19 お人好しとルーカス殿下(2)
「試す、とはどういうことでしょうか」
「そのままだよ。今度、兄上を連れてくからさ。おっと……そろそろ行かないと鬼のような兄上にサボっていることがバレてしまうね」
「…………連れて来るのは冗談ですよね」
ルーカス殿下は笑いながらそう言うが本気で言っているのか分からない。
「どうだろうね〜。じゃあ、またね。」
意味深な笑みを浮かべながらバルコニーから飛び降り下の部屋に入っていった。
「え……!」
なんだったんだろう。さっきまで夢を見てたのではないかと思うくらいルーカス殿下が去ったバルコニーは静かだ。
しかも、飛び降りなかった?
王家の人って凄いのか。うん。考えたら負けな気がする。さっき言っていたことも気にしないでおこう。結局、ルーカス殿下の目的も分からなかった。
「あれ? ニコラ様、さっき誰かと話していませんでしたか?」
「エルマ、どうでしょうね………」
ルーカス殿下と話してたなんて言えないけど、誰かと話していたのは見えていただろう。
「もうすぐパーティー終わりますよ?戻りましょう」
「えぇ。分かったわ」
待ちに待ったパーティーの終わり!
周りの御令嬢がパーティーの終了を悲しんでいる中、私だけが終了を喜んでいるかのように思えた。
「………………!」
今、カールハインツ殿下と目があった?
少し嬉しそうに見えるような気がする、いいことでもあったのか…?
まぁ、気のせいだろう。
「最後に殿下から一言頂戴致します」
司会者がそう言うと、会場の視線が一点に集中した。視線の先では、カールハインツ殿下がにこやかな笑みを浮かべながら話し始めていた。
先程の視線が気になり話が入ってこないが、婚約者を近いうちに決めるといった内容だ。
話を聞いた瞬間、令嬢たちの目の色が変わった。
これはまるで闘牛……………。
この争いには巻き込まれたくないわ。
「一年以内には決めるつもりだ。」
最後にそう言って殿下の言葉は終わった。これは熾烈な争いになりそうだなと他人事に考えているが、少し気になるのはルーカス殿下のあの言葉。
冗談だよね?それかアーレント家について何か気になる所があるか。
もし、アーレント家が疑われているなら最悪だ。その場合、潔白を証明しなければならない。 今のアーレント家にそれができるのか、違う……アーレント家ではない。私が何とかしなくてはならない。
どうすればいいんだろう。考えても分からない。この事は忘れよう。不安な気持ちのまま残りのパーティーの時間を過ごすことになってしまった。
私がルーカス殿下の言葉が本当だったと知るのは、二週間後のことである。