表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/71

15 お人好し令嬢vs悪役令嬢(2)

 

 エルマを助けなくちゃっ!


「フィリーネ様、失礼ですがエルマに非はないかと思います」


 考えが纏まらないまま話しかけてしまった。フィリーネ様は気が短い。とりあえず、私に気を逸らせば、エルマを虐めようとした事は忘れて私へ嫌がらせしようとするだろう。



「あら? 貴女はニコラ・アーレントさんでしたっけ?」


 私の事、知ってる…………?


「存じ上げていただいていたとは、大変光栄ですわ」

 

「お人好しで有名ですからね。それと、先程ニクラス様に言い寄っていましたよね?」


 フィリーネ様。いや、フィリーネは嫌味っぽく言うと、私に詰め寄った。


 あー。分かった。


 私をあんなに睨んでいたのは、エルマに突っかかったのはニクラス様を慕っているからだ。きっと、フィリーネは素直な人じゃない。だから、こんな事をするんだ。


「フィリーネ様、ニクラス様の事をお慕いしているのですね?」


 フィリーネにだけ聞こえる声でそう言った。


 フィリーネは平常心を保とうとしているようだけど、分かりやすく頬が紅潮しているのが分かる。


「も、もしそうだとしたらなんだって言うのかしら!」


 強がった声でフィリーネが言った。


「ニクラス様は紅茶がお好きらしいですよ。今度、お茶会に誘ってみてはいかがですか?」


「は? あ、貴方ニクラス様を慕っているのでは?私がそんな事したら困るのは貴方ですわよ!」


 私の言葉が意外だったのか拍子抜けした顔でそう言うフィリーネに先程までの威圧感はなかった。


 フィリーネだってただの恋する乙女だ。


 少し、度が過ぎるみたいだけどね………。


 それにしても、私がニクラス様を?


 冗談きついなぁ。私には大切な人がいるというのに。


「彼とはただ話していただけですよ。フィリーネ様の想いが届くよう願っていますわ。エルマも彼の事を慕っているわけではありません。彼女には仲の良い婚約者がいますのよ」


「そ、そうなのね。勘違いしていたみたいだわ! では、失礼致しますわ!」


 勢いよくそう言ってフィリーネは颯爽と去っていった。パワフルな方だ。


「エルマ、大丈夫? 怪我はないようね」


 まだ、腰が抜けているのか床に座り込んでしまっているエルマに手を伸ばした。


「す、すみません。私のせいでニコラ様にまで迷惑をかけてしまい……どんな罰でも受けます」


 エルマは私の手を掴んでそう言った。


「何を言っているのよ。貴方が無事ならそれが何よりよ。エルマに非なんて無いわ。元気を出して」


「ニコラ様〜! 貴方、女神ですか。そうなんですね?」


 興奮したようにエルマは言うと私の手を強く握った。


「女神なんかじゃないわよ」


 …………女神か、そんな人がいるなら会ってみたいわ。そう思いながら私は曖昧に微笑んだ。



「カールハインツ殿下が御到着だ!」


 会場に声が響く。


「本当だわぁ、素敵ですわ」


「私もお近づきに………」


「あぁ、婚約者はまだお決めになっていないのかしら」


 その声を、皮切りに貴族たち………主に御令嬢達が色めき始めた。とうとう、今日の主役と言っても過言ではないカールハインツ殿下がパーティーに参加するようだ。



 彼の隣を争う令嬢たちのバトルがここに始まる──的な感じかしらね。関わらないように壁の花にでもなっていようかしら。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ