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13 お人好しとパーティー

 


「ニコラ様! 今日は一層お美しいですよ」


 セーラがうっとりとした表情でそう言う。


「あなたの化粧の腕のおかげね」


 鏡に映る私は美しいドレスに包まれ、普段はほとんどしない化粧もしっかり施されている。


「ニコラ様行ってらっしゃいませ。どうかお気をつけて」


「えぇ。行ってくるわ」


 馬車が迎えに来ている。さすがアーレント家無駄に豪華な馬車だ。腹を括って馬車に乗り込んだが気分は悪い。


「会場までお願い致しますわ」


 それだけ言って目を閉じた。昨日あまり寝ていないせいで限界だ。城まではかなりの距離がある。少し眠っても大丈夫だろう。



 しばらくして、軽い衝撃に目を覚ます。


 もう着いたのか。いや、寝ていたから気づかなかったけれど時間は相当経っている。


「着きましたよ」


 愛想の無い御者がそう言った。


「ありがとうございます」


 お礼を言って馬車を降りた。豪華絢爛なパーティー会場である城が見えた。目が眩むようなキラキラしたドレスに包まれた貴族たちが入っていく。


「ニコラ様!お久しぶりですわ。お会いしたかったのですよ」


「あら、エルマ。お久しぶりですね。お変わりありませんか?」


 城の前で立ち止まっていた私に話しかけてくれたのは、以前に知り合い仲良くしてくださっている伯爵令嬢のエルマだ。


 エルマはきどらない性格で話しやすい。


「えぇ。パーティー会場迄御一緒してもよろしいでしょうか」


「もちろんですわ。ぜひ、お願いしたいくらいだわ」


 エルマの嬉しい誘いに乗り、私たちは一緒にパーティー会場へ向かった。今日のパーティーはパートナーを伴わなくても良いから良かったけれど


「今回は、随分と人数が多いわね」


 パーティー会場に入るとあまりの人数の多さに圧倒された。思っていたよりも多い。これは疲れそうね。


「たしか、ルーカス殿下ではなくカールハインツ殿下がご出席されることになったとかで皆様気合が入っていますわ」


 エルマがにこやかにそう言う。


 え、カールハインツ殿下?


 それは聞きたくなかった。道理で闘争心が滲み出ている御令嬢様たちが多いわけだ…。


「カールハインツ殿下は人気ですものね」


 と苦笑いで返すしかなかった。エルマも殿下の隣を狙っているのかしら?


「そうですね。私には縁のないお方ですけれどもね。ニコラ様ほどお美しければ求婚でもされてしまうのではないですか?」


 まるで、私には関係ないという様子で笑う彼女に少し安心した。本心かは分からないけれど。殿下を狙う女性と一緒にいるのは気を遣わなければならないので大変だ。


「私とも縁のない人よ。それより、美味しそうなお菓子があるわ」


 笑顔でエルマにそう言って会場のお菓子をつまんだ。


 実は大のお菓子好きの私にとってダンスや殿下よりもよっぽど豪華なお菓子の方が魅了的だ。


「お菓子好きは相変わらずなんですね」


 と言って同じようにクッキーをつまむエルマが突然青い顔をした。


「どうしたの? 大丈夫?」


 何が起きたのか分からずエルマに声をかける。


「フィリーネ様が来ました。さっき入口で怒鳴り散らしていましたわ」


 私にだけ聴こえる声でエルマがそう言った。

 

「フィリーネ様ね………大丈夫よ、エルマ。」


 フィリーネ様は、わがまま令嬢として有名で気に入らない人をいじめているらしい。エルマは前に嫌がらせを受けたことがあるらしい。


 こんなに怯えて………相当嫌な思いをしたんだろう。


 私が守ってあげなくては、エルマは気の弱い部分があるから標的にされかねない。



「もしかして、アーレント侯爵令嬢では?」


 私がフィリーネ様に目を光らせていると、どこかで見たことあるような男性に声を掛けられた。


 誰だろう? 知っているような知らないような、あまりパーティーなどに出席しないせいで顔と名前が一致しない方もいる。


「えぇ。そうですが……」


 名前を聞いてもいいのか微妙で曖昧に返す。


「あぁ、これは失礼。私は、ニクラス・バーナーと申します。」


 バーナー家と言えば有力な侯爵家として有名だ。


「いえ、こちらこそ失礼致しました。改めてニコラ・アーレントと申します。どうぞお見知り置きを」


 とにこやかに挨拶をした。バーナー家の嫡男が一体私に何の用があるのだろうか。



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