第19話
白羽彩子視点です。
細川さんのアドバイスって信じても、大丈夫なの……?
「まず、相手に興味を持ってもらうの」
「うんうん」
「よくある方法はーー」
「方法は……?」
「体を張る!……ってあらら、拍子抜けだったかしら?」
「ど、どういうこと?」
「お風呂に乱入したり、下着で現れたり、ベットに入り込んだり……そうね、ボディータッチもいいかしら」
「随分、踏み込むのね」
「でも、一線は超えてはいけないから……って大丈夫?」
「今日から実践するわ!帰るわ!」
私は勢いよく、飛び出していった。
1人残される細川ーー
「…………本当にやる気なのかしら?あんなの、ラブコメの世界だけど……圭介も喜んでたから、神宮寺くんも……いや、彼は突発的なことは嫌いよね……」
「あ、でも……男はみんな興奮するわよね……明日、学校で、一応謝っといたほうがいいわね」
「ただいま!」
「おかえり」
リビングに入った私を出迎えてくれた、達也くんはソファーで寝っ転がっている。
私は、早速聞いてみる。
「お風呂入ったかな?」
「……白羽を待ってたから、ごはんでも食べてから先入ってくれ」
「あ、そそうね。夕食、いただきます」
は、はやくごはん食べなくっちゃ。
でも、なんでこんなに料理、神宮寺くん上手いんだろう……?
私なんか、ダメなのよ……でも、見返してやるから!
「ごちそうさまでした!」
「なんか今日の白羽は、明るいな」
「んふふ。そうかしら?お風呂、入ってくるね」
次に入る神宮寺くんのお風呂に突入してやるんだから。
そういえば、細川さん、下着って……は、恥ずかしくない?
軽くタンクトップとかは着ておこうかな……。
お風呂を出て、髪にバスタオルを巻きながら神宮寺くんに声をかける。
「お風呂、出たよ」
「ん。じゃ、入ってくる」
ーーガシャ。
お風呂、ドア閉めたわね……
そ、そろそろかしら……!
もう!洗面所から、一歩踏み出せないの……ど、どうやってお風呂のドアって開けるんだっけ……?
「……いけ!」
私が思いっきりお風呂のドアを開けたら、ゴンって音がした……!
「じ、神宮寺くん!大丈夫!?」
「…………い、いってえ。なんかあったのか?泥棒か!?」
「……あ、いや。全然違うの……ご、ごめんなさい。冷えたピタ取ってくるから」
「白羽。風呂なのにどうやって貼るんだよ……まあ、いいや。もう風呂出るから」
リビングに戻った私は、テーブルに突っ伏していた。
な、なんで私、こんな事になっちゃうの……。
い、いっつも神宮寺くんに迷惑ばかりかけて……。
「白羽、なーに落ち込んでだよ。ぶつかった所なんか、もう痛くないさ」
「……ご、ごめんなさい…………ドジで、いっつも迷惑かけて」
「一緒に住んでんだからこれくらい仕方ないだろ?今日も遅いし、早く寝ろ」
どこまでも優しい神宮寺くん……私なんかはあなたを好きになっていいんでしょうか……。
「なんかひとつだけでも神宮寺くんの役に立ちたいの!……あ……夜に大きな声出しちゃった……おやすみなさい」
そのまま、二階に上がって、部屋のドアを開けてベッドに直行した。
うつ伏せで、今日の反省。
「好感度下げちゃっただけじゃない……せっかく言ってくれた細川さんに申し訳ないわ……残るは、ボディータッチって……どうすればいいのよ」
布団に潜り込む私。
そうして、5分くらいして、なぜかドアが開く音がした。
え?……ま、まさか、ど、泥棒!?
わわわ私は何もお金もなにも取られるものないよ!
か、体くらいしかない……!
「今日も疲れたな。ま、早く起きようか」
じ、神宮寺くん!?
ど、どうして、わ、私の部屋に!?
まさかの展開!?
こ、心の準備は整ってないわ……下着も普通だし……あああ、すぐそばにいる気配がするもん!
ついにーー
神宮寺くんは、私が下に入っている布団のかかっていないところに横になった。
せ、セーフ……?
もしかして、神宮寺くん、気づいていないの……って、ええええ!?
い、いつまで私、このままにすればいいのよ!?
ていうか……こ、この壁紙って私の部屋のものじゃない……!
だ、誰の部屋……あ。
神宮寺くんの部屋に間違えて入ったの!?
神宮寺くんはそのまま部屋の電気を消した。
もう後戻りできない私は、朝まで悶え苦しむ。
な、なんの罰ゲームですか!?
ずっと起きていなくっちゃって思っていた私だけど、途中寝ちゃった。
朝ーー
「……スゥ……スゥ」
私は運良く神宮寺くんよりも早く起きることができたんだけど……
……うん。私、神宮寺くんに抱きつかれてまーす。
……朝だからあんまり頭動いていないけど、絶賛抱きつかれてまーす。
恥ずかしさよりも、神宮寺くんの温かみが勝ってーー
私は寝たふりをしながらじっとして、神宮寺くんが起きるのを待った。
起きた時が楽しみだわ……さあ、早く起きてよ!