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第24話





俺たち一行は、京都駅八条口からバスに乗り、まず金閣寺に向かった。


え?バスの座席で揉める下り書かないかって?


白羽に「あんた、さっきの責任とりなさいよ」って言われて、俺の横は松木。


せ、責任って日本語正しく使おうよ?


あ、でも通路挟んで、という意味では白羽も横。


瀬戸と細川はセットで座っている。


発車と同時にガイドさんの定番の挨拶が始まった。


「皆さん、お出でやす〜♬帝神バスのガイドを勤めております、出水未麻、い・で・み・ず・み・ま、と申します。どうぞよろしくお願いします。皆さんを雅の心で精一杯おもてなしさせていただきます。実は私、ガイドのお仕事が入ると、いっつもウキウキしてしまうんです〜。それは、楽しい旅のアテンダントさせて頂くのが本来の立場なんですが、本当はみなさんより楽しめてるからなんです〜!いっつもタダ飯ただ食い、ただ旅。ま、とにかく、京都は空気、味覚、景色、全て一級品どす。それではゆっくりしなはれや〜」


お、おう。なんか圧がすごいな。おばちゃん、いや、お姉さまは俺らとは違うフィールドで戦っているんだろう。


松木さんは、白羽と横に座ろうとでも思っていたのか、俺の方は見ずにずっと景色を見ている。


俺は静かに寝たかったんだが、白羽が邪魔をしてきた。


「ねえ、なんか話しなさいよ。せっかく美女が話して上げるって言ってるのよ、聞いてんの!」


「はいはい、聞いてますよ。今日もお嬢様はお美しいですね」


ん?なんか白羽が俺を睨みつけてくるんだが。


「あんた調子に乗ってんじゃないわよ」


そう言って、顔を真っ赤にして、プイって顔を背けると、金閣寺に着くまで細川は俺に話しかけてこなかった。


俺はちゃんと喋ってやったのに。


本当は俺細川と話したいのにな。


バスを降りると班で自由見学だった。


俺と圭介が並んで前を、女子3人組が後ろを歩く。


「おーこれが金閣寺か。じゃ、5人で写真撮るか」


瀬戸、ナイス!


俺は通り掛かりのお姉さんにカメラを渡して写真を撮ってもらった。


「それじゃ、はい、チーズ」


俺はなるべくダンディーな紳士を演じながらカメラを受け取る。


「お姉さん、ありがとう」


「………」


……俺のこと無視したよね、そこのお姉さん?




俺たちは金閣寺を見学し、次の目的地なる嵐山へと向かった。


嵐山ではトロッコ列車に乗る。


知ってるかい?4人1組で2人掛けの向かい合う座席だって。


俺はチケット売り場の前で団体入り口で待っている際に自然に切り出した。


「座席はどうする?ほら、圭介と細川さんはセットだから、俺1人で座るわ。白羽と松木で座ってくれ」


「あー、智也、その心遣い嬉しいんだがいいのか?」


「お、おう。じゃあそれでいいか?他のみんなはどうだ?」


「いいよー」


トロッコ列車って結構揺れるもんだな。


そうこうしていると、なんかプロのカメラマンが記念写真の撮影にやって来たぞ。


「ちょっと、1枚1400円で販売しているんですが、撮影okですか?それで、……あ、5名様1グループなんですね。ちょっとお二人さんは寄ってもらって、はいはいもうちょっと近くに」


俺はちゃっかり松木さんの横で中腰になる。


松木さんから、あ、甘いいい香りが。


「では撮りますねー。3、2、1、『カシャ』はい。………オーケーです。すぐ出来上がるので確認して下さい。お買い上げされますか?」


「はい、完成した写真はこちらです」


俺はその写真を見るなり、絶句してしまった。


俺の真横、白羽じゃねえか?


ふ、松木さんと白羽が座る場所、入れ違っている。


い、いつの間に………。


俺、甘くいい香りって思ってたのは白羽だったのか?


俺が困惑していると当の本人は……。


「あら、神宮寺くんはその写真に何か不満でもあるのかしら?」


と俺を見透かすように言ってきた。


「いや、まったくそんなことない」


「そう。ならいいけど」


白羽は満面の笑みを浮かべた。


俺がふと視線をそらすと、圭介と目が合った。


圭介は腹を抱えて笑いながら、俺と白羽を見比べていた。


保津川下りは2日前の豪雨で中止になってしまったので、そのままトロッコ列車で折り返した。






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