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23 お人好しの婚約

 

 ──婚約を受け入れてもらえるだろうか?



 頭の中でその言葉がぐるぐると回る。


「いえ、私などが……………」


「ぜひ、私の娘ならいつでも! いやぁー、殿下に見初めて頂けるなんて私が教育した甲斐がありましたよ」


 私の言葉を父の調子のいい言葉が遮った。さっきまでの態度が嘘みたいに愉快そうに笑っている。


 殿下たちは笑顔を崩さないが呆れているのは感じ取れた。


「では、娘さんをお借りしますね」


 そう言って、カールハインツ殿下は私の手を取って外へ出た。


「このまま街にでも行こ〜よ」


 軽い口調でルーカス殿下が言う。


「いえ、私は帰ります。それにどういう事ですか先程の婚約とは」


 意味が分からない。なぜこうなったのかも、殿下達の思惑も。


「いいの? また、あの君のお父様に何か言われるんじゃないの?」


「え………? そうですが、それが帰らない理由にはなりませんよ」


 嫌なことを言われるから帰らない、なんてことが出来るわけが無い。


「よし。やっぱり行こう」


 ちょっと待ってください!


 お構い無しに行こうとするルーカス殿下に困惑しながら何とか声を張り上げた。


「無理です。殿下……どうしてもと言うのならば日を改めて頂けないでしょうか」


 私の言葉に二人は考えたような顔をしてから


「そうだね〜。今日、仕事サボってきちゃったしね。今度、おめかしして来てね〜」


「では、また連絡しよう」


 あっさりとそう言うと、私に手を振って颯爽と去っていった。


 本当に嵐のような人達だな。目的は分からないけれど、考えられるのは婚約者が必要で仮初の婚約者に私をしようとしている………。


 それか、アーレント家に何かしらの疑いが掛かっていて調べ切れないない部分を私から聞き出そうとしているのどちらか、またはその両方だろう。


 ならば、迎え撃つのみ。


 アーレント家の潔白を証明してみせる。


 そして、婚約者は何としてでも拒否する。


 そのためにはもう少し対策を練らなければならない。カールハインツ殿下と結婚なんて光栄な事だけれど私には身に余る、そして私にはカイがいるんだ。



 あと二週間でまた会える。けれど、殿下と婚約するかもしれないという中どんな顔をして会えばいいんだろう。


 とうとう来てしまったのねこの時が。きっとカイもいつかこうやって政略結婚させられるのよね。


 そろそろお別れしなきゃいけないってことなのかな。枯れていたと思った涙が静かに私の頬を濡らした。


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