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4 お人好しと仕事

 

「ニコラ様、駄目です。先にお食事をとってください」


「あっ!」


 セーラはちょっと怒った顔をして私から資料を取り上げた。ここ最近、何回もやられている気がする。


 確かにこの量の仕事を先にやっていたら夕食を食べるのは早くても二時間後になってしまう。

 

「昨日だって、夜遅くまで仕事して机で寝てしまわれたではないですか! 寝たと思ったらベッドから抜け出して。自分のお体を大切にしてください」


 バレていたのね……。


 昨日は父が仕事を追加してきたせいでほとんど寝れていない。お腹も減ったし少しくらい休憩しようかと手を止めた。セーラが


 こんなに私を心配してくれるセーラがいるだけで幸せだ。この気持ちに偽りはない。


「分かったわ。先に食事をいただくわ。」


 私はそう言って食事に手を伸ばした。


 セーラは私の分だけ特別に作ってくれている。彼女は料理も得意で本当に頼れるメイドだ。


 大変だから父たちの好みに合わせたもので大丈夫とは言っているが私の好物ばかりを入れた特別メニューを部屋に届けてくれる。


「ありがとう。いつも、美味しいわ」

 

「私にはもったいないお言葉です。ニコラ様に召し上がっていただけることが幸せですから」


束の間の休息を終え、再び資料の山と向き合っているとドタバタと忙しない足音がきこえた。


「おいっ!まだ、仕事が終わっていないのか!?使えないな」


 本日二回目の非常識な来訪者だ。ノックもせずにいきなり入ってこられるのはあまりに無作法。それに足音もうるさい。


「すみません。思ったよりも多くて」


 できるだけ申し訳ないという気持ちを込めた声色で返事をする。終わらせても次から次に増えていくので、仕事の山は一向に終わりそうにない。


 父が押し付けるのが悪いのでは、と思うが彼は仕事が出来ないことくらい私にも分かる。


「俺は忙しいんだ、それくらいの仕事すぐに終わらせろ。明日の買い出しもしっかり行けよ」


 私の顔を見ずにそう吐き捨てるとさっさと父は出ていった。


 今日も香水の匂いがした。また、女の人といたのだろうか。お金は有限なのだけれど? 父にはそれが分からないようだ。言いたいことは沢山あるが今更どうしようもない。



 普通、買い出しを娘に押し付けるだろうか? メイドにやらせるような事を私にやらせるのは嫌がらせなのかもしれない。


買い出しは、半年くらい前から毎月行かされるようになった。何故か、私一人で行かされる。おそらく、慣れないことをさせて困らせようとしているのだろう。それとも、私が襲われでもすることを望んでいるのか。


 父は、私をいじめているつもりかもしれないが不本意にもそのおかげで私に楽しみができた。


私の楽しみ、それは月に一度だけ侯爵令嬢であることを忘れて街で過ごすことだ。こんなに自由に過ごしてはバレそうなものだけれど、家族はそこまで気づける程私を見てはいない。



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