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55 お人好しと新生活

 

 私が照れている間に船は城のある街に着き今私の目の前には立派な城がそびえ立っている。


 何度か来たことはあったが荘厳な城の威圧感に思わず身震いした。


「大丈夫だよ〜。」


「はい。」


 殿下達は慣れているでしょうけど私は違いますから、何も大丈夫ではないですよ。



 ここで暮らす?全く想像つかないな……。



「この部屋、少し狭いかもしれないけど使ってよ。」


 黙ってついていった先にあった部屋は扉に綺麗な装飾が施されており殿下達が狭いというには大き過ぎる部屋だった。




「広いですね。」



「え?そうかな。そういえばニコラさんの部屋狭かったよね。」


 前に殿下達が来た時に私の部屋に入ったのか。その部屋を狭いと言うならば私の部屋は相当狭く感じたでしょね。




「では、また来る。ゆっくりしてくれ。」



 それだけ言うとカールハインツ殿下は去っていった。



「兄貴さ、本当は今日仕事しなきゃ大変なことになるのにニコラさんを迎えに行くと言って聞かなくてさ。」


 おどけた様子でルーカス殿下はそう言うが、悪いことをしてしまったようだ。



 しかし、それ以上に私を優先してくれたことがこんなに嬉しいなんて呆れるほど自分勝手……。


「殿下、そろそろメイリア様の所へ行ってはどうですか?」


 セーラが突然口を開くと意地悪そうな笑みを浮かべた。


 その顔を見てか、ルーカス殿下の顔がみるみるうちに青ざめていく。



「メイドちゃん。それは言ってはいけないよ。メイリア……怖い。」


 それだけ言い残すと青白い顔のままフラフラと何処かへ行ってしまった。



「セーラ……メイリアってルーカス殿下の婚約者の方よね?」



「はい。とても厳しい方ですよ。何度かお会いしましたよ。」


「そう……なのね。」


 あのルーカス殿下が怖がるってどんな方なんだろう?


 会ってみたいような……関わりたくないような。


「黒曜の瞳が美しくお二人が並ぶと絵になりますよ。」


 黒曜の瞳か……フィリーネもそうだった気がする。元気かな。




「一度ご挨拶しないとね。」


「はい。しかし、今日は疲れているでしょう。休んで下さい。」


 環境が変わっても、変わらないセーラに安心しながら私には勿体ないふかふかのベッドで体を休めた。





 不思議な夢を見た。


 目の前にいるのは誰……?


 その姿を私は知っている。振り向いた顔には嫌な笑顔が張り付いている。その隣にいるのは悲壮な表情のまま固まる猿顔……ルイーゼだ。


 ルイーゼが泣いている?だからなんだと言うの?



 私に向かってなにか叫んでいる。聞こえない……聞こえないよ!


 今更何を言っているの。助けを求めないでよ。もう私達は関係ないの。


『お願い!お姉様ユリウス様がおかしいの!アーレント家が……』



 見るに堪えないおぞましい顔で泣き叫ぶ。


 耳を塞いでも顔を逸らしても心に語り掛けてくるようにその言葉は止まない。



 嫌だ……もう忘れたいの。アーレント家の呪いを引き摺ったまま。



 

「嫌だ!」

 


 そう叫んで目が覚めたのは、目を閉じてからそう時間も経っていない刻限であった。



 セーラはいない?


 良かった。突然大きな声を出して飛び起きたら不審がられてしまう。


 ここはベッドか。手触りの良い布団が体に合わず身動ぎする。



 さっきの夢……なんだったんだろう。


 ルイーゼの隣にいたのはユリウス?


 そうだ。ユリウスが武器の密輸をアーレント家に押し付けようとしていたはずだ。このままでは大変なことになってしまう。止めに行かないと。



 今からでも遅くない。殿下に伝えに行こう。きっと協力してくれるはず。



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