14 お人好しvs悪役令嬢 (1)
「では、私はこれで失礼致します」
何を話して良いか分からず去ろうとした私に
「待ってください。少し話しませんか?」
とニクラス様が笑顔で言った。そう言われたら断れない。
「ええ。もちろんですわ。
それから、ニクラス様と少しの間お話したがニクラス様は紅茶がお好きらしく意外にも話は盛り上がった。
堅い人かと思ったが案外、話しやすい人で良かったとは思うがニクラス様が端正な顔立ちであるせいか周りの令嬢たちの視線が痛い。
特に感じるのはフィリーネ様の視線だ。
それに、なんだかニクラス様にジロジロ見られている気がして少し気分が悪い。そろそろ退散させてもらおう。しかし、話を切りあげるタイミングがなくて困っていると
「お話中失礼致します。ニコラ様、先程あちらのお菓子が気になると仰っていましたよね。一緒に行きませんか?」
エルマが間に入ってくれた。
「エルマ。ありがとう。ニクラス様よろしいでしょうか?」
「大丈夫ですよ。本当にお菓子が好きなんですね。可愛らしい」
カイ以外の男性にそんなことを言われても全く嬉しくない。笑顔が引き攣りそうなのを何とか抑えて軽く挨拶し、エルマとその場を後にした。
「ありがとう。エルマ助かったわ」
「いえ、お話の邪魔をしてしまい申し訳ありません」
エルマは全く悪びれず悪どい笑みを浮かべて言った。
「私が困っていたの分かってたんでしょう」
「そうですね。あの方、ニコラ様の事にやにやしながら見ていたので私許せなかったんですよ。次、ジロジロと見たら足でも踏んでやりますよ!」
「あ、ありがとう?」
熱く語るエルマが少し怖いが、とりあえずよかった。安心したせいか、疲れが出てしまったようだ。
「さて、気を取り直してお菓子を取りに行きましょう!」
「えぇ。あちらにあるみたいですよ。とってきますね」
そう言ってエルマは先に行ってしまった。私もその後を追おうと足を進める。
「きゃっ!」
エルマにフィリーネ様がぶつかった。いや、あれはわざとぶつかったんだ。
「何よ、貴方私にぶつかっておいてすぐ謝りもしないの?」
フィリーネ様は、転んだエルマを見下ろして嘲るようにそう言った。
「そ、それは……」
エルマが怯えているのか声が震えている。
「それで謝ったつもりかしら? 跪きなさい!」
周りが注目している中、フィリーネ様は気にした様子もなくエルマを鋭い目で睨みつける。
エルマを助けないと……でも、私はどうしたら彼女を助けられるの?