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第11話

白羽彩子視点です。




パパは、地元で金属加工の会社を経営していた。


パパが何をやっているのかさっぱり興味はなかった。


無論、私は女なんだから会社を継ぐ必要もないと思っていた。


ただ、親のお陰で贅沢な生活ができていた。


しかし、突然、大恐慌がパパの会社を襲った。


何日かすると、パパは憔悴しきっていた。


そして、突然パパは切り出してきた。


「ごめん、彩子……会社がちょっと大変でな。…倒産するかもしれない」


従業員は全員リストラして、もう終わりだとパパは嘆いていた。


全然取引先から注文が来ない上に、これまでの注文もキャンセルされてしまったらしい。


私はこの先どうなってしまうんだろうってずっと考えてしまい、何日か眠れない夜が続いた。


一家離散になるかもしれないと思うと怖かった。


でも、神様は私たちを見捨てなかった。


パパの会社に融資してくれる人が現れたらしい。


パパは雇っていた人を全員呼び戻すことができた上に、その人がパパの会社に仕事を回してくれたらしい。


「彩子、心配かけてごめんな。もう会社の方は大丈夫だからな」


「ううん、いいの。良かったね、パパ」


私はパパに抱きついた。





幸せな日々を送れると思っていた私だったけどーー


パパが、心臓発作で、突然亡くなった。


駅で倒れて、救急車で運ばれて病院に着いた時には……ダメだったらしい。


せめて親の死に目には、立ち会いたかった……。


その何週間か、目まぐるしく変わる周囲の状況に、私は翻弄された。


悲しみに明け暮れることができたのも、数日。


ここから、不幸な人生が始まった。



父の会社は自ずと倒産。


母だけでは、暮らしが大変で、というのも、どうも会社の借金があったらしい。


父の実家の工場に、出稼ぎに行った母とは、もう数ヶ月に一回しか会えない。


そうして、中学を卒業して高校に入った私は、学校に申請して、バイト漬けの日々を送っている。


ちなみにバイトの面接で、落ちたことはない……どうでもいいけど。




なによりーー


本当に毎日、生きるのに必死だった。


1食抜きなんて、よくした。


あれだけ一緒に遊んでいた達也くんと、話す時間なんて微塵もない。




あの神宮寺インベストメントの御曹司、神宮寺達也くんのキャリアに傷をつけては

いけないの……。


小さい頃は意識していなかったけど、家柄の良さって隠然とある。


白羽一族とか言うけど、私の家は落ちぶれたからーー



だから、細川さんと付き合っているって聞いても、納得したの……。


細川さんとお似合いだから、ぜひ、幸せになってほしい。


神宮寺インベストメントと細川一族は、懇意にしてるもの……。


私は彼にもう一切関わらない。



そう思ってきたはずだけど、久しぶりに麗亜ちゃんに出会って、話してーー


昔の頃を思い出した私は、やっぱり叶わぬ恋に未練があったみたい……。




勝つか負けるか、なんて単純に決めちゃうと変だけど、とにかく、彼にしっかり向き合う。



彼だって私のことを嫌いではないはず……よ?



だからーー好きだって言われた時は、嬉しかった。


それは、もう、嬉しかった。


そのあと、ちょっと疲労で倒れたけど、看病してくれて嬉しかった。


昔の……達也くんみたいで……。


私を甘えさせてくれた。



その場の流れで、麗亜ちゃんに言われた通り、一緒に住もうって言った。


こんなこと言うなんて、本当に自分でも信じられなかった。


「外堀は埋めてるわ」……あの時の麗亜ちゃん、怖かった。



一緒に住めば、食事も助かる。病気になった時、誰かがいてくれる。


親の次に親しい人の、温もりに触れられる。




だけどーー


あの、『好きじゃない』の言葉。


泣きそう……。


直接じゃなくて、間接的に言われるのって一番傷つく。


彼はあんなことを言ってくれててもーー


私より細川さんの方が好き。


動かぬ事実を突きつけられた私は、諦めがついたのかも……。




学校が終わり、いつものバイト先へと向かった。






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