第25話
やっと本日宿泊させてもらう旅館に到着した。
先生は俺がバスから降りるなり、俺をすぐに呼びつけた。
「ちょっとね、部屋の数が………1つ足りないのよ。で、あなたたち班員みんな、ほかのグループより、とりわけ仲よさそうだから………」
「だ、だから?」
「みんなで寝てくれる?」
「………って、………はー!?ちょ、ちょっと、は訳が分からないんですが?」
「部屋番号308に4人で」
「え、それは困るというか」
この先生、倫理観ある?俺ら年頃の高校生だぞ。
俺が先生の話を断ろうとした。
その時、白羽が横槍をいれてきた。
「先生、言う通りにします。私から瀬戸くんと細川さんと松木さんに言っておきますので」
「あらそう。助かるわ」
「では失礼します」
そう言った細川は先生から部屋の鍵を預かって歩き始めた。
俺は細川の左肩を掴み、彼女の前に回り込んだ。
「お前、本当にいいのか?」
「あら、なにがですか?」
「瀬戸と細川は百歩譲っていいとして……松木さんは!」
「あら、私たち、そんな隠すようなことないから、なおさら問題ないよね」
「問題大ありだ!とにかく先生に言ってくるからな」
俺が啖呵を切って歩き始め、細川の傍を通り過ぎる瞬間、彼女はなんと俺の両肩を掴んできた。
おい、近すぎる!
彼女の顔が俺の目の数センチ前にある。
またなんか言われるのか、と思いながらも、白羽の顔は、とんでもなく、美しすぎる。
こんなに均整の取れた顔立ちなんて反則だよ。
俺は心臓がばくばくして仕方がない。
「な、なんだよ」
「そ、そのさ、い、神宮寺くんは、わ……私のことが、い、…嫌だから、一緒に部屋に泊まりたくないの?」
「………ん?そそんなわけねーよ。むしろ泊まりてーよ……つーか、一緒に家住んでるだろ」
お、俺はなんてこと口走ってんだ、ああああ!
「そ、そそそうなのね。じゃ、部屋で待ってるから」
彼女はもう走り去っていった。
俺は恥ずかしさのあまり、その場に立ち尽くしていた。
本当は、白羽と布団を並べることなんか、気にならないけど、ま、松木さんと一緒って……。
最近、どうも松木さんが気になって仕方がない。
修学旅行が始まってから、松木さんをチラチラ見てしまう自分がいる。
何も話さないけど、みんなのことをよく気配りできる、そんなふんわりした松木さんのことが……
あの、小さかった頃の、白羽はもう、ここにはいない。
どうも最近、変わった……一緒に住んでいるからかな……幼馴染としての女の子から、もうどんどん遠ざかるような……。
俺は、どうやらーー
松木さんが好きみたいです……。




