表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/71

17 お人好しの困惑

 

 なにか思惑があるのか………?


 笑顔の仮面を貼りつけたような顔の殿下からは何も読み取れない。


「私などが御一緒できませんわ」


 私の精一杯の拒否も、


「安心して私に任せて」


 という殿下の言葉に掻き消された。さすが、殿下とでも言えばいいのか。



 相当練習しているのか、元々の才能かは分からないが噂どおり優しくリードして下さり私は身を任せているだけに近かった。


 あっという間に時間は過ぎ音楽が終わっていた。


「ありがとうございました……夢のような時間でしたわ」


 誰もが羨むシチュエーション。 私には悪夢でしかないのだけど。


「こちらこそ楽しかったよ。また、機会があればぜひ」


 キラキラの笑顔でそう言って私を見つめた後、去っていった。


 殿下が私に近づくのは何か理由があるはず。もしかしてアーレント家が邪魔で消そうとしてるとか?


 考えただけで怖い。でも、王家に迷惑はかけてない、むしろ貢献しているはず。


「ニコラ様! さすがですわ。やはりその美貌、殿下に見初められたのでしょう」

 

 私が深刻に考えていることなど知らないエルマは興奮気味に言うと満面の笑みで私の手を掴んだ。


「そんなことないと思うわ。殿下の気まぐれよ」


 もし、そうであっても困る。しかし、そうは見えなかった。あれは、何か裏があるような雰囲気だった。それにしても、カイがこのパーティーにいなくて良かった。たとえ彼が知っているのはニーナであっても、私が違う人と踊っている所、まして殿下となんて見られたくない。


 会場の雰囲気に疲れ、エルマが踊り出したのを確認してバルコニーへ休憩に行った。


 よし、誰もいない。パーティーが終わりに近づくまで少しの間ここにいよう。とりあえず殿下の思惑は分からなかったがもう関わることも無いし大丈夫だろう。


 アーレント家の仕事は私がほとんどやっているから不正などは無いはずだ。


 最近、武器の密輸が問題になっているようだけど…………きっとどこかの貴族が関与していることは間違いない。もしかして、その犯人を探しているとか? 疑われるような事はしてないしそれは無いか。


「随分難しい顔をされてますね、美しい顔が台無しになってしまいますよ。ニコラ・アーレント嬢?」


 慌てて声の方を振り向くとそこにはカールハインツ殿下に似た、そして昨日街で見た………

 

「ルーカス殿下!? どうしてこちらに……今日は御出席されない予定のはずではありませんの?」


 ルーカス殿下が立っていた。今日は来られないから代わりにカールハインツ殿下が出席したのではなかったの?


「う〜ん。仕事サボって少し様子を見に来たんだよ〜」


 なんと言うか、緩い。喋り方といい、ふわふわの髪といい緩い雰囲気だ。自由そうな人、という印象だ。そして、なによりご兄弟揃って端正な顔立ちだ。


「そ、そうなのですか」


「ねぇ、君さニコラさんでしょ〜?」


 はじめの気取った態度が嘘みたいにのんびりとした口調でそう言うルーカス殿下に流されそうになる。


「そうです。しかし、なぜ私の名前をご存知だったのですか」


 カールハインツ殿下もルーカス殿下も暇なのか?


 ほとんど社交界にも顔を出さない私の事を知っていて話し掛けるなんて。


「それは、兄貴…………じゃなくて兄上と一緒。ニコラさんって有名なんだよ」



 戸惑う私に、いたずらっぽくルーカス殿下は笑った。


ブックマークや評価、誤字報告等ありがとうございます。更新の励みになっております(*_ _)♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ