第21話
テスト1週間前を迎えた。
憂鬱な空気がクラスに広がる上、季節はもう梅雨。
昼休みに、圭介と愚痴を言い合っている。
「達也はやっぱ、かしこいからそれだけ飄々としてられんだよ」
「嫌味言ってんじゃねーよ。ちょっとは自分の心配しろよ」
瀬戸圭介は、稀代のイケメンのくせに勉強が……。
俺は知ってんだぞ……お前が、女の教師にスマイルで単位貰ってんの!
「ご無用。今回から、強力な助っ人が現れたんでね」
「勝手にしとけよ……あーあ、彼女さん出来て良かったですね!」
細川だって、賢いからな……ま、お二人さんでイチャイチャしてくださいな。
「お前、助っ人は京佳じゃないんだぞ……?」
「はあ?それなら、誰だよ」
「白羽さんだよ」
「…………んあ?」
「え、誰からも聞いてなかったのかい。達也よ、今日の放課後から、なんと……勉強会が図書館で開かれるのだ……!」
ま、まさかのべ、っ勉強会だと!?
3人に俺も割り込めるのか?
「……ま、 まじか」
「そう。俺と京佳と……スペシャルゲスト、白羽さんをお迎えすることになった」
あ、細川いるんだ。帰る、一択。
「そうか……じゃ、教室に帰るわ、俺」
教室に帰ろうとする俺を圭介は必死に引き留めにかかってきた。
「おいおい!いいのか、達也よ。せっかくのチャンスだぞ……?白羽さんとこんなに近くにいることができるんだぞ……?」
そっか……細川を視界に入れなければいいんだな?
そして、10秒立ち止まって考えた俺は、参加することにした。
「圭介。俺も参加させてくれ」
「よーし!じゃ、放課後、下駄箱前集合な」
放課後、集まった俺たち4人は、近くの図書館に向かった。
「んもう、圭介ってば!私、昨日言ったでしょ?数学やらないと、卒業できないことになるわよ!?」
「大丈夫だって。数学は、上井先生だろ?イケるって」
上井先生ーーそれは、この高校に35年勤めてらっしゃる、お局さん……。
今回ばかりは圭介でもどうしようもないのでは……ん?
ほ、細川が、黒い笑みを浮かべている……!
細川のことだから、どうせ彼氏の単位くらいどうにでもなるだろ。
図書館に着くと、案の定4人席で、圭介と細川が隣同士、そして、俺と白羽がペアで座ることになった。
それぞれ、教科書やらノートやら広げ、勉強を始める。
圭介は、英語。
細川も、英語。
白羽は……何してんだ?
「ずっと俺の顔見て、ぼーっとしないで早く勉強始めろよ」
「な、何なのよ。べ、別に神宮寺くんのこと見てた訳なんかないからねっ!」
「……お、おう」
「か、勘違いしないでよね!」
ついに白羽もおかしくなってしまったか……?
梅雨の季節ですね。低気圧の影響により、判断能力の低下は避けられませんね。
よし。白羽は今日も大丈夫。
俺は脳内で、そう判断を下した。
シャーペンを握り、ノートに向かう。
しばらくすると、白羽が分からない問題の解き方を聞いてきた。
「ねえねえ、これ、どうやるの」
離れているはずの椅子をぐいぐいこっちに近づけてくる。
「白羽、離れろって」
「もう。そんなこといいから、教えてよ」
図に乗る白羽は、腕を押してけてきて、ついにガチで柔らかいところまで当てつけてくる。
ああ、んもう!
集中できん!
いくら俺が説明しても、白羽は俺の顔ばかり見てくる……!
勉強会だろ?勉強しろ……!
俺はなんとか正気を保つことができ、一通り説明し終わる。
白羽は変わらず、俺に引っ付いているが、俺は無視している。
邪魔だぞ……そろそろ。
そのまま、図書館の終わりの時間になり、家へと帰ることになった。
なぜか、お開きの時に、圭介と細川が盛大に溜息をついていた。
なんでだろ?