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第8話

ブクマ、評価本当にありがとうございます……!





俺は、窓から見える、白羽の姿に目が釘付けになった。


あまりにも扇情的であるが、同時に清楚な、ルームウェア。


真っ白な、素肌を首元で晒している。


深まる闇も相まって、朧げな、その姿。




俺は、白羽への思いーー


それは、彼女に拒絶された小学5年生の時に、捨て去ったはずだったのだがーー


俺の中で、もう、止まらない。




思えば、ずっとずっと彼女のことが、好きだった……


興味のある女の子の幼馴染『だった』、白羽彩子としてじゃない。


ずっと一緒にいたい幼馴染『である』、1人の女性、白羽彩子を……俺は好きだ。


白羽が俺のことを好きだから、俺は彼女を好きになったわけじゃない。


詭弁なのかもしれないけど、こんなに可愛くて、綺麗で、何をするにも、自分に構ってくる、そんな幼馴染をーー


好きにならないほうがおかしいって。



ちょっと、俺を毛嫌いしているように見えたことも、実は違った。


ひとりで、ずっと戦ってきたんだ……。


男として、ちょっと守ってあげたい、庇護欲も掻き立てられた。



「……白羽……さっきは……ごめん」


「……何のこと?」



俺は、声にして、ちゃんと伝える。



「俺は……俺は……白羽のことが……好きだ……!」




「……やっと言ってくれた」


「ああ、麗亜と話したんだ……お前の俺への思いも、いろいろ」


「ふふっ、あの達也くんが、自分で気付くわけないじゃん」



俺は、感極まって何も言えない。


今すぐにでも、彼女の抱え込んできたもの、一つ一つ解きほぐしていきたい。



「……なあ、白羽はどうして俺を避けていきたんだ……?」


「理由なんてないよ」


「そっか……こんな風に話すのって、小学校以来か?」


「うん」


「なあ、俺と友達からでもいい。もう一回……」


でも、俺の言葉は遮られた。


彼女は少し俯き、俺をまっすぐ見据えて言った。


「私、諦めてるんだ」


「……えっ?」



あ、諦めてるって……どういうこと……?



「だって、達也くんには、私より先に、好きになった女の子がいるんだもん……達也くんは、絶対、私と付き合えないから」


白羽は、両手を後ろに回し、俺と反対の方向を向き、部屋の天井を眺めている。



「白羽……」


ち、違うんだ……


細川に脅されて、仕方なく、だ。


俺は、細川なんか好きでも嫌いでもない。



「彼女さん……いや、細川さんと恋人同士なんだったら、私なんかほっといて……うっ……うう……ダメだよね……泣いちゃ……」


横顔が、どうしようもなく、儚い。


白羽は、人差し指で、涙を拭う。


俺よりも、一回りも二回りも小さい白羽が、より小さく見えた。





「違う……」


俺は、いっぱいに溜まった、窓枠のゴミを、見る。


……くそ!……ああ、もう。


細川の手前、本当のことが言えない。


なんだよ……あんな動画がなんだっていうんだよ……親が理事長だからどうしたっていうんだよ……!


愛人って、一体なんなんだよ……!



「達也くん、お願いがあるの。明日からも、今までの学校での接し方にしてね……私といきなり話したりしたら、ほら、周りの人から不審がられるから。それに、細川さんと関係が拗れたりしたらいけないから……」



「お、俺は……俺は白羽が好きなんだ……分かってくれよ?」



ダメだ……俺が、逆に白羽に勘違いされてしまう。


白羽も細川も好きっていうことになるじゃんか……。


俺は、二股かけようって最低な男じゃないんだ……!



「達也くんって、どうしようもないくらい優しいんだから。私のことは、ほっといてくれたらい……」





突然、白羽の声が不自然に途絶えた。


俺からは、白羽の姿が見えない。


白羽の部屋の、奥の学習机が見える。


た、倒れたたのか……?



「おいっ、白羽!ど、どうしたんだ」



白羽から返事はない。



「だ、大丈夫か!……い、今すぐ行くからな」



俺は何振り構わず、部屋を飛び出し、階段を駆け下りた。


リビングで、ジュースを飲んでいる麗亜は、俺の足音に驚いたようだ。


「麗亜!白羽が、白羽が倒れた」


「ど、どうしたの?お兄ちゃん」


「ちょっと白羽のとこ行ってくる!」


「ま、待ってよ……」



なんか言ったような気がしたが、俺はそのまま道路に出た。


白羽の家の門扉を開けるものの、俺は立ち止まってしまった。


インターホンを鳴らしても、もちろん反応はない。



「玄関は閉まってるな……どうしよう!……さすがに二階って登れないよな……」


一回試しに玄関のドアを引いたところーー


「……あっ、開いた」



なんで、ドアの鍵が閉められていなかったのかは、気になるところだが、今はそんなことどうでもいい。


一応、念のため、俺は鍵を閉め、靴を脱いで、二階へと駆け上がった。


そして、階段の目の前にある白羽の部屋を勢いよく開けた。



やっぱり、白羽は床に倒れていた。


「白羽!大丈夫か。意識はあるのか?」


「……う……た……達也くん?……だ、大丈夫だから」


俺は、火照った額に手をかざす。


「お前、ウソつけ……息も荒いし、熱あるじゃんか!」


「い、いいから……ちょっと寝たら、明日には治ってるから」



これまで、白羽は、こんなにも不安な日々を送っていたのか……。


今までも、学校休んでいた時もあったけど……一人でいたのか……。


隣に住んでいた、俺は、己の浅はかさを悔やむ。


1人っきりなのか……?


「お母さんはどうした、いつ帰ってくるんだ?」


「……か……帰ってこない……ずっと、遠くに働きにいってる」



そんなこと、全然言ってなかったじゃんか……!


ダメだ……ちょっと俺の不甲斐なさが心にくる。



「ご、ごめん、体がしんどいのに、喋らせて。体、持ち上げてやるから、ベッドで寝ろよ?」



俺は、白羽を背中と両脚を両手で抱えて、ベッドに乗せた。


「なにか温かい物、作ってやるから」




階段を降りていき、キッチンでお粥を作る。


リビング、キッチンを見渡す限り、生活に精一杯のようで……


少し溜まった洗い物、捨てられていないゴミ。


埃っぽいフローリング。


リビングのソファーには、脱ぎ散らかされた洋服。


し、下着は……ナイヨ?



「よし、お湯でも沸かすか」


憚られるものの、冷蔵庫の中身を確認して、冷凍されたご飯を取り出した。


これは食べれるのかな……?


引き出しから、スプーンを取り出した。


そして、なぜあるのかわからない、スポーツ飲料の粉末を白湯で溶かす。


賞味期限は……あと2週間か……危ない。


冷蔵庫を閉じ、コンロのガスを止め、出来上がったおかゆを、白羽に持っていく。




階段を上がって、白羽の部屋に入ると、白羽は少し体を起こしていた。


そして、彼女はベッド脇に置いてあった、一枚の写真を手にとって見ていた。


「ち、違うから、落ちてきたから拾っただけ……」


彼女は、そういうけどーー違うだろ?


そこには、俺の家の前で撮った、俺と彼女のツーショットが写っていた。


…………何も言えない。ずっと俺のことを想ってくれてたのかよ……。


返事の代わりに、ブランケットを白羽に掛けてあげた。


「おかゆ、食べさせてやるから、ほら、あーんってして」


「どうして……ここまで……してくれるの……?」


「当たり前だろ……幼馴染が困ってたら、助けるのは当たり前だって」


「……ありがと」



一口ずつ、スプーンでおかゆを食べさせる。


こうして、彼女と一緒にいてーー


あまりにも自然で、時間が過ぎるのが惜しいって思うのは、何故だろう。


ちょっと焦点が合っていない、彼女の瞳を俺は覗き込んで、食べるペースを落とした。



おかゆを全部食べ終わり、俺が食器を片付けに一階に戻ろうとした時ーー



彼女は、とんでもないことを言ってきた。


「一緒に住んでくれない……もう、私……私ただ1人なのは少しつらくて」



い、一緒に住む!?


思いつめた顔したから、一瞬ヒヤリとしたけど……


ど、同居って、大丈夫なのか……?


俺は無論、オーケーなんだが。


「お前、いいのか?仮にも相手は、男子高校生だぞ……?」




「ど……どこまで言わせるのかしら……達也くんだから……いいの」






その後のことは記憶が確かではない。


どこからか、麗亜がやってきて、騒いでいたが、最終的に、俺の家に帰っていった。


そのまま、俺は、白羽に添い寝をするように寝落ちした。












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