然襲われることもないだろうし良かったと少し安心した。

 



「大丈夫だよ。こんなに人も居るのに何にもしないさ。」


 考えていることを読まれたか……やはり油断ならない人だな。


 安心はすぐに消え居心地の悪さだけが心に残った。





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