第10話
短いですが、よろしくお願いします。
昼休み、細川は俺を連れ出して、昨日と同じ教室へと連れてこられた。
ドアの鍵を締めるなり……
「昨日、夜。なにしてたのかしら……?」
「……いや、特になにも」
「あれ……?」
「そんな顔を覗き込んでも、なにもないぞ」
「白羽さん」
……。
あ、バレてた……どこで?
「あーらそう。その反応だったら、図星ね……どう埋め合わせするつもりかしら?」
「……」
「ちょうどいいわね……朝、なんでもしますって宣言してもらえたし」
「っ……」
細川は、俺の耳元で囁く。
「いいわ、その顔。あなたは私の愛人だもの……愛人ってね……とおっても苦しむものなの……?」
俺はなにも言えない。
「あなたのお家の横、正確には、右隣さんのお宅が、白羽彩子さん」
「……だ、だからどうしたんだ」
「まだわからないのかしら……?あなたと彼女が幼馴染の関係にあるのも調べてあるわ……まだまだあるわね……彼女は、あの有名な財閥の一族にも関わらず、没落している」
「……やめろよ……これ以上は!」
「あなた……白羽さんのこと、好きなのかしら?」
「す、好きだからってなんかあるのかよ」
「とりあえず、私の言うこと、聞いてくれる?」
「……なんだ」
「大っきな声で『白羽は好きじゃない』って言いなさい」
「……ど、どうしてだよ!」
「別になにもないのよ?……そうね、ただ、興味が湧いたから?」
あんな弱み握られてて、少なくともこいつの目の前なんかで、白羽好きだなんて本当のことは言えない。
もう、俺はこう言うしかない。
「白羽は好きじゃない!」
「……ふーん。だそうよ、そこにいる、白羽彩子さん。そこにいるのは分かっているわよ……?」
え!
し、白羽のやつ、この話、聞いて……!
「ちょ、お前、なんてこと!」
俺がそう言った瞬間には、廊下を走る音が聞こえる。
「ほ、細川……お前」
「分かりやすいのね、達也くんって」
俺はただ、拳を固くするだけで、なにもできなかった。
あーあ、もうどうでもいいや……。
なんて俺はバカなんだ……!
追いかけも、叫びも、なにもしなかった。
ショックを抱えながら、いつもの数倍の重さのある教室の扉を開けた。
細川は、俺よりも先に着席している。
こいつ……澄ました顔で、次の授業の用意をしている。
その前の席ーー
白羽はどんな顔をしているのか、ここから伺うことはできない。
白羽……さっきの会話聞いてたのかよ。
細川が俺に耳元で囁いていたことは耳に入らずにーー
俺が大きな声で言ったことだけ、彼女の耳に入った……。
いくら本人の前で、好きだなんて言ったってーー
彼女ってことになってる奴の前では、白羽を嫌いだって言ってる……どうやって白羽と顔合わせりゃいいんだよ……!
放課のチャイムが鳴って家に帰る気なんて、全く起こらなかった。
細川は、今日は何やら用事があるらしく、解放された。
俺は、圭介と近くのファストフード店に入って、少しだけ事の顛末を聞いてもらうことになった。