表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/32

第14話




俺が麗亜の横をすり抜けていこうとした時、廊下の奥から白羽が出てきた。




俺がしゃべり始める前に、白羽が話す。


「おかえり、達也くん……今日から一緒に住まわせてもらうんだけど、ひとつだけ伝えておきたいことがあるの」


「お、おう」


「私はもう達也くんに迷惑をかけたくないから……私が全部悪いの……うっ……うう」


「そんな、いきなり、な、泣いたりなんかしてどうしたんだ」


「だ、だから、もう好きだなんて言わないでよ……」


「えっ……?」


「私はもう達也くんが好きじゃないの!分かってよ……」


「あ……」


「一緒に住むのに恋人なんか、なれる訳ない……もう私を好きだなんてそして……嫌いだなんて言わないで……グスっ……う……うううう」




「あ、彩子姉ちゃん……そ、そんなこと言わなくても」


「う、ううっ……い、いいの……た、達也くん……私の部屋、二階の突き当たりだから、よ、よろしくね」


「白羽……あの昼休みのことなんだけど」


「いいの。ごめんね、もう話したくないの……卒業までだけど、お世話になります……」


「うそよ。うそよ!……そんなことで彩子姉ちゃんはいいの?……気が変わっただけじゃないはずよ」


白羽は横に首を振って、小さく呟いた。


「報われないから」





ーーこんな、ポンポン事態は急変するのか?



麗亜も俺も、2人とも何も言えない。


白羽の表情はあまりにも重い。


負の感情では決してないんだけれどーー


彼女の心の中で、もう、次のステップに踏み出してそうなーー


俺にとってはものすごく怖いことだが、そんな感じがする。



白羽は、涙をぬぐい、二階の部屋に戻っていった。


階段を上る音だけが家に響く。





「兄ちゃん!……細川とかいう女にうつつ抜かしたいるからこんなことに」


「だ、だから今日別れたって」


「違うの……そんなこと今はどうでもいいでしょ……?」


「だから白羽とーー」


「すっごく最低なことしてるって分からないの……?」


「そ、そう……か……だよな」


「それと、なに女の子泣かしてんの?」


「……ご、ごめん」


「誰に謝ってんのよ!遅いわよ、何もかもが。ずっと前から」






俺は沈黙を続ける他なかった。


その後、リビングにいった俺はーー


すでに気持ちの切り替えの終わった白羽を目撃してーー


いろんなことを悟った。


でもーー


一言だけ伝えた。


「さっきはごめん……だからもういっ……」


「今日からよろしくね?神宮寺くん」


白羽は……輝く笑顔を俺に見せてきた。




ああ、白羽は俺に好意なんてもう二度と持つことはない。



幼馴染との、少しだけ芽生えていた恋愛感情は、陽を浴びることはなかった。





もうすぐ、7月がやって来て夏がやって来て秋が来て冬になってーー


卒業。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ