第3話
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1日の折り返しの昼休み、いつもなら、圭介と一緒に食堂で弁当を食べている。
しかし、教室を出ようとした俺は、細川に引き止められた……!
「ねえ、ちょっと待ちなさいよ」
「いやだ……っておい、服引っ張んなって!」
「嫌なら一緒にご飯食べなさいよ!」
「やめろ……おい!圭介、助けてくれ!」
「瀬戸くん、分かっているわよね?」
「あ、は、はい!では俺はこれで」
「待てっ!圭介」
「神宮寺くんも聞き分けが悪いわね。観念しなさい?」
こうして、なぜか、空き教室に連れて来られた俺は、苦行を積んでいる。
ここ、来たことないんだけど……。どうやって鍵、手に入れたの?
やっぱり……親の力?
細川に扉を閉められて、真ん中の机に座らされた。
「お弁当あるんだ……私、お弁当、作ってきたんだけど、食べるわよね?」
「……は、はい。喜んで……」
俺、弁当あるんだけど……。
「あら、素直じゃない。じゃあ、ほら、お口開けて?」
「……?」
ローストビーフか……?
金持ちはこれだから……。
それはさておき。
世の男子高校生は、こんなに素晴らしいシチュエーションに憧れているはずだ。
アーンなんて夢のまた夢。
しかし、俺はこんな異常な危機的状況に置かれるのはいやだ……!
「あーんしてあげるのよ!は・や・く、口を開けて!」
箸を、口の目の前に突き出された俺は完全に退路を断たれた。
「お、おう」
俺は本日2度目の観念せざるを得ない状況になり、細川にアーンされた。
「おいしい?」
「……美味しい」
すごい、こんな美味しい弁当は見たことがない。
細川は、次なるおかずを口元に差し出している。
どうしてこうなった……?
お弁当も食べ終わって、俺は教室に帰ろうとするんだが……細川に引き止められた。
「ねえ。神宮寺くん」
細川は俺に挑戦的な目を向けてきた。
「……改まってどうした?」
スマホを取り出してこっちに画面を向けた。
「ちょっとこの画像、見てもらっていいかしら?」
そこにはーー
4日前に、レンタルビデオ店で、間違えて18歳以上のところに入りかけた、俺の姿が映っている。
仕切りみたいなものを、くぐっているように一応見えるが……!
スクロールして見せてきた2枚目の写真には俺が、ばっちりその境界を超えた俺が撮られていた……!
「あー、それは……」
「言い訳無用ーーこれ、広めていいの?」
細川は薄笑いを浮かべている。
これ、俺が言いなりなるって思ってんな……。
ハッタリかましてやるか。
「別に構わないけど、俺は間違えて入ろうとしただけで、中には入っていない」
「そんなわけないよね?」
細川は、顔をちょっと引き攣らせた。
「店の防犯カメラでも見てくれればいいだろ。冤罪だ」
「……ああだこうだ言わない!……これ、職員会議で出してもいいの?」
「ああ、潔白を証明してやるさ」
「……ああ言えばこう言うのね。いいわ。私の親が何をしているのか、ご存知かしら?」
「……理事長とか、か?」
「有名なのはそっちだけど、この店のオーナーも事業の一環なの。だからーー」
俺は喉をゴクリと鳴らしてしまった。
この流れは……マズイ。
「神宮寺くんのレンタル履歴くらい、どうってことないの」
細川は、長い髪の毛をさらりと右手で払いながら、言ってのけた。
もし、そんなビデオ借りていたなんて広まった日にはーー
麗亜にどんな目に遭わされるか……!
周りのクラスメイトに白い目で見られる。
俺みたいな奴は、速攻で社会的に抹殺されるだろう。
最初から俺の負けは決まってた……!
こんなのなしだろ……。
アーンはなんだったんだ……?
「……す、すいません。できれば、やめてもらえるとありがたく」
謝れば済むと思っていた俺は、次の瞬間、細川に衝撃的な言葉を吹っかけられた。
細川が悪魔に見えた。
「じゃあーー私の愛人になるの、決定ね」
……。
え?
「……あ、愛人って⁉︎」
細川は、ほくそ笑む。
「字の如くよ。人をあいするの愛に、にんげんの人って書くの」
「そんなこといってんじゃね……!なんで俺がお前の愛人なんかにならなくちゃいけねーんだ」
「あら、まだ理解できませんの?あなたは立場が弱いのよ。だから、愛人らしく振る舞いなさい。分かった?」
「……分かんない」
「まあ、いいわ。まずは……私の言うことをよく聞くこと」
俺は教室に戻るなり、これからが憂鬱すぎて、ゲッソリしていると、細川が俺の横にきて、耳元で囁いてきた。
「愛人なんだから、まず、名前で私を呼びなさい」
「……わかったよ。京佳」
「それから……」
「次はなんだ?」
「私との関係を尋ねられた時はーー恋人で、付き合っていると答えるのよ」
「……」
「達也、返事は?」
「……はい」
さらっと俺を名前で呼んでるし……
「そしてーー今日の放課後は私と帰るのよ」
細川に対応するのに必死だった俺は、白羽がこの会話を聞いているなんて、知る由もなかった。
俺は、5時間目、6時間目の授業はうわの空のままだった。
瞬く間に放課後になった。