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41 お人好しの熟思

 



 頭が真っ白になって何も考えられなくなった。


 どうしていいか分からず、手元の資料に目を通す事にした。





 どれくらい時間が経っただろうか、資料を半分見たがカイの存在は確かに何処にも無い。


 少しくらいあってもいいはずだ。


 ここまで何も無いと確かに存在しないと考えた方が自然だ。








 今思えばカイと私を繋ぐものは何一つ残っていない。




 ……………あ!



 そういえば、カイの忘れ物まだ私が持っている。




 何が入ってるか見ていないけれど、もしかしたら中を見ればカイのことが分かるかもしれない。



 今は手段なんて選んでいられない。



 人の物を勝手に開けるのは気が引けるがそうも言っていられない状況だ。


 罪悪感はあるが袋をゆっくりと開いた。





 中から出てきたのは、王家の紋章が刻まれた美しい宝石のついたブローチだった。




 カイの持ち物では無いよね。



 どう考えたってこれは王族の物だ。もし違うとしても下級貴族の手に渡る物とは思えない。


 しかし、メラニーさんはカイの忘れ物だと言った。


 メラニーさんの勘違いという事になるが、メラニーさんに限って無さそうな気もしてしまう。



 そろそろ意味が分からなくなってきた………。


 カイが存在しないという情報だけで頭は限界を迎えているというのに




 もう一度ブローチを見ると、緑色の宝石が神秘的な輝きを放っていた。



 この緑色…………まるでカールハインツ殿下の瞳の色みたい。



 無意識にそんな事を思っていた。



 そういえばカールハインツ殿下、この袋を見せた時動揺していたよね。


 カイの物だったらあんな反応はしないはずだ。



 まさかこれはカールハインツ殿下の物なのか?


 何故それをカイが持っていたのか分からない。


 実は王族と関係がある、もしくは盗んだ………いろいろと考えられることはあるがどれもいまひとつ納得できない。



 まさか、カイがカールハインツ殿下?



 そんな事あるわけないか。全然違うもの。




 でも、何故だかカールハインツ殿下といる時どうしてもすぐにカイの事を思い出してしまった。


 あの時は、大きくなり過ぎたカイへの気持ちがそうさせていたのだと思っていたけれど…………。


 もし彼がカールハインツ殿下だったとしたら、無意識にカイの気配を感じ取っていたのかもしれない。




 いやいや、さすがに無いよね。


 カールハインツ殿下が下級貴族の振りをする必要なんて無いはずだ。


 私と初めて出会った時もカイは下級貴族のカイだった。


 考えれば考えるほど分からなくなってしまう。



 あの店に行けばもう一度会えるかもしれない。




 私は何を根拠にそう思ったのか、気付いた時には夢中で街を目指していた。




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