第32話
数日して、やっと……夫が集中治療室から、出てきた。
「彩子、心配かけたな」
「……あなた…………もう」
助かって…………助かってよかった…………。
「彩子の言いたいこともよくわかる。不安にさせて悪かった」
「……それだけ?」
「どうした」
「こんなこと、2度とやめてよ…………仕事頑張っている姿も好きだけど……一番好きなのは、私の横でいるあなただから」
「…………すまなかったな」
「でもね、元気になったんだからいいの。ほら、みんな見舞いに来てくれてるから」
「無事で良かったな……神宮寺。これでも食えよ」
「ありがとな……」
「もう、神宮寺くんってなんか抜けてるよね、そう思わない?圭介」
「……お前、かわいそうにな。妹さん、見舞いに来なかったぞ」
麗亜のやつめ……助かったらいいものの、死んでたらどうするつもりだったんだよ!
昔っから俺を邪険に扱いやがって。
「そういえば、あなた。麗亜ちゃん、来てないわね」
「どうせ麗亜のことだから、俺なんか放ったらかしだろ」
「今なんて言ったのかしら……?」
「れ、麗亜…………お前、いつ来たんだよ…………」
「ずっと後ろにいました。すいません。帰国して今着いたところなんです」
「あなた、麗亜ちゃん、雪で急に来られないようになって大変だったのよ」
「…………ありがとう。心配かけたな」
「そうよ!このバカ兄はいつまでも人の世話になるんだから。どれほど今回のことで彩子姉さんに迷惑かけたと思ってんの!全然反省してないじゃん!仕事仕事仕事仕事仕事って…………家庭のこと放ったらかしにしてたらね、離婚されるよ!」
「わかったよ…………皆、ごめんな」
「ちょっと、こんな退院だからさ、暗い雰囲気なんかならないでさ、どこか、食べに行ったりさ、遊びに行こうぜ!」
「そうよ。圭介さすが!だって、彩子さん、何も食べてないでしょ。麗亜ちゃんにも久しぶりに会えたしね」
俺は、幸せものだよ…………
こんな綺麗な奥さんがいて、俺のこと心配してくれる友達がいて、なんだかんだで兄妹としてさ、駆けつけてきてくれる妹がいて…………
「みんな。これからもよろしく。奮発して、ちょっといいところ、行っちゃうか!」
「お、太っ腹達也!」
「お前、奢られる気満々だな」
「彩子さん、大変だったね」
「ううん。何もなかったからいいの。元気そうな姿見たら……ダメだ。涙出てきちゃう」
「わかるよ、その涙。だって、澄んでるもんね」
「なにカッコいい言い方してんのよ」
「いや、色々あったけど、幸せだなって、彩子。立派な旦那じゃない」
「ちょっと……病み上がりで飲みすぎじゃない?達也」
「テンションあげなきゃ!もう一杯!お、圭介もいくか?」
「調子に乗るのもいい加減にしなさい……!」
「…………す、すいません」
これまでも、これからも、いっぱい迷惑かけてきたし、かけるかもしれないけどーー
波風立てんのも、許してくれよ、彩子。
一応、完結とさせていただきます…………ええ、駆け足すぎたかなと思っております。
瀬戸圭介以外、まともな人物がいなかったような……そんな気はしないでもないですが……。
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次作、<a href="https://ncode.syosetu.com/n5303fp/">一目惚れに……幼馴染の私は負けそうです</a>もよろしくお願いします。