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57 お人好しと鬼嫁さん

 

「ニコラ様。手紙は届けておきましたよ。」


「ありがとう。セーラ、ごめんなさい。こんなことに巻き込んでしまって。」


 黒幕……ユリウス・トレーガーに手紙を届けてもらった。



「いえ、私はルーカス殿下の策に乗るつもりでした。しかし、ニコラ様が喜ばれるわけないですよね。」



「ごめんなさい。やはり、このままアーレント家に無実の罪がかかるのは嫌かな……。」



「いえ、私はニコラ様が自分の考えを言ってくださるようになって嬉しいのですよ。」



 そう言って微笑むセーラに少しだけ気持ちが落ち着いた。


 自分の考えか……。正直に言うと今、自分の気持ちが分からないんだ。



 家族を助けたいのか、見捨ててもいいと思っているのか。それとも自分が支えてきたアーレント家が他人に潰される事が嫌なのか。




 まぁ、そんな事はどうでもいい。何よりユリウスを止めなければならない。



 話し合いで済めばいいけど、そうもいかないよね。アーレント家に関わらないと約束してくれれば後は殿下達に任せてもいい。


 しかし、殿下達はアーレント家も巻き込んで捕まえたいようだ。何故そうしたいのかはよく分からないがきっと何か事情があるのだろう。


 それとも本当にそんな形で家族が不幸になる事を私が喜ぶと思っているのか……。


 どっちにしろ殿下達に頼ることは出来ないか。



 まぁ、ユリウスだって話せばわかるはず。アーレント家から手を引く……それだけでいい。


 実際に会った時は、悪い人には見えなかった。笑顔が偽物だとはすぐに分かったが社交界では当たり前の事だ。



 本当に密輸に関わっているのだろうか。彼を信じる訳では無いがそんな素振りあの時は無かった。しかし、今までの事から考えれば限りなくユリウスは黒。



 なんだかずっと部屋で考えていると気が滅入ってきそうだ。


 少しだけ外に出てみたい。


「ねぇ、セーラ。少し城の中を歩いてもいいかしら?」



「はい。お供致しますね。」


 セーラを伴って少しだけ城を歩くことにした。



「そういえば、美しい薔薇の庭があるのですよ。」


 暫く城を歩いているとセーラが思い出したように言った。


 薔薇ね…………見れば少しは気分転換になるかしらね。

 

「見てみたいわ。場所は知っているの?」


「はい。こちらですよ。」


 セーラについて行くと立派な薔薇の庭があった。この城の誰かが好きなのかしらね。よく手入れが行き届いている。どの薔薇も美しくさすが王宮の庭と言ったところか。



「とても綺麗ね。この庭を手入れしている方はきっと繊細な方なのでしょうね。」


「えぇ。私は繊細ですからねぇ。」


 思わず出た言葉に返したのはセーラではなかった。


 慌てて振り返るとそこに居たのは


「貴方は……もしかしてメイリア様でしょうか?」


 噂に聞くルーカス殿下の婚約者というメイリア様だった。長い黒髪に全てを見透かすような黒曜の瞳。蛇に睨まれた蛙になった気分ね。彼女の美しさが怖さを掻き立てる。



「そうよ。そういう貴方は噂のお姫様かしら?」


 彫刻の様に整った顔を悪戯に歪めながら彼女はからかうように私を見た。



「噂……?お姫様……?人違いだと思います。」

 

 噂になることもないし、第一私はお姫様ではない。

 

「あら?うちの馬鹿に散々迷惑をかけられたニコラさんかと思ったのだけれど違うみたいね。」



「あ……私かもしれません。」


 そう答えた私にメイリア様は楽しげに微笑んだ。


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