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45 お人好しの覚悟

 


 スイレンか……。


 美しい細工の施された髪留めが不気味さを増す。




 ユリウス様、いや、ユリウスはアーレント家に罪を押し付けるのもゲームの様に楽しんでいるようだ。



「ユリウス様からとは、ニコラ様にまだ気があるのでしょうか?」


 セーラは不思議そうに首を傾げる。


「妹と婚約している訳だし、挨拶代わりみたいなものじゃないかしら?」


「そうですね。」


 本当にそれだけの意味とは思えないけどね。



「ニコラ様、今日はもう遅いので夕食は置いておきますのでしっかりと休んで下さいね。」


 相変わらずセーラは心配性だ。




「分かったわよ。」


 軽く返事をして机に向かった。


 カイについて調べている途中だった。

 何か少しでも手掛かりがあればいいのだけど………。



 

  まだ手を付けていない残りの資料に目を通す事にした。




 ん?


 一番下に手紙らしきものが混ざっている。


 どうやら一度開けられたもののようだ。



 開けてみると、セーラ宛の手紙であることが分かった。これは恋人のクルトからね。



 覗き見みたいになっちゃったわね。焦って仕舞おうとした。




『ニクラス・バーナーとユリウス・トレーガーは裏で繋がっている。何か画策してアーレント家を陥れるつもりだ、セーラは早くアーレント家から離れた方がいい。』



 たまたま見えてしまった文面に並んでいた文字は衝撃的な物だった。



 これはセーラ宛よね。クルトはニクラス・バーナーの元に仕えている。その人からの情報となればフィリーネからの噂話とは訳が違う。


 これでユリウスは黒という事が分かった。それにニクラス様も関与していたなんて。



 私にはルイーゼを止める事ができなかった。このままではアーレント家の没落は決定的だ。


 セーラはこの事実を知ってどうするのだろうか?



 手紙を元通りにし資料の下に置いた。



 手紙……そういえば今の衝撃で忘れそうになったが、カイの手紙を見なくてはならない。



 何が書かれているのか…………。


 緊張で震える手で手紙を開いた。覚悟を決めて文面を見た。



『 ニーナへ

 君には話さなければならない事があるんだ。婚約の件も安心して欲しい。だが、真実を話したら驚くと思う。俺を受け入れられないならばそれでもいい。君に今まで秘密にしていた事を全て話す。いつもの海辺で待っている。』



 だいたいこんな感じの内容だ。


 真実……本当は自分が存在しないという事?


 カイが何かしらの秘密を話してくれるのならば私も真実を話すべきだ。



 よく見ると約束の日付は三日後になっている。


 カイは(ニーナ)が三日以内にあの店に来ることが分かっていたのかな?



 まぁ、それは私には分からないことだ。



 秘密があるのはカイだけではない。寧ろ私の方が庶民と偽っていたのだから受け入れて貰えないかもしれない。


 会う時はこの姿で、本物のニコラで会おう。もう誤魔化さない。偽りで塗り固めた私を愛してくれた。そんな彼を裏切ることになってしまう。しかし、心のどこかで受け入れてくれるかもしれないと……思ってしまう。一体どうなるのだろうか。


 


 三日後どうなるかなんてその日にならなければ分からない。


 どんな結果になるとしてもカイとニーナの恋は終わる。


 …………ただそれだけ。




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