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37 お人好しの疑念


 それにしてもユリウス様が密輸に関与している?


 短い間だが婚約関係にあった人だ。


 優しくて位も高く、顔も整っているという誰もが羨む公爵家の男で、突然私に婚約を申し込んできた。


 接点も無かったから驚いたが、公爵家からの申し出に気を良くした父が勝手に話を進めていた。



 その後ルイーゼが駄々をこねて、私からユリウス様の婚約者の座を奪い取ったのだ。


「ただの噂よ。気にしなくてもいいわ。貴方、婚約者奪われたんでしょう?」



 うわぁー。人の傷をナイフで抉るみたいだ。


 これは、フィリーネのただの興味本位の質問だろう。しかし、ユリウス様の噂については多少気になる。


 例え噂でも妹の婚約者、何かあってはアーレント家に被害が及ぶかもしれない。




「奪われた………世間から見ればそういうことになりますね。」



「普通気にするわよね、貴方なんでそんなに平気でいられるのかしら?」


 気にするって分かってるなら聞くなよ性悪か!と言いたいところだけどその気持ちを抑えた。


「特別な感情があった訳でもなかったので。」


 正直な気持ちを答えるとフィリーネは


 

「あら、そう意外とあっさりしているのね。そう言えばパーティーの時に貴方が言い寄られてたニクラスは覚えているかしら?」


 と、突然話を変えた。


「はい。覚えていますが、何かあったのですか?」


「パーティーの時に貴方が言ったじゃない。茶会に誘えばいいと。」


 言ったような気もする。あの時は考えが纏まらないまま話し始めたせいで何を言ったのか記憶が朧気だ。


「言ったかもしれません。」

 

「その後、私誘いましたの。それで来て下さったのですけど、縁のあるユリウスも一緒に来たのよ。」


 ルイーゼの婚約者のユリウス様とパーティーの時にいたニクラス・バーナーが知り合いだったのか。


 知らなかったな。


「ニクラス様とはどうだったのですか?」


「それが、ずっと怖い顔で二人で話していたのよ!その後用事が出来たとか言って早々に帰ってしまったのよ。私を無視した挙句、途中で帰るなんて私に恥をかかせたも同然よ。」



「茶会への誘いは辞めた方が良かったみたいですね。出過ぎたことを言ってしまったようで申し訳ございません。」


 ニクラス様はあんなに紅茶が好きと仰っていたのにおかしいな。


「貴方は悪くないわ。それにあんな男嫌いよ。だからその後会話を少し盗み聞いてやったのよ!」



 良かった……許して貰えた。


 盗み聞きってフィリーネらしいと言えばそうかもしれないけれど。



「馬車を待っている時にユリウスが『バレないようにしろよ、こっちはあの女利用して上手くやるから。』と話していたのよ。」




 根も葉もない噂かと思ったがどうやら噂ではなくこれは事実のようだ。



 ルイーゼの結婚は辞めた方が得策かもしれない。


 とても嫌な予感がする。このままでは取り返しのつかないことになってしまう、得体の知れない不安が私を襲った。


 ティーカップを掴んだ指が僅かに震えていた。


 大好きな紅茶も味の無い液体に感じ上手く喉を通らない。






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