第18話
白羽彩子視点です。
放課後ーー
「少しいいかしら?白羽さん」
後ろから急に細川さんに引き止められた。
「な、なんですか」
「神宮寺くんのことでお話があるの」
ど、どうして細川さんなんかが話しかけてくるのよ……!
神宮寺くんのことって……もともと付き合ってたんじゃないの?
私は、教室の席は近いけど、1回も話したことはない。
達也くんから、瀬戸くんなんかにコロッと鞍替えして。魔性のおんなよ。
嫌なのは嫌だったけど、細川さんに言われるまま、学校から遠く離れたカフェに連れてこられた。
そこは、ひっそりと佇む、古い洋館だった。
「話ってなに?」
「神宮寺くんとは、上手くいってる?」
「……ど、どういう意味?」
「そのまま。幼馴染なんでしょ?2人とも」
この女は、どこまで私を傷つけるつもりなの……?
「そ、そうだけど……だからなんなの」
「私が2人が付き合えるように手助けしてあげるっていうか、恋人にさせてあげる」
ずっと上から目線の細川さんに、私は怒ってしまった。
というか、なんで私に口出しするの……自分のしてること、分かってる?
「馬鹿にしないでよ……何様?……他人に自分の恋愛のことなんか口出されたくないから!……それでは」
私は、なけなしの千円札だけテーブルに置いて席を勢いよく立ち上がった。
「ちょっと待ってくれないかしら」
「……」
「私が、神宮寺くんと付き合ってた、だなんて勘違いしてないわよね……?」
「え……恋人同士だったんでしょ?」
「あらら。とんでもない。そうね……愛人とでもいうのかしら?」
「あ、ああああ愛人!?」
「そんな珍しくもないでしょう?私から神宮寺くんに愛人になりませんかって言ったの」
「てことは、2人とも愛し合っていたの……やっぱり」
「白羽さん……ごめんなさい!わ、私が脅したの」
「…………ど、どういうことですか?」
「私がちょっと遊びで、神宮寺くんをからかって……そんな白羽さんを傷つけようとはまったく……思ってなかったの。信じてもらえないとは思っているけど……ごめんなさい!」
あの気高い細川さんの姿とは思えないくらい、取り乱して謝る姿を、1分ほど見ていたら、なんか全てーー
どうでもよくなった。
「いいよ。そんな頭上げてくれません?」
「神宮寺くんと白羽さんは是非付き合ってもらいたい……せめてもの私の贖罪で」
「見苦しいのはやめません?細川さん。お友達になりましょう?」
「ほ、本当……あ、ありがとう……!」
それから、一変して私と細川さん……あ、京佳さんは、時間の経つのも忘れておしゃべりした。
後から知ったけど、このカフェだと思っていた家、京佳さんの別宅だって……。