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40 お人好しの焦燥(2)

 


 結局、妹を止めることも出来ず次の日を迎えることになってしまった。



 ユリウス様の事はもう少し調べないとならない。

 もし、無実だったら疑うのは失礼だが怪しい発言をしている以上は仕方がない事だ。



 ユリウス様の事は1回忘れよう。此処で何を考えたって状況は変わらない。


 



 何より今は、カイともう一度会うために彼の居場所を知りたい。


 カールハインツ殿下も恋人と話を進めている筈だから、私だけのんびりとしている訳にはいかない。




「セーラ。調べて欲しい事があるの。」

 

「どうされましたか?」

 

 セーラは紅茶の支度をしていた手を止めて言った。



「カイ、という下級貴族について調べて欲しいの。領地は街よりも北だと思うわ。」


「分かりました。ニコラ様はお疲れでしょう。今日は休んでいて下さい。」


 休む訳にはいかないかな。セーラに調べて貰っている間に仕事を片付けないと大変な事になってしまう。


 少しやらないだけで気付いたら机の上は仕事の山だ。


「ありがとう。もう少ししたら休むわ。」


「休まないのは知っていますから無理だけはなさらないように。」


 私が休む気が無いのを分かっているセーラはそう言うとそっと部屋を出ていった。








 セーラが居なくなり静かになった部屋で黙々と執務をしていると一枚の紙に目が止まった。

 


 夜会への招待?

 しかも、家族全員で来いだなんて嫌だな。

 夜会があるのはもう少し先だ。それまでにルイーゼと父に行ってもらうように説得しなければならない。


 主催者は、このグレーデン王国の宰相だ。こんなに規模の大きい夜会で失礼があってはいけない。


 今から憂鬱だ。


 カイは来るのかな……?

 もし、婚約させられそうな人と来ている所を見たら立ち直れる気がしない。


 前回のパーティーも来ていた訳だし無い話ではない。


  考えただけで疲れてきてしまった。


 少しだけ休憩しよう、そう思い机に突っ伏した。


 










「ニコラ様、起きて下さい。もう、寝るならベッドでしっかり休まないと体に悪いですよ!」



 あのまま寝てしまったようだ。


 机で寝てしまっまたせいで体が痛い。



「ごめんなさい。あ、カイの事は何か分かった?」


「それが、その様な人物は存在していませんでした。名前などは間違っていませんか?」




「…………え?」


 先程までの体の痛みを忘れてしまう様な衝撃を受けた。


「カイが存在しない………。どういう事?」



「ニコラ様、落ち着いて下さい。大丈夫ですよ!」


 セーラの言葉も殆ど耳に入らない。


「信じられない、だってカイは確かに居た。私と同じ時を過ごしていたのに……。」


 

 私が恋焦がれたカイは何処へ行ってしまったの?


 私の事を騙していたというの?


 カイの声も手の温かさも、笑いかけてくれたあの顔も全て鮮明に思い出せるというのに……。






「ニコラ様………」


「ごめんなさい、少しだけ一人にさせて。」


 悲しそうに私を見つめるセーラにいつもの様に笑顔でそう言う余裕も気力も無かった。



「分かりました。調べた資料だけは置いていきます。」


 セーラは紙の束を机に置くと静かに部屋を出ていった。







 

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