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第7話

ブクマに評価までしていただき、ありがとうございます。





近くの公園、ここには普段、滅多に来ない。


白羽彩子と、思わぬところで、出会った俺は、声を絞り出した。


「……い、いったい、どうしたんだ……?」



「…………た、達也……神宮寺くんは……ほ、細川さんと付き合ってるの……?」


「ああ。そうだな」


「細川さんのこと……好きなの?」


「恋人なんだから、当たり前だろ」


愛人なんて、言えねーに決まってんだろ。


白羽が、細川から俺を試すようにでも言われてたら、どうすんだよ。


「…………そ、そうなんだね」


「……」


「ご、ごめんなさい、コンビニであんな態度取って。じゃあ」


「お、おい、白羽。ちょっと聞いていいか?」


白羽は、ゆっくり、動きを止めた。


いつもは、無視するくせに。


「…………な、なに?」


「麗亜、見なかったか?」


張り詰めていた表情は、いきなり柔らいで、白羽は夜空を見上げた。


「…………アハハ…………私って馬鹿みたい……あ、ごめん。独り言だから……麗亜ちゃんね、さっき、家の前で見たよ」


「それ、ホントか?」


「うん、じゃあね」


白羽は、走り去る。


何だったんだ……よ一体。


まあ、麗亜の目撃情報を持っていることが、怪しいんだが……?






俺が公園から帰ると、家の前で、麗亜がドアに、もたれ掛かっていた。


「お前……ほんとに心配したぞ……どこ行ってたんだよ」


「……お兄ちゃん、ごめん」


麗亜に謝られると、俺は何も言えない。


俺も、甘いな……。


「ほら、家入って、ご飯でも食べるぞ」


家の鍵を開け、靴を脱いで、玄関の電気をつける。


リビングの明かりもつけ、キッチンで手を洗い、買い込んである冷凍食品をチンする。


5分ほどで、レンジから取り出して皿に移し替えた。


その間、食卓には、スマホをいじる麗亜。


こんだけスマホをほったらかしていたら、通知も溜まっているか。


「ようし。できたぞ……と、あついあつい。いただきます」


「……いただきます」


まあ、元気がないのも仕方ないか。


「……ねえ、私を探している間、何かあった?」


「ん、特に何もなかったぞ……あ、公園で白羽に会った」


俺は、スプーンを空中に止めている。


「それで、何て言われたの?」


「いや、お前、細川と付き合ってんのかって」


「……それで?」


「ああ、付き合ってる、って言ったぜ。そしたら、そうですかって。あと、細川のこと、好きなのかって聞いてきたから、ああ、好きさ、って言った」


「……ねえ、馬鹿って言ったのは悪かったけど、もう一回くらい言ってもいい……?」


「あ?お前、小声で何ブツブツ言ってるんだ、はやく食べろよ。冷凍は冷めるの早いぞ」


「……もうっ!何でここまできて、わかんないのよ!」


「ど、どういうことだよ」


「兄ちゃんのことがーー好きなの!」




俺は、全く動けない。


白羽彩子が俺のことが好き。


……はっ?


最近のことだけでも、話しかけても、無視されるわ、覗かれるわ、コンビニで、つっけんどんな態度されるわ……。


中学の頃なんか、顔見て逃げられたんだけど……これ以外に何も接点なかったけどな……?




「……本当に白羽は俺のことが好きなのか?」


「だって、生まれてから、お兄ちゃんの側にいるのって、ずっと彩子姉ちゃんだったよ……?お兄ちゃんの横にいるときは、すっごい笑顔になっているんだよ?ポーッとお兄ちゃんの顔見つめていたんだよ?」


「…………」


「多分、コンビニの袋から、そんなところだって思ったけど……彩子姉ちゃん、コンビニのバイトしてたんじゃない?」


「……そうだ」


「レジかなんかでバッタリ出くわしたんじゃない……?で、絶対お兄ちゃん思ったはず。何で彩子姉ちゃんが、バイトなんかしてるんだって」


おい、どうしてそこまでわかる!?


思いっきり図星なんだが……


「……全部、合ってる。麗亜の言う通りだ」


麗亜は、スマホを、触りながら、椅子を半回転させ、白羽家の方を見た。


「白羽さんの家、お兄ちゃんも知っての通り、白羽ホールディングスの分家だよね」


「うん」


「お父さん、お亡くなりになったの……知ってた?」


「ああ、小学5年生くらいだったな」


「白羽さんの家は本家から、切り捨てられて、生活に困ってしまったの……家に残されたのは、お母さんと彩子姉ちゃん」


「そ、そうだったのか……お前はなんで知ってるんだ?」


「いや、私も知らなかった。つい最近まで」


「……いや、でも、なんで俺たちにそんなことを知られたくないんだ?」


「さあ。分かんない……でも、ひとつだけ言えるのはーー」


「のは……?」


「幼馴染だからこそ、知られたくなかったんじゃない?家が大変なこととか……お兄ちゃんが、好きなことも」


「……それでも、別に、俺なんかに気を遣う必要なんて、ないだろう」


「あのね。お兄ちゃん、勉強しかできなくて世間のことまったく知らない非常識な人だから、教えてあげるとね……神宮寺家は裕福な方なの」


「……はあ?流石にそれはない」


俺は、まったく何もかも分からない。


そんな状況なら、白羽も隣の家くらい頼ってくれよ……あ、でもいろいろ事情があるか……。


「もう、いろいろあるの!お風呂、入ってくるから」


麗亜はそのまま立ち去った。


今日もまた麗亜の残した食器を片付ける。


キッチンで洗い物をしながら俺は、深いため息をついた。


麗亜が上がった後、すぐに俺は風呂に入った。


もう夜もそんなに寒くない。気分を変えようと、自分の部屋の窓を、開けた。



目に映るのは、真っ暗な白羽家。


生い茂る庭。


雨戸の閉まった、白羽の部屋。



「今日、改めて見ると、そうだったのか……」


どうせ、そんな姿を見られたくないから、俺とろくに関わろうとしなかったんだな。


俺が部屋の窓を閉めようとした、その時ーー



ずっと開かなかった雨戸が開いて、窓は開けられ、カーテンまで開かれてーー



白いレースの寝間着に身を包んだ、白羽彩子が現れた。





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