46お人好しの覚悟(2)
昨日から思いがけない事が起こりすぎて疲れてしまった。仕事もせずに眠ってしまったようだ。
「今日はしっかりとベッドで休まれたのですね。」
「えぇ。昨日は疲れてしまって。それと、二日後は出掛けるわ。一人で行くから……」
「はい。分かりました。お気をつけ下さいね。」
何も聞かないセーラに心の中で感謝しつつ、いつもの様に仕事を始めた。
セーラはアーレント家が没落すると知っても私といてくれるのだろうか。
私の好きな紅茶を慣れた手つきで淹れるセーラをぼんやりと見つめていた。
「どうされました?」
私の視線に気付いたセーラは不思議そうにこちらを見た。
「ううん。いつも、ありがとうセーラ。」
「は、はい!私には勿体ないお言葉ですよ。」
今まで私に仕えてくれたセーラに伝えられる時にお礼を言っておきたかった。
アーレント家が没落する前にセーラには今よりもいい場所で働いて欲しいな。
本当は一緒にいて欲しいのかもしれないけれど、セーラの幸せを考えたらここに居るべきではない。
そう思い再び仕事に戻ることにした。
そうだ、今度殿下達がまた来ると言っていた。
ユリウスやニクラスの事を相談してみよう。パーティーの時の様子だと、不正を取り締まろうとしているように見えたし協力してくれるかもしれない。
ニクラスもユリウスもアーレント家に罪を擦り付けるために私に近づいたのね。
ユリウスが婚約者が変わっても何も言わなかったのはそういう事かもしれない。
ニクラスが私に近づいたのはルイーゼを上手く騙せなかった時の保険ってとこかしらね?まぁ、ルイーゼは操りやすいでしょうけど。
ルイーゼと結婚するまでは動かないだろうと踏んでるけれど、何があるかは分からない。用心しないと危険だ。
アーレント家の没落へ繋がる案件だというのに、カイと会う事が気になって集中して考えることができない。
深く考えるのは殿下達に話してからでもいいだろう。
カイは私が侯爵令嬢だと知ったら軽蔑するかもしれない。
でも、カイにも秘密があるのだから許してくれるだろうか?
そして、カイの秘密を私は受け入れられるのか。
不安なことは考えればキリがないくらい出てきてしまう。
早く約束の日にならないかな。
でも、聞きたくないような気もする。
矛盾した気持ちを抱えたまま私は、約束の日を迎えてしまった。